出産育児一時金とは?国保・社保の申請の違いと直接支払制度

出産育児一時金

この記事の読了時間は約 9 分です。

妊娠・出産にはお金がかかる…

「子供産みたいんだけど、入院も出産もお金かかるよね……。」

まぁ、お金はかかりますね。単純な入院・出産費用だけでも30-40万円台から、個室にした場合など入院時の状況次第で50-60万円台が1つの目安です。

「え……やっぱり子供は少し後にしよう……。」という人たちを助けてくれるのが、公的医療保険の運用団体が提供する「出産育児一時金」という出産費用の補助制度です。

保育園の保護者ママたちと話をすると、妊娠するまで出産育児一時金の存在を知らなかった人はけっこういます。

「出産の補助金が出ても、先払いして出産後に申請だからお金用意しなきゃいけないでしょ?」

出産育児一時金には「直接支払制度」があるため、出産費用を病院に先払いせずに、出産育児一時金と相殺できることを知らなかったママもたくさんいました。きっと忘れているだけだとは思いますが。

「出産育児一時金」「子育て世帯臨時福祉給付金(子育て給付金)※2016年から廃止」「乳幼児医療費助成制度」「児童手当」など、妊娠前に出産や育児の補助制度を知らないことは、確実に家庭の出産意欲を下げていると思います。

もし本当に国が少子化対策をしたいなら、出産や育児を助ける制度の存在を社会人や結婚した夫婦に認知徹底させることが大切です。

では、出産を助けてくれる出産育児一時金とはどのような制度なのでしょうか。

今回は、出産育児一時金の受給条件や申請の手続き、直接支払制度などについてお話したいと思います。

全て2016年5月現在の情報です。

出産育児一時金(しゅっさんいくじいちじきん)とは

出産育児一時金とは、会社または個人で加入している公的医療保険の運用団体から、赤ちゃん1人の出産につき42万円(双子以上の出産は84万円)が支給される補助金制度のことです。

加入している健康保険の運用団体とは、社会保険(健康保険)であれば、「協会けんぽ」や「健康保険組合」、国民健康保険であれば「地方自治体」のことです。

通常の出産であれば、出産育児一時金によって多くの人が入院・出産費用を賄うことができ、場合によっては補助金が余ることもあるため、結婚する夫婦には早く知っておいてもらいたい制度です。

ただし、賄えるのは出産費用のみです。その他必要な妊婦健診(助成制度がある)や出産準備に関しては、また別に費用がかかります。

出産育児一時金の受給条件

出産育児一時金は、以下の2つの条件を満たしていれば、誰でも申請して助成金を受給することができます。

・妊婦自身が社会保険、または国民健康保険に加入していること
・妊娠12週0日(85日)を過ぎていること

ただし、産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産した場合は、出産育児一時金の額が42万円ではなく40.4万円の支給になります。

産科医療補償制度に加入している全国の病院・診療所の割合は99.9%、助産院は100%なので、ほとんどの人が42万円受給できるはずです。確認したい場合は、以下から検索してください。

参考|産科医療補償制度の概要|加入分娩機関検索

また、出産育児一時金は、条件を満たしていれば戸籍法が定める「死産」であっても受給可能です。詳しくは以下を参考にしてください。

出産育児一時金の手続き・申請先

出産育児一時金の受給条件をクリアしたら、次は申請方法です。

申請先は、加入している保険の種類によって異なります。夫婦の働き方と関係で、社会保険(健康保険)なのか、国民健康保険なのかを考えてみましょう。

申請方法1.妻が専業主婦、夫が会社員(社保)の場合

妻が専業主婦、またはパート年収が130万円未満の場合は、夫の扶養家族に入っているはずなので、夫が会社で加入している協会けんぽ(健康保険組合)などに申請を行います。

申請方法2.妻が会社員(社保)の場合

妻が会社員で健康保険に加入している場合、また会社を辞めて6か月以内の場合は、妻の会社(元会社)で加入している協会けんぽや健康保険組合などに申請します。

申請方法3.夫が自営業(国保)の場合

妻が専業主婦で夫が自営業の場合は、国民健康保険に申請します。住民票がある市区町村役所の健康保険窓口で手続きを行います。

ちなみに、夫が自営業でも株式会社を経営していて社会保険に加入している場合は、その会社を通して協会けんぽや健康保険組合などに申請します。

申請方法4.妻が自営業(国保)の場合

妻が自営業(個人事業主)の場合は、夫が会社員でも国民健康保険に申請します。住民票がある市区町村役所の健康保険窓口で手続きを行います。

妻が自営業でも株式会社を経営している場合、またパートなどで年収が130万円以上の場合は社会保険に加入しているため、その会社を通して協会けんぽや健康保険組合などに申請します。

一時金の直接支払制度と受取代理制度

健康保険制度から出産育児一時金が支給されるとはいえ、「一時金はいつ受給できて、40万円ほどの出産費用はいつ支払うんだろう。」と不安になる人も多いと思います。

病院などの医療機関に支払う出産費用は、先払い(立て替え払い)をしてから出産育児一時金の申請をして後から受け取る方法と、健康保険制度から医療機関に直接支払われる方法があります。

「えっ!先払いしなくて良いの?じゃあそうする!」それが出産育児一時金の「直接支払制度」と「受取代理制度」という2つの制度です。

直接支払制度とは

直接支払制度とは、出産先の医療機関が妊婦の代わりに出産育児一時金の請求を行う制度です。手続きは医療機関が用意した同意書に署名するだけなので、申請手続きはとても楽ちんです。

出産育児一時金が医療機関に直接支払われるため、退院時に出産費用は相殺されます。出産費用が42万円以内に収まれば、そのまま「ありがとうございます。お世話になりました。」と病院に言って帰るだけです。

ただし、医療機関が妊婦の代わりに手続きをするため、代行手数料が数万円かかることがデメリットです。そのため、代行手数料を含めて出産費用が42万円に収まると良いですね。

受取代理制度とは

受取代理制度とは、直接支払制度と同じく、妊婦の代わりに医療機関が出産育児一時金の請求を行う制度です。

ただし、必要な書類は自分で用意して、協会けんぽ(健康保険組合)や地方自治体などに書類を提出しなければいけません。そのため、代行手数料はかかりません。

わたしも夫も面倒なことがいやなので、直接支払制度にしました。というより、受取代理制度を使いたくても、直接支払制度しか行っていない医療機関が多いので要確認です。

直接支払制度の差額の取り扱い

もし、出産費用が出産育児一時金の42万円を超えた場合は、差額分が自己負担のため、退院時に窓口で支払いをしなければいけません。その際に支払う出産費用には、健康保険の3割は適用されません。

反対に、出産費用が42万円を超えなかった場合は、出産費用と出産育児一時金の差額分を受け取ることができます。

退院後に協会けんぽ(健康保険組合)や地方自治体などに必要書類を提出すれば、2か月ほどで差額分が口座に振り込まれます。直接支払制度はほとんどの医療機関で行っているため、詳細は出産先の医療機関や所属している健康保険制度の保険者に聞いてください。

出産育児一時金の流れ

では、出産育児一時金の直接支払制度を踏まえたうえで、出産の流れを押さえておきましょう。

1.妊娠発覚!健康保険証を提示して出産まで12-16回ほど妊婦健診

2.妊娠84日を経過!病院などで直接支払制度の手続き

3.出産予定日が近づいたので入院

4.無事出産!おめでとう!

5.保険者から支給決定通知書が届く

6.42万円を超えた場合は差額の支払い、下回った場合は保険者に返戻請求

という具合です。文字で見ると簡単ですね。出産育児一時金の手続きは、出産先の医療機関から言われるとは思いますが、出産する前にバタバタするのは避けたいので、忘れず早めに済ませましょう。

医療機関によってはこの流れが少し変わる場合もあるので、先に「直接支払制度を使いたいんですが。」と確認をしておくと良いですね。

出産育児一時金の注意点

出産育児一時金の注意点をいくつか押さえておきましょう。

1.出産育児一時金の申請期限は?

一般的には、医療機関から直接支払制度の話があり、同意書に署名するだけで入院・出産費用と出産育児一時金が相殺されますが、何らかの理由で入院・出産費用を先払いして、後から保険者に申請する人もいるでしょう。

42万円の支給なので申請しない人はいないとは思いますが、もし万が一忘れてしまっていても、出産日(死産日)の翌日から2年以内に申請手続きを行えば、出産育児一時金は受け取れます。

2.会社を退職した場合の出産育児一時金は?

たとえば、旦那さんが会社を退職して求職活動をしている場合、または妊婦自身が会社を退職をして出産をする場合もあるでしょう。

その場合は、健康保険の協会けんぽ・健康保険組合と国民健康保険の地方自治体のどちらから出産育児一時金を受ければ良いのでしょうか。

たとえば、協会けんぽでは資格喪失後の給付として、以下の条件を満たしていれば出産育児一時金が受給できるとしています。

・妊娠4ヵ月(85日)以上の出産であること
・資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間があること
・資格喪失後(退職日の翌日)から6か月以内の出産であること

なお、保険資格喪失後の協会けんぽからの給付は、被保険者(労働者)自身の出産が対象で、専業主婦の妻や年収130万円未満の妻などの出産は対象外という点に注意してください。

また、このときに直接支払制度を利用する場合は、協会けんぽが発行する「健康保険被保険者資格喪失等証明書」を記載して医療機関に提出します。

当たり前ですが、この時期に国民健康保険に加入しても、社会保険の資格喪失後の給付を利用した出産育児一時金の重複受給はできません。

3.マイナンバーは関係ある?

健康保険(協会けんぽ)から出産育児一時金を受給する場合、(2016年6月時点)マイナンバーは必要ありません。健康保険組合はそれぞれ問い合わせて確認してください。

国民健康保険(地方自治体)から出産育児一時金を受給する場合は、自治体によってマイナンバー必要・不必要がわかれるため、事前に確認してください。

4.付加金とは?

協会けんぽが提供する健康保険と地方自治体が提供する国民健康保険にはありませんが、健康保険組合が提供する健康保険には、出産育児一時金に加えて「付加金」を整備している場合があります。要は、「出産おめでとう給付金」です。

付加金の申請手続方法や金額は組合によって変わりますが、10万円近い付加金もあるので必ず確認しましょう。

5.保険料の未納がある場合は?

社会保険や国民健康保険の保険料の支払いに滞納・未納がある場合でも、出産育児一時金を受け取ることはできます。

ただし、支払い能力があるにもかかわらず故意に支払いをせず、悪質とみなされる場合は、先に支払いを求められるケースもあるそうです。

6.シングルマザーの場合は?

シングルマザーと言ってもいくつかケースが考えられます。もし会社で正社員として働いている場合は、社会保険加入義務があるため、協会けんぽや健康保険組合から出産育児一時金が支給されます。

また、会社に所属していない個人事業主やパートの場合は、国民健康保険の加入義務があるため、地方自治体から出産育児一時金が支給されます。

「どこにも保険料払ってないんだけど……。」という場合は、親の被扶養者になっている場合もあるため、親に確認してください。もちろん、この場合も出産育児一時金は受け取れます。

妊娠・出産・育児を助けてくれる制度を調べよう

赤ちゃんが欲しい夫婦でも、家計を考えて先延ばしにしている人はたくさんいます。

もちろん、赤ちゃんを出産した夫婦も家計を何とかやりくりしている家庭がほとんどです。若い夫婦ならなおさらで、余裕のある夫婦は一部の人たちだけでしょう。

だからこそ、「赤ちゃんが欲しい!」と考えている夫婦は、出産育児一時金のような補助金制度をちゃんと知っておく必要があります。

国も少子化対策のために国民に広く認知する義務はありますが、赤ちゃんが欲しいのは本人です。出産に限らず「○○したい」と考えるなら、情報を集めるのは基本中の基本ですよね。

出産育児一時金の他にも、妊娠・出産を助ける制度、出産後の育児を助ける制度はたくさんあります。まずは直近の妊娠・出産・育児に必要な制度を知っておくだけでも、将来の家庭像を描くことに大いに役立ちます。


参考|子供が生まれたとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
参考|出産育児一時金(3) – gooベビー※リンク切れ