赤ちゃんがはちみつを食べてはいけない理由は?加熱してもダメ?

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赤ちゃんがはちみつを食べてはいけない理由は?加熱してもダメ?

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はちみつを使った離乳食による事故

はちみつは美容や健康に関する効能を持っているため、テレビや雑誌でもよく取り上げられます。砂糖の代わりにはちみつを使った料理は多く、「はちみつは健康食品だ。」というイメージを持つ人も少なくないでしょう。

それだけ健康に良いなら、赤ちゃんの離乳食に使う砂糖の代わりにはちみつを使いたいと考える人が多くいてもおかしくありません。

実際に、2017年4月までは、クックパッドにははちみつを使ったレシピが多数掲載されていました。ところが、現在ははちみつを使ったレシピは見当たりません。

それもそのはず、2017年3月にはちみつを摂取した赤ちゃんの死亡事故が起こってしまったからです。

離乳食にはちみつで男児死亡 「クックパッド」のレシピをめぐり物議(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース

なぜ赤ちゃんは、はちみつを食べてはいけないのでしょうか。家庭ではちみつを十分に加熱処理しても、食べさせてはいけないのでしょうか。

今回は、赤ちゃんがはちみつを食べてはいけない理由についてお話したいと思います。

はちみつと砂糖の違い

はちみつも砂糖も甘味料ですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

カロリー

砂糖のカロリーは100g当たり384kcal、はちみつは100g当たり294kcalです。はちみつの種類や温度によっても多少差がありますが、100gあたりのカロリーは、砂糖よりはちみつの方が25%程度低いヘルシー食品だということがわかります。

第2章 日本食品標準成分表 PDF(日本語版):文部科学省

糖質

はちみつと砂糖は主成分(糖類)が異なるため、体内での吸収速度が違います。

砂糖の主成分は「ショ糖」です。砂糖は二糖類のため、体内に吸収される際、果糖とブドウ糖に分解されます。一般的に使う上白糖や三温糖などの砂糖は、サトウキビやテン菜を原料として、糖分以外の色素や不純物などは取り除かれています。

白い砂糖の真実、そして三温糖との関係|農畜産業振興機構

一方、はちみつはミツバチが花から採取した蜜を自らの体内で分解したもので、主成分は単糖類の「果糖」と「ブドウ糖」です。単糖類は消化の負担が極めて低く、すばやく身体に吸収されます。

はちみつの栄養成分 | はちみつCAFE | サクラ印はちみつ | 加藤美蜂園本舗

甘味

はちみつの甘味度は、砂糖の1.3倍高いと言われています。分量にすると、はちみつ大さじ1杯は、砂糖大さじ3杯と同程度の甘さになります。

はちみつに多く含まれる「果糖」には、甘味度が低温で高く、高温で低くなるという特徴があり、これが甘味を強く感じる要素の1つです。そのため、はちみつは、砂糖に比べて甘さが凝縮されているようなイメージですね。

はちみつと砂糖の違いとは? | 秋田屋通販オンラインショップ

甘味の基礎知識|日本醸造協会誌 106巻12号 前橋 健二

はちみつによる赤ちゃんの死亡事故のあらまし

さて冒頭でお話しましたが、2017年3月に生後5か月の男の子が、はちみつを摂取したことが原因で死亡するという痛ましい事故が起こりました。

食中毒の発生について|東京都

検査の結果、男の子は発症の約1か月前(1月中頃)から離乳食として、市販のジュースにはちみつを混ぜたものを飲んでおり、2月16日から、せきや鼻水などの症状が出ていたそうです。せきや鼻水程度であれば、「風邪かな?」程度に考えてもおかしくありません。

ところが、2月20日に痙攣や呼吸不全の症状が出たため救急搬送され、その後3月30日に亡くなってしまいます。

男の子の便や開封したはちみつからボツリヌス菌が検出されたため、足立区の保健所は死亡原因はボツリヌス菌によるものと断定しています。

赤ちゃんは、はちみつに含まれるボツリヌス菌に感染して、「乳児ボツリヌス症」を起こしてしまったのです。

乳児ボツリヌス症とは

乳児ボツリヌス症とは、はちみつを摂取した際に、付着しているボツリヌス菌の芽胞が赤ちゃんの腸内に感染し、腸管内で発芽・増殖する際に毒素を発生することでさまざまな症状を引き起こす病気のことです。

ボツリヌス菌の特徴

ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥砂中に存在する身近な菌で、低酸素状態に置かれると発芽・増殖(嫌気性菌)し、毒素を発生します。しかもこの毒素は、自然界の毒素の中では最強の毒力があると言われています。

また、ボツリヌス菌は熱や乾燥に強く、120℃で4分以上、あるいは100℃で6時間以上の加熱をしなければ完全に死滅しません。

ボツリヌス菌|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

乳児ボツリヌス症の症状

ボツリヌス菌の潜伏期間は3-30日ほどで、症状が発現するまでに個人差があります。主な乳児ボツリヌス症の症状は神経麻痺症状で、全身の筋力低下などが現れます。

まずボツリヌス菌が腸管内で発芽して毒素が産生されると、初期症状は便秘、哺乳力の低下など腸や消化器官の症状、活気の低下、泣き声が弱いなども見られます。

乳児ボツリヌス症が進行すると、首のすわりが悪くなる、筋力低下、よだれが多い、眼球運動の麻痺、呼吸が弱いなどの症状が現れ、重症になると呼吸筋の麻痺にまで進行することがあります。呼吸筋が麻痺すると、自発的な呼吸が阻害されるため死亡するケースもあります。

乳児ボツリヌス症 妹尾小児科

乳児ボツリヌス症の予防

東京福祉保健局では、乳児ボツリヌス症の予防として、以下の5つに注意するよう呼びかけています。

1.容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルトパウチ食品)や大部分の缶詰は、 120℃4分間以上の加熱が行われているので、常温保存可能ですが、これとまぎらわしい形態の食品も流通しています。「食品を気密性のある容器に入れ、 密封した後、加圧加熱殺菌」という表示の無い食品、あるいは「要冷蔵」「10℃以下で保存してください」などの表示のある場合は、必ず冷蔵保存して 期限内に消費してください。
2.真空パックや缶詰が膨張していたり、食品に異臭(酪酸臭)があるときには絶対に食べないでください。
3.ボツリヌス菌は熱に強い芽胞を作るため、120℃で4分間(あるいは100℃6時間)以上の加熱をしなければ完全に死滅しません。そのため、 家庭で缶詰、真空パック、びん詰、「いずし」などをつくる場合には、原材料を十分に洗浄し、加熱殺菌の温度や保存の方法に十分注意しないと危険です。 保存は、3℃未満で冷蔵又はマイナス18℃以下で冷凍しましょう。
4.食中毒症状の直接の原因であるボツリヌス毒素は、80℃30分間(100℃なら数分以上)の加熱で失活するので、食べる直前に十分に加熱すると効果的です。
5.乳児ボツリヌス症の予防のため、1歳未満の乳児には、ボツリヌス菌の芽胞に汚染される可能性のある食品(蜂蜜等)を食べさせるのは避けてください。

ボツリヌス菌|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

はちみつ入りのおかし・飲料もNG

一般に販売されているはちみつは、ボツリヌス菌が死滅する程の十分な加熱処理が施されていないため、芽胞に汚染されている可能性があります。

もちろん、はちみつが含まれる市販のお菓子や飲料、保存食品も同様に十分な加熱処理が施されていない場合があるため、1歳までは与えないのが無難です。

また、ボツリヌス菌は「ボツリヌス食中毒」を発症する可能性もあります。これは乳児から大人もかかる食中毒の1種で、腸管内での芽胞ではなくボツリヌス菌が産生する毒素を摂取することで発症します。

潜伏期間は8-36時間で、吐き気や嘔吐、視力障害、言語障害、嚥下障害などの神経症状が現れます。

ボツリヌス菌は嫌気性菌のため、自家製の缶・瓶詰め食品やパックの保存食品で繁殖しやすいと言われています。レトルト食品は常温で長期保存が可能ですが、チルド食品はラベルの保存方法の欄に「要冷蔵」や「10度以下で保存」などと表記されているため、各食品の保存ルールに従ってください

もちろん、ボツリヌス菌以外の菌も、食品の保存方法によって増殖してしまい、食中毒の原因になりかねないため、各食品の保存方法や調理方法のルールを守るなど十分な注意が必要です。

ボツリヌス菌|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

はちみつは何歳から? いつから食べられるか :ボツリヌス菌 | 母子栄養協会|離乳食と幼児食の資格取得

はちみつの危険性の指摘は30年以上前から

赤ちゃんがはちみつを摂取する危険性は、最近になって叫ばれるようになったことではありません。

内閣府は、1987年10月に各都道府県に対して、1歳未満の乳児にはちみつを与えないように指導した「乳児ボツリヌス症の予防対策について」という通知を出しています。

<通知>乳児ボツリヌス症の予防対策について

個人的には「赤ちゃんにはちみつはダメ!」は割と常識の部類に入ると思っていましたが、今回の事故が起こったことで、そうではない認識の人が多いことを知りました。

現在新生児を育児中のママや妊婦、妊活中の人は、乳児(とくに生後3週間-6か月ごろ)は消化器官が未熟なため、腸管内ではちみつに含まれるボツリヌス菌が発芽・増殖して毒素が産生され、乳児ボツリヌス症を発症する恐れがあることを認識しておきましょう。

ちなみに、これは赤ちゃんによる直接摂取の話で、授乳中のママがはちみつを摂取して、乳児ボツリヌス症が発症した実例は出ていません。

乳児ボツリヌス症はハチミツだけが原因ではない?|はちみつマイスター / Honey Meister


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