三つ子の魂百までの意味は?子供は3歳までに性格が決まるの嘘

新生児とママの手

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三つ子の魂百までとは

「三つ子の魂百まで(みつごのたましいひゃくまで)」ということわざを聞いたことはありますよね。

三つ子の魂百までの意味は、「3歳までに習ったことや身につけたことが、その後の人生に大きな影響を与える(だから3歳までの教育がとても大切だ)。」という教育・育児方針の観点で使われる言葉……だと勘違いしている人がいます。

正しくは、「3歳の子供の性格は、100歳になっても(大人になっても)ずっと変わらないままだ。」という意味のことわざです。

転じて、幼いときに現れる性格はその人の本質なので、一生変わらないものだということを意味しています。

では、なぜこのような意味の誤解があるのでしょうか。また、「三つ子の魂百まで」の意味の通り、幼いころの性格は本当に一生変わらないものなのでしょうか。

今回は、「三つ子の魂百まで」ということわざからわかることについてお話したいと思います。

三つ子の魂百までが間違って使われる理由

「三つ子の魂百まで」が間違った意味で使われる理由は、三歳児神話や3歳までの子供の脳の発達に関係があるのではないかと思います。

理由1.3歳までに脳が発達する事実があるため

子供は3歳までの心身の成長が重要だということは、多くの人が知っている事実です。

これは、視覚の発達や情緒の抑制、習慣的な感応、言語の習得、物などの象徴化ができる脳の機能が3歳までにある程度完成するためで、日本ユニセフ協会の「世界子供白書」でも以下のように述べられています。

子供が3歳になるまでに脳の発達がほぼ完了する。新生児の脳の細胞は多くの成人が何が起こっているかを知るずっと前に増殖し、シナプス(神経細胞相互間の接続部)による接合が急速に拡大して、終生のパターンがつくられる。わずか36カ月の間に子供は考え、話し、学び、判断する能力を伸ばし、成人としての価値観や社会的な行動の基礎が築かれる。

引用|世界子供白書 – 日本ユニセフ協会

理由2.三歳児神話と混同されるため

また、3歳までの子供の脳の発達に影響を与えるという、「三歳児神話(さんさいじしんわ)」が過剰に浸透したことも影響しているかもしれません。

三歳児神話とは、「愛着理論」と「ホスピタリズム」から生まれた考え方で、子供一律に当てはめるべき考え方ではありません。

三歳児神話とは、子供が3歳になるまでの3年間は母親が子育てに専念すべきであり、子育てに専念しなければ、子供の脳と心が成長しない、または成長に悪影響を及ぼす可能性があるという考え方のことです。

三歳児神話は、心理学者ジョン・ボウルビィ(John Bowlby)が唱えた「愛着理論」と心理学用語である「ホスピタリズム」の考え方から生まれたとされています。

愛着理論とは、子供が社会的、精神的に正常な発達するために養育者と密接な関係を維持しなければならないという考え方のことで、ホスピタリズムとは、乳幼児期に親から離れて施設に入所した子供に現れる精神的、身体的発育の遅れを総称したものを言います。

3歳までに必要な教育とは

たしかに、子供の脳は3歳までに大きく発達します。そのため、3歳までに特別な教育をすれば、生活習慣を作るうえで良い影響があることは間違いではありません。

ただ、前述した3歳までの脳の発達とは特別なことではなく、大人の脳に近づくという意味で、以下のように一般的な脳の発達とそれに伴った身体能力や感情などの情緒的な発達があるというものです。

頭脳流出をなくす:幼少期研究

出典|世界子供白書 – 日本ユニセフ協会

そのため、3歳までの教育や育児方針で、子供の能力が決まり、その後の人生に与える影響もすべて決まってしまうと考えることは間違っています。

もちろん、視覚の発達や情緒の抑制、習慣的な感応、言語の習得、物などの象徴化はとても大切な脳の成長機能であるため、親はこれらの能力が適切に発達する様に子供に触れ、生活の中で発達を促す行動が必要です。

子供の性格は一生変わらない?

では、「三つ子の魂百まで」の本来の意味通り、3歳までに現れる子供の性格は本当に一生変わらないものなのでしょうか。

エジンバラ大学とリバプール・ジョン・ムアーズ大学は、同一被験者の年齢の違いで性格に違いが見られるかを共同研究しました。

実験では、11歳と14歳では性格の差異が見られなかったものの、同一被験者が77歳になったときにもう一度性格調査を行ったところ、別人を比較したかのような結果が見られたそうです。

英エジンバラ大学とリバプール・ジョン・ムアーズ大学の共同研究では、14歳の思春期と77歳の老年期の性格を比較すると、個人は全くの別人になり得るという研究結果が発表されたのだ。これは従来の研究結果を覆すものだ。

時を遡ること1947年、かつて英国では、少年少女を対象とした大規模な性格診断調査が実施されたことがあった。その当時のコホート研究として集められたサブサンプルは、11歳の少年少女1,208人。そして1950年、14歳になった彼らに対する再調査において、彼らの教師から見た性格が6つのカテゴリ(自信、忍耐力、気分の安定性、慎重さ、独創性、成功欲)に分けて記録された。

それから60年以上経った2013年、エジンバラ大学の研究者らは、1,208人のうち635人とのコンタクトに成功。そのうちの174人(男性82人、女性92人)が再び同性格診断の実施を承諾した。平均年齢は77.6歳。彼らは6つのカテゴリに分けられた自身の性格を自己診断し、また、彼らの配偶者や子供、または近しい友人などから見た、被験者の性格診断を行ってもらった。

引用|「三つ子の魂百まで」は間違い? 人の性格は60年間で劇的に変わるという研究結果|WIRED.jp

人の性格の本質とは何か

人間の性格形成を決める要因は昔から研究されてきていますが、大きくは先天的要因と後天的要因に分かれており、先天的とは遺伝、後天的とは環境、自己決定、偶発的事象のことを指します。

詳しくは以下を読んで欲しいのですが、性格形成に先天的要因と後天的要因のどちらが優勢という話ではなく、近年は両者の要因によって性格が決まると言われます。

参考|性格に与える遺伝的要因と環境的要因に関する考察|人文66巻3号

まず遺伝によって両親の性格の要素を持った赤ちゃんが生まれ、その後は環境の変化、自己決定、偶発的事象によって、今現在の性格が影響を受けて、少しずつ変化していきます。そのため、時間が経つほど、性格は当初の出発点から大きく変わっていく(ズレていく)と考えるのが普通です。

ここで言う性格の出発点とは、遺伝と自己決定ができる前の環境で形成された性格です。親が子供の性格がわかり始めるのは、3歳ごろですね。つまり、3歳までの性格は、「遺伝+養育者の影響」によって作られるものだと言えます。

3歳までの養育者の影響とは、養育者との愛着関係で形成されるものであり、この愛着関係も性格の出発点を形作る大切な要素の1つです。

子供が成長したときに、親が「この子は、やっぱり昔から○○なことは変わらないな。」と言うのは、性格の出発点を知っているからなのだと思います。

つまり、「幼いときに現れる性格はその人の本質なので、一生変わらないものだ。」というのは間違いで、その人の性格の出発点は3歳ごろに決まり、その後の影響によって変わる性格と変わらない性格があると言えます。

ちなみに、日本心理学会によると、親の性格の遺伝は以下の様に考えます。

性格に関わる遺伝子が親から子に伝わるときは,父親と母親からそれぞれ遺伝子が半分ずつランダムに伝わり,両親のいずれとも異なる新しい組み合わせが生まれますから,遺伝の影響を受けたとしても,どちらかの親と同じ遺伝的素質になるということは絶対にあり得ません。性格に関わる遺伝子の組み合わせも,人の顔立ちが遺伝的に皆異なるのと同じように,古今東西すべての人が皆違うと考えてまちがいないと思います。

引用|日本心理学会
参考文献|安藤寿康 2000 心はどのように遺伝するか 講談社ブルーバックス