男性の育児を阻むパタハラ事例と対策は?相談先はどこ?

育児・教育

会社でパタハラが起こる原因は?具体事例と法律による対策・窓口

投稿日:2019年1月8日 更新日:

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たくさんあるハラスメントの種類

世の中には、さまざまなハラスメント(嫌がらせ)があります。セクハラ、パワハラ、最近はモラハラ、スメハラなども知られるようになりましたが、他にもたくさんあるそうです。ハラスメントさえ付けておけば何でも良いような風潮はありますが……。

ケアハラスメント(ケアハラ)
パーソナルハラスメント(パーハラ)
ラブハラスメント(ラブハラ)
アカデミックハラスメント(アカハラ)
リストラハラスメント(リスハラ)
テクノロジーハラスメント(テクハラ)
終わらせハラスメント(オワハラ)
キャンパスハラスメント(キャンハラ)
スモークハラスメント(スモハラ)
エアーハラスメント(ヘアハラ)
エレクトロニックハラスメント
ドクターハラスメント(ドクハラ)
ペイシェントハラスメント(ペイハラ)
ヌードルハラスメント(ヌーハラ)
シルバーハラスメント(シルハラ)
ペットハラスメント
家事ハラスメント(カジハラ)
ゼクシャルハラスメント(ゼクハラ)
など

ハラスメント全36種類を徹底分類|意外と知らない「いじめ」の違法性 | あなたの弁護士

「こんなの誰が知ってるの……?」ということで、株式会社プラネットが2018年に行ったハラスメントに関する調査では、いくつかのハラスメントの認知度がわかっています。

意識調査 FromプラネットVol.88  <スメハラに関する意識調査>あなたもスメハラ加害者に?…気になる“他人のニオイ”1位はアレ|調査研究|知る・役立つ・参加する | 株式会社プラネット

さて、今回のテーマは「パタハラ」です。近年、男性の育児への関心が高まっており、若い世代を中心に「育児は女性だけに任せるものではない!」という認識が広がっています。

しかし、その一方で社会や個人感情の中で、まだ男性の育児への壁である「パタハラ」が存在することも確かです。

では、パタハラはどのように行われているのでしょうか、またパタハラに合った場合どのように対策を取れば良いのでしょうか。

パタハラとは・語源は

パタハラとは、「パタニティハラスメント」の略で、paternity(父たること、父性)とharassment(いやがらせ)を組み合わせた造語です。

日本労働組合総連合会が発行する「働くみんなのマタハラ手帳」には、パタハラの起源と特徴について以下のように記述されています。

パタニティハラスメントとは、厚生労働省イクメンプロジェクトの推進メンバー・渥美由喜氏が提唱しているもので、男性社員の育休取得や育児のための短時間勤務などを妨げる行為をいいます。たとえば、育休の取得を申し出た男性社員に男性上司が、「育休を取ればキャリアに傷がつく」「育児は母親の役割だ」と発言するのがその典型です。

働くみんなのマタハラ手帳

・育休や時短勤務を申し出た男性社員を怒鳴りつけたり嫌味を言う
・育休を取らせてもらえない
・育児を理由に大事なプロジェクトから外す
・育児による不当な評価で給与を減額する

これらは全てパタハラに該当します。

パタハラの原因

冒頭で示した通り、パタハラという言葉が使われるようになったのは最近のことで、一般の認知度はまだ10%ほどしかありません。

しかし、日本労働組合総連合会が2014年に実施した「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査」では、11.6%の人がパタハラを経験し、自分の周りにパタハラ経験者がいると回答した割合は10.8%にのぼっています。

パタハラは決して他人事ではありません。パタハラの原因は主に3つ挙げられます。

上司の理解が得られないため

「男は仕事、女は家事育児」と考える上司は多く存在します。そのような上司にとって、部下の男性が育児のために休業したり早く帰ることは理解できません。

「会社にとって不利益である。」「道徳心に照らして許されない。」「自分とは違う考え方が気に入らない。」などの理由で、育休を取らせないなどの圧力をかける行為につながります。

同僚の理解が得られないため

育休を取得した場合、仕事は他の社員が代わりに引き継ぐことになります。とは言え、すぐに代わりの人材を充てられる会社がどれだけあるでしょうか。

多くは、既存の人員で仕事を分担して行わなければいけないでしょう。そんな仕事の負担が増えて不満を持つ同僚から、嫌味を言われるなどのパタハラを受けることになります。

会社が社員の育児を想定していないため

今の時代、事業主は社員が結婚して子供を授かったら育児をすることを前提とした経営をしなければいけません。

そうでない会社は、育休などで人員が抜けた穴をフォローする仕組みが無いため、社員が抜けないような体制・雰囲気を作ってしまっています。そして、もし誰かが育休を取得しようとすると、それを阻止するような雰囲気が会社全体で強くなります。

パタハラの事例と実態

ではパタハラ被害にあった人は実際にどのような嫌がらせを受けたのか、パタハラの事例を見てみたいと思います。

育休によって不当な評価を下された事例

男性看護師が3ヶ月以上の育児休業を取得し、復職したところ翌年度より「就業規則によって職能給(職務手当)を昇給させない」、「人事評価の対象外であるとして昇格試験を受けさせない」という扱いを受けた。これにより男性看護師は慰謝料請求を行なった。

マタハラ・パタハラの裁判事例と事例からみる対策まとめ|あなたの弁護士

全国労働基準関係団体連合|医療法人稲門会事件

こちらはすでに判決が出ている事例で、育休取得が人事評価の対象外になることは違法として、慰謝料も一部認められています。これは、「不利益取扱いの禁止」として育児・介護休業法第10条などに定められています。

育休を取得しようとして恫喝、過剰なノルマを課された事例

会社側との育休に関する取り決めや前例はなかったが、会社に申請した。翌日、すぐに本社から呼ばれた。役員が集まった会議室で「裏切り者」と責め立てられ、目の前で育休の申請書は破かれた。その後は、嫌がらせもエスカレート。会議の資料が自分にだけ来ない、グループウェアの掲示板で名指しで批判された。(略)ちょうど子どもが半年になる頃、妻と子どもが2人とも病気になった。山田さんが看病するしかなかったため、上司に「1日だけ休ませてください」と申し出ると、「お前のガキなんか1円にもならないんだよ、休まないで働けよ」とノルマを上乗せさせた。

男性の育休申請「お前のガキなんか1円にもならない」会社が転勤命令|弁護士ドットコムニュース

こちらはパタハラ被害にあって提訴をしていない事例ですが、この被害者と同じように多くの人がパタハラ被害にあっても裁判に訴える行動は起こしていません。

それどころか、パタハラを受けた被害者は、誰にも相談せずに育児制度の利用をあきらめた人が圧倒的に多く、6割以上を占めています。

パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査|日本労働組合総連合会

では、もし自分がパタハラ被害にあった場合、法的にどう対処すれば良いのでしょうか。

法律によるパタハラ対策

マタハラ、パタハラを防止するため、厚生労働省では、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成29年1月1日施行)」を制定しています。第二十五条には以下のように記されています。

事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

まず大前提として、労働者が育児休業や介護休業を取得する際、事業主はその労働者が働きやすい環境をつくる相談に応じ、適切な対応ができるように体制を作っていかなければいけません。事業主に求められる具体的な対応は以下の通り。

育児休業等に関するハラスメントの防止措置の内容について|厚生労働省

職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策|厚生労働省

事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

事業主は労働者全体に対して、まず「育児休業等に関するハラスメント」があってはならないことだと周知する義務があります。

・ハラスメントとなる基本的な言動
・制度利用は社員の権利であること

このような内容を、就業規則に規定したり、社内報やパンフレットで配布するなどの方法によって周知・啓発し、万が一マタハラやパタハラが起こってしまった場合に、加害者に対する処置を明らかにしておく必要があります。

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

事業主はハラスメントに対する相談窓口を設け、相談窓口担当者は内容や状況に応じて適切に対応することが求められます。相談方法は面談だけでなく、電話やメールなどの方法を用いて労働者が利用しやすい体制を整備することが重要です。

相談窓口では現在起きているハラスメントだけでなく、今後発生のおそれがあるハラスメント、ハラスメントだと判断がつかない内容でも広く相談に応じる必要があります。

職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

ハラスメントの禁止を周知しているにも関わらず、ハラスメントが起きてしまった場合、事業主は直ちに事実関係を確認しなければいけません。当事者に聞き取り調査を行い、必要ならば第三者への聞き込みをすることで正確な事実を把握します。

事実確認ができたら被害者への配慮の措置を行うと同時に、加害者への処罰等の措置を行います。

そして、事実確認の可否に関わらず、ハラスメント問題が起きた事実を受け止めて、再発防止に向けての取り組みを行わなければいけません。

育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

ハラスメントが起こらないようにするため、その原因となる要因を解消することも大切です。

適切な人員配置、業務の見直しによる効率化や簡略化など、育休を取得しようとする労働者への不満が出ないように体制の整備することが求められます。

上記4つの措置と併せて講ずべき措置

職場におけるハラスメントの相談者・行為者の情報は個人のプライバシーに属するものとして、扱いに注意しなければいけません。相談窓口の担当者が適切に対応できるよう、マニュアルの整備やプライバシーに関する研修などの取り組みが必要です。

また、相談した人や第三者による事実関係の確認に協力した人に対して解雇等の不利益が生じないようにする配慮が求められます。

パタハラの相談窓口

前述した通り、育児・介護休業法では、まず会社内にハラスメントに対応できる整備をすることを義務付けています。そのため、パタハラを受けた場合は、まず会社の人事や労務の担当者、信頼できる上司などに相談しましょう。

会社内での解決が望ましいのですが、会社の対応に期待できない場合は以下の団体にパタハラ被害を訴えることで解決を図りましょう。

厚生労働省(都道府県労働局)

育児休業に関するハラスメントの相談窓口は各都道府県にある「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」です。厚生労働省から発行されたパンフレットに都道府県ごとの連絡先があるので参考にしてください。

ハラスメントの内容や相談窓口などを紹介するパンフレット

TECC(東京圏雇用労働相談センター)

TECCは東京圏国家戦略特区内(東京都・神奈川県・千葉県一部地域)に勤める人が利用できる機関で、労働紛争を未然に防ぐための相談窓口です。

すでに問題が起こっている場合は労働局に相談に行く必要がありますが、ハラスメントに相当するか分からないと悩んでいるのであれば、一度足を運んで相談してみましょう。

東京圏雇用労働相談センターHP

日本労働弁護団(弁護士団体)

できれば穏便に問題の解決を図りたいところですが、場合によっては法的手段をとる必要も出てきます。日本労働弁護団は労働者と労働組合の権利を守るため、全国の弁護士によって組織された団体です。

日本労働弁護団ホットラインによる無料相談をしたり、依頼する場合は弁護士を探すことも出来ます。

日本労働弁護団HP

パタハラの具体的な対策

国によるパタハラ対策も行われてはいますが、実際に働いている会社の姿勢が変わらなければ意味がありません。

パタハラの対策としては、「各種相談窓口に相談する」「同僚など周囲に味方を作って数で対抗する」などが考えられますが、それでもうまく行かない場合は、転職などで別の環境を作ることも視野にいれるべき手段です。

男性は、「家族を守らなければ!」と強い責任感を持つあまり、自分が我慢してしまいがちですが、そのストレスのせいで心身の健康を損ねてしまっては元も子もありません。

パタハラが横行するような会社は、どちらにしろ他の部分でも問題をはらんでいる可能性があります。そんな会社から転職することは短期的に見ると大変ですが、長期的に考えるとプラスに働く可能性が高いでしょう。

「我が子を自分の手で育てたい。」という気持ちは、親なら誰でも当たり前に持つ感情です。男性にも育児をする権利はあります。その権利を奪われたり、不当な扱いをされることがあってはいけません。

もしあなたの旦那さんがパタハラを受けているなら、会社の不当な扱いを仕方ないと諦めるのではなく、今すぐに相談窓口に行くなどして解決の糸口を探ってください。

そして、同時に新しい環境で働く検討もしてみてください。選択肢が多い方がより豊かな人生設計ができるのですから。


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