マタハラの定義や原因は?被害件数・割合は?どこに相談すべき?

投稿日:2019年2月24日 更新日:

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マタハラとは

現代社会では、さまざまなハラスメントが問題になっています。性的な嫌がらせをする「セクハラ」、上司など強い立場を利用して嫌がらせをする「パワハラ」、そして、女性の社会進出に伴って浮上してきた「マタハラ」が有名なハラスメントでしょう。

マタハラとは、「マタニティハラスメント」の略語で、Maternity(母であること、母性)とharassment(いやがらせ)を合わせた造語です。

マタハラに該当する例としては、働く女性が妊娠や出産を理由に解雇されたり、妊娠・出産を理由に職場で受ける口撃などが挙げられます。

日本労働組合総連合会が2015年8月に行った調査によると、働く女性の28.6%がマタハラを受けたことがあると回答しています。しかも、残念ながらマタハラの割合は、25.6%→26.3%→28.6%と調査の度に増えています。

マタハラの経験割合

第3回マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査 - 連合

では、マタハラとは具体的にどのようなことが該当するのでしょうか。また、あなた自身がマタハラにあったとき、どう対処すれば良いのでしょうか。

今回は、マタハラの定義やマタハラ被害の相談先などの対策についてお話したいと思います。

マタハラの定義

厚生労働省では、働く女性が「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」「育児休業の申出・取得等を理由とする不利益取扱い」が行われることをマタハラと定義しています。

職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策|厚生労働省

・妊娠、出産したこと
・つわりのため業務が出来なかったこと
・育児休業や子の看護休暇を取得しようとしたこと

これらを理由として、解雇や減給、降格その他不利益取扱いを行うことはすべてマタハラに該当します。ただし、業務分担や安全配慮等の観点から、「業務上の必要性に基づく言動によるもの」と判断される場合はマタハラには該当しません。

たとえば、妊娠中に体調を崩し安静にする必要があるときに、「業務が回らないから。」と上司が休業を妨げる行為はマタハラですが、定期的な妊婦健診など、ある程度調整可能な休業について「時期をずらせないか。」と打診することはマタハラにはなりません。

マタハラが起こる原因

第3回マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査 - 連合

職場でマタハラが起こる原因
男性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足|67.3%
職場の定常的な業務過多・人員不足|44.0%
女性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足|39.1%
フォローする周囲の社員への会社の評価制度整備や人員増員などのケア不足|37.6%
社員同士のコミュニケーション・配慮不足、お互い様の精神の不足|37.5%
女性社員の妬み|32.7%
「ハラスメント」の啓蒙不足(マタハラする側の自覚がない)|28.4%
会社の支援制度設計や運用の徹底不足|24.9%
会社に相談・交渉する窓口や仕組みがない|21.4%
会社の経営状態|14.1%
公的な相談窓口の情報不足|10.1%
その他|1.2%

マタハラが起こる原因は、「男性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足|67.3%」「女性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足|39.1%」など、さまざまな認識不足が挙げられます。

以前の日本は、「男性は外で働いてお金を稼ぎ、女性は家事や育児に従事する」という考えが一般的でした。ただ、女性の社会進出が進んだ今でも、「産休・育休は会社にとって不利益」「女性は妊娠したら家庭に入るべき」と考える人もいます。

また、国による出産・育児に関する制度が充実することで、制度を利用する人としない人に差が生まれます。たとえば、誰かが育休を取得した場合、会社が人員の補充をしなければ他の労働者に負担がかかります。

会社は、妊娠・出産した女性だけでなく、他の労働者への配慮をしなければ、その不満が妊娠した女性に対するマタハラにつながる場合があります。

マタハラ被害の種類と割合

マタハラでもっとも多い被害は、「妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導などをされた」ことで、マタハラ被害者の4割が該当します。

マタハラの経験割合

第3回マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査 - 連合

マタハラ被害の種類と割合
妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導などをされた|40.1%
妊娠を相談できる職場文化がなかった|30.0%
妊娠中や産休明けなどに、心無い言葉を言われた|27.9%
妊娠中・産休明けに残業や重労働などを強いられた|18.8%
その他|8.3%
妊娠・出産がきっかけで、望まない移動をさせられた|7.3%
妊娠・出産がきっかけで、給料を減らされた|6.9%
妊娠・出産がきっかけで、嫌がらせをされた|6.9%
妊娠・出産がきっかけで、雇用形態を変更された|5.9%

これらのマタハラは以下の「制度等の利用への嫌がらせ型」「状態への嫌がらせ型」に分類されます。

職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策|厚生労働省

制度等の利用への嫌がらせ型マタハラ

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法では、妊娠・出産・育児をする際に利用できるさまざま制度があります。これらの制度を利用しようとする女性に嫌がらせをしたり、利用そのものを妨げる行為を「制度等の利用への嫌がらせ型マタハラ」と言います。

・産前産後休業
・育児休業
・子の看護休業
・短時間勤務制度
・所定外労働の制限(残業免除)
・深夜業の制限

たとえば、「育休を取得すると他の人の迷惑だ。」「一人だけ残業をしないのは許されない。」という言動がこのタイプに該当します。

状態への嫌がらせ型マタハラ

状態への嫌がらせ型マタハラとは、女性が妊娠、出産したことそのものに対してハラスメントを行うことです。つわりで作業効率が落ちた女性に対して、さらに労働環境が悪化する言動を浴びせるなどが該当します。

たとえば、「働けないなら会社をやめろ。」「あなたのせいで他の社員の負担が増える。」などの心無い言葉を浴びせたり、「妊娠したら休めて良いよね。」など、職場に居づらくなるような言葉が考えられます。

マタハラの相談件数と推移

厚生労働省の調査によると、全国の労働局に寄せられた妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの相談件数は、以下のように推移しています。

「これだけマタハラという言葉が一般化したんだから、少しは減ってるだろう。」という考えは間違いです。マタハラの相談件数は、毎年増加しています。

平成 27年度 都道府県労働局雇用均等室での法施行状況 都道府県労働局雇用均等室での法施行状況

以下の通り第5条関係(育児休業の取得)の相談が3-4割と圧倒的に多く、現在でも育児休業を取得しにくい現実が浮き彫りになっています。

平成27年度関連条項割合件数
育児休業第5条関係37.9%15128
所定労働時間の短縮措置等第23条第1項
第23条第2項関係
19.5%7770
不利益取扱い第10条
第16条の4
第16条の9
第18条の2
第20条の2
第23条の2
第52条の4関係
8.9%3554
その他 8.0%3189
子の看護休暇第16条の2
第16条の3関係
7.2%2882
所定外労働の制限第16条の8関係5.6%2217
深夜業の制限第19条関係4.5%1784
時間外労働の制限第17条関係4.4%1758
所定労働時間の短縮措置等第24条第1項2.2%871
休業期間の通知則第5条第4項から第6項関係1.4%546
労働者の配置に関する配慮第26条関係0.5%204

マタハラ被害の事例と注意点

では、マタハラ被害者は具体的にどのような嫌がらせを受けたのでしょうか。実際の事例を見てみましょう。

妊娠を報告したら解雇された事例

1月末に正社員で仕事がきまり、3ヶ月の試用期間中に妊娠がわかり、上司に妊娠したことを伝え、出産まで働きたいといいました。2週間後に勤務態度が悪いという理由で解雇通知をうけました。上司に両肩を抑えられ解雇通知書に今日中に名前を書いてといわれ、体調がすぐれないし私一人では決められないからサインできないというと、サインしないと帰さないとまた両肩抑えられ入り口もふさがれ、サインせざるをえない状況でした。

マタハラ事例 | マタハラNet

妊娠した女性に対し中絶の勧告をした事例

私立幼稚園の教諭として勤務していた女性が、妊娠したことを園長に報告したところ、中絶の勧告や退職勧奨を受けて解雇された。女性の妊娠が内縁の夫との子供であったため、園長は女性に対して「結婚もしていないのに妊娠するなんて」、「私が親ならひっばたいている」などの言動を行った。また、女性は切迫流産、子宮頚管ポリープと診断されたため入院する必要があり、これに対し園長は暗に中絶を勧告する言動を行なった。女性は医師より絶対安静を言い渡されていたが、同園より出勤の要請があったため出勤し、その後流産した。同園ではこれまでの経緯、また、女性の普段の業務態度などを理由に女性を解雇した。

マタハラの被害事例を解説|女性が出来る上司や職場のマタハラ対策とは|労働問題弁護士ナビ

マタハラ被害にあったときの注意点

これらの事例の被害女性は、いずれも国の相談窓口に行ったり、裁判を起こすなどの対策をしています。しかし、マタハラ被害にあった女性の中には、どこにも相談できずに泣き寝入りするケースも少なくありません。

というのも、このようなマタハラに慣れている会社側の言い分として、以下の内容が考えられるためです。

マタハラに対する会社の言い分
・妊娠が理由で退職の強要をしたのではなく、勤務態度を理由に退職の勧奨をした
・減給などの降格処分を促したら、相手が納得をして合意書にサインした

妊娠・出産を理由として、不利益取扱いを行うことは違法です。たとえば、厚生労働省では、妊娠後1年以内に会社が不利益取扱いを行った場合、「妊娠を理由として不利益取扱いを行ったものと判断する」ことを原則としています。

そのため、会社の不利益取扱いが妊娠から1年以内であれば、降格や退職勧告は違法・無効です。ただ、より確実に退職の強要を裏付ける準備として、マタハラを受けた際の言動や同僚の証言を日付とともにメモに残しておくと良いでしょう。

マタハラ被害の相談先

あなたがマタハラを受けたら、まず第一に社内の相談窓口(窓口が設置されていない場合は人事や労務)や身近な信頼できる上司に相談しましょう。大切なことは、現在の状況を理解してもらうことです。

もし社内での解決がうまく行かなかった場合は、外部に相談する方法があります。

都道府県労働局(厚生労働省)

各都道府県の労働局には「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」が設置されています。ここではマタハラやセクハラなどのハラスメントの無料相談を受け付けています。

労働局に相談することによって、会社に対して法律や制度の説明をしてもらえたり、会社との間に争いが起きている場合は助言や調停などのサポートを受けることができます。

ハラスメントの内容や相談窓口などを紹介するパンフレット

日本労働弁護団(弁護士団体)

社内や労働局に相談することで解決できれば良いのですが、現実はうまくいかないこともあります。ときには、法的手段に出なければいけないかもしれません。

そのような人は、日本労働弁護団を利用しましょう。日本労働弁護に相談すると、電話で無料相談を受けてくれたり、実際に担当する弁護士を探すことができます。全国の弁護士で組織された団体のため、比較的近くの弁護士を探すこともできるでしょう。

日本労働弁護団HP

法律によるマタハラへの対応

妊娠・出産した女性は、常に「職場に迷惑をかけるのではないか。」という不安を抱えています。

そして、その負い目から、「自分が我慢すれば丸くおさまるから……。」と理不尽な扱いを我慢して泣き寝入りするケースが多く、結果マタハラがエスカレートしてしまいます。

しかし、出産、育児は女性や養育者にとって当たり前の権利であり、職場に労働環境の配慮を求めるのは、法律で認められている正当な権利です。たとえば、以下の男女雇用機会均等法9条や育児・介護休業法25条がそれに当たります。

男女雇用機会均等法9条
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

育児・介護休業法25条
事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

電子政府の総合窓口(e-Gov)

マタハラはれっきとした法律違反です。もしあなたが現在マタハラを受けているのであれば、ひとりで抱え込むことはありません。一刻も早く周囲やしかるべき機関に相談して、解決を図るようにしましょう。

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まーさ

保育士資格、幼稚園教諭免許(一種)を取得後、保育園・幼稚園・支援センターを複数回経験して、もうすぐ業界歴20年です。 仕事と2人の子育てをこなしつつ、勉強をしつつ、ゆっくり情報を発信しています。

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