反屈位・後方後頭位など難産や障害に繋がる回旋異常の種類

大きな口で泣く赤ちゃん

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胎児の回旋異常のおさらい

以前、異常分娩、難産(遷延分娩など)などの原因になる胎児の回旋異常について、原因や対処法などのお話をしました。

胎児の回旋異常を経験する妊婦はおよそ8.6%(出産者の感覚による)ですが、さまざまな原因があり、偶発的に起こることが多いため、回旋異常を事前に予期して防ぐことは不可能です。

ただし、回旋異常の原因になる病気や症状を起こさないために、普段の生活習慣・食習慣・運動習慣などを作ることで、回旋異常の可能性を少しでも減らす努力をしなければいけません。

とは言え、回旋異常だけではなくどのような予防行為においても、継続にはモチベーションが必要です。もちろん、妊婦は健康な赤ちゃんを産むことが一番のモチベーションですが、合わせてリスク管理の知識も持っておいた方が予防意識は強くなるでしょう。

そこで今回は、胎児の回旋異常にどのような種類があるのかをご紹介したいと思います。

回旋異常の多くが、第1回旋と第2回旋で起こります。その理由は、第1回旋と第2回旋はまだ分娩が始まったばかりで、胎児の身体がほぼ子宮内にあるため、回旋異常の修正が困難なためです。

以下参考|日産婦誌60巻 3 号|10.異常分娩の管理と処置|日本産科婦人科学会

回旋異常1.第1回旋の異常(反屈位)

胎児は第1回旋において、背中を少し丸めて顎を引き、軽い腕組みとあぐらを組んだ姿勢をとり、骨盤腔に後頭部から先進します。

一方、第1回旋の異常になる「反屈位(はんくつい)」は、胎児の顎が上がり、児頭や脊柱が伸展・後彎(こうわん)した状態のことで、程度の軽いものから前頭位、額位、顔位に分類されます。

反屈位の分類

出典|新看護学14 母子看護156P|医学書院

前頭位(前頂位)とは

前頭位(前頂位)とは、第1回旋の児頭の前方屈曲が行われず、胎児の前頭部にある「大泉門(だいせんもん)」が先進して骨盤腔に進入することを言います。

前頭位は、母子のリスクが見られない限り時間をかけて分娩を行いますが、頭によって産道の通過面が大きくなるため、産道裂傷、胎児機能不全(胎児ジストレス)などの可能性が増します。

額位(がくい)とは

額位とは、前頭位よりもさらに顎が上がり、胎児の額が先進して骨盤腔に進入することを言います。

顎が上がった状態のため産道の抵抗は強く、分娩の進行とともに反屈が増して「顔位」になってしまうことがあります。

通常、分娩時に額位と診断できれば緊急帝王切開に切り替えますが、その診断は難しく、第三回旋に入るとそのまま経腟分娩になり、母体裂傷、胎児傷害の可能性が増します。

顔位(がんい)とは

顔位とは、最も顎が上がり反り返った状態で、胎児の顔が先進して骨盤腔に進入することを言います。

触診、エコー、骨盤レントゲン撮影などにより顔位だとわかった場合は、胎児機能不全の確率が10倍に増加、または新生児死亡の原因になるため、帝王切開に切り替えることが検討されます。

回旋異常2.第2回旋の異常

後方後頭位(こうほうこうとうい)

後方後頭位とは、第2回旋において胎児の後頭部が後方に回旋し、後頭部にある「小泉門(しょうせんもん)」が先進することを言います。

後方後頭位のまま分娩が進むと、本来うつ伏せに産まれてくる胎児が仰向けに産まれてくることになります。

分娩の経過中に後方後頭位になる割合は5%以下ですが、そのうち約70%は前方後頭位に変わり、一部は「低在横定位(ていざいおうていい)」になります。またその際、まれに額位で先進しますが、胎児の娩出まで後方後頭位である割合は全分娩の0.5%程度です。

後方後頭位で分娩が進行すると、児頭が骨盤腔に固定しないため早期破水が起こりやすく、また続発性微弱陣痛になりやすいため遷延分娩の恐れがあり、遷延分娩の影響として新生児仮死、また児頭による会陰裂傷などが起こる場合があります。

遷延分娩とは、初産婦で分娩全体に30時間以上、経産婦で15時間以上を要することを言い、「遷延分娩=難産」とみなす1つの要素になります。

後方後頭位が確認された場合は、胎児の後頭が下になるように母体は横向きに寝ている側臥位(そくがい)の状態で経過観察を行いながら分娩を続行します。

また、児頭骨盤不均衡が確認された場合は、子宮口が全開していれば吸引分娩、全開前なら帝王切開などを医師が判断しながら対処します。

回旋異常3.定位異常

高在縦定位(こうざいじゅうていい)

高在縦定位とは、第1回旋を行う前に児頭が骨盤入口の縦径に引っかかって分娩が停止した状態を言います。

陣痛が始まっても児頭が下降しない恐れがある場合は、触診、エコー、骨盤レントゲン撮影を行った上で、緊急帝王切開に移行する場合があります。

低在横定位(ていざいおうていい)

低在横定位とは、第2回旋前に児頭が骨盤入口の横径に引っかかって分娩が停止した状態を言います。

低在横定位が確認された場合は、胎児の後頭が下になるように母体が側臥位になり分娩を継続します。

それでも分娩が進行しない場合は、吸引分娩・鉗子分娩を行いますが、胎児には頭血腫などのリスク、母体には産道裂傷・会陰裂傷のリスクがあります。

回旋異常4.進入異常

進入異常とは、児頭が骨盤内に進入する際に、前後どちらかに傾いて進入することを言います。

通常、児頭が骨盤内に進入する際は、頭部の矢状縫合(しじょうほうごう)が骨盤誘導線に沿って下降していきますが、扁平骨盤(へんぺいこつばん)や児頭骨盤不均衡の場合に進入異常が起こることがあります。

児頭骨盤不均衡が弱い場合は経腟分娩を継続し、強い場合は緊急帝王切開に切り替えることがあります。

前頭頂骨進入(前在頭頂骨進入)

前頭頂骨進入

出典|不正軸進入|北村医院

前頭頂骨進入とは、胎児の矢状縫合が骨盤誘導線よりも仙骨(せんこつ)側に傾いて分娩が進行することを言います。

後頭頂骨進入(後在頭頂骨進入)

後頭頂骨進入

出典|不正軸進入|北村医院

後頭頂骨進入とは、胎児の矢状縫合が骨盤誘導線よりも恥骨側に傾いて分娩が進行することを言います。

回旋異常5.過剰回旋

過剰回旋とは、胎児の第2回旋が過剰に起こった状態を言います。ただ、ほとんどの過剰回旋は一過性で、とくに治療や緊急対応の可能性は少ないそうです。

回旋異常を知ることで心構えができる…かも

胎児の回旋異常は複雑で、全てを理解することは難しいですね……。

もちろん、実際に赤ちゃんを生む立場のわたしたちが医学的な詳細を知る必要はありませんが、正常な回旋の流れや回旋異常の種類と原因を知ることで、妊娠生活で何に気を付ければ良いのかを認識し、回旋異常が起こる確率を少しでも減らす心構えを作ることは大切です。

ちなみに、狭い産道を通って出て来る赤ちゃんにとって回旋異常は苦しいそうですが、何よりも分娩が長引くほど妊婦もとても苦しくなります(わたしは帝王切開なのでわかりません)。

出産で苦しい思いをしたくなければ、日々健康な身体を作っておかなければいけませんね。