記事の読了時間は約 6 分です。
産後に運転ができないと困る…
産後しばらくのあいだ控えるべきこと、禁止されているものはいくつかあります。
たとえば、産後に湯船に浸かる行為は、産褥感染症の恐れがあるため、1か月健診で医師に許可を受けるまでは禁止されています。お風呂に入れないことは辛いですが、シャワーがあるため我慢はできます。
同じように産後に禁止されていることで、困るのが車の運転です。
東京など都市圏に住んでいて、すぐに電車に乗れ、周辺に全ての施設が揃っている人なら良いかもしれませんが、車を使わないと用事が済ませられない環境にいる人も多いはずです。
「産後に車に乗れないとスーパーにも行けない……。」
こんなママはどうすれば良いのでしょうか。また、産後の車の運転はいつからできるんでしょうか。
今回は、なぜ産後すぐに車を運転してはいけないのか、また産後の運転の注意点についてお話したいと思います。
産後すぐに車を運転してはいけない理由
なぜ産後すぐに車を運転してはいけないのでしょうか。
理由1.急激な眠気がある
産後は、昼間ふとした時に寝落ちしてしまうことがあります。
これは、夜の授乳などで睡眠不足のせいもありますが、産後の女性ホルモンの影響で自律神経が乱れ、眠気が増すためです。眠気は急に襲ってくるため、運転中に眠くなると事故の危険があります。
理由2.目が疲れている
出産は大量の出血を伴うため、産後は一時的に血液が不足した貧血状態になります。しかも、母乳を作るためにたくさんの血液が必要になり、身体の細部に血液が十分に回りません。
そのため、目の周辺の毛細血管の血流が悪くなり、目の疲れを感じやすくなります。もちろん、かすみ目や視力低下を感じているのに運転をするのは危険です。
理由3.注意力が散漫になっている
産後は、生活習慣が急激に変わることでストレスを感じるため、注意力が散漫になります。また、自律神経の乱れや貧血も、集中力を欠く原因になります。
注意力が散漫なとき、なかなか集中できないときに車に乗るのは危険ですよね。
理由4.体力や運動能力が低下している
産後は基本的な体力が落ちているだけでなく、運動能力や筋力も落ちています。
運転に使う体力や運動能力、筋力の落ち具合は人によって変わりますが、基本的な能力が落ちているにもかかわらず、車を運転するのは危険です。
出産後はいつから車を運転できる?
では、産後はいつから車の運転をしても良いのでしょうか?
もちろん、体力の回復具合には個人差がありますが、いくら身体の調子が良くても、自分で運転ができるかどうかの判断をしてはいけません。
あくまでも目安ですが、基本的には産後の1か月健診で医師に許可をもらってから車の運転を行うことができると考えてください。
ただし、身体の機能や体力は徐々に回復していくものです。そのため、産後1か月を過ぎていても体調が優れない場合は、運転を控えなければいけません。
一般的に、産褥期は産後6-8週間ですが、産褥期の身体変化と機能回復には数か月かかることもあります。産後の肥立ちが悪い場合は、それ以上の養生期間が必要になります。
車が運転できないと困る場合の対策
出産後1か月は車の運転を控えた方が良いといっても、どうしても外出せざるを得ない場合もあると思います。その時はどうすれば良いでしょうか。
対策1.家族を頼る
自分1人ならまだ良いのですが、お家には赤ちゃんもいます。そのため、行かなければいけない場所があっても、基本的には家族に行ってもらうようお願いしましょう。
もし、本人が行かなければいけない場合は、赤ちゃんを預けて、さらに家族に連れて行ってもらえることがベストです。
対策2.ネットスーパーを利用する
もしスーパーに行きたい場合は、ネットスーパーなどを利用しましょう。産後は気分が優れないこともあります。その場合は料理もお休みして、ケータリングを利用してください。
対策3.食事の方法を考える
スーパーなどで買い出しを行う場合は、なるべく日持ちする食材、冷蔵庫に入れなくても良い食材を選びましょう。もちろん、スーパーには家族についてきてもらってください。
外出を控える期間は1か月程度なので、その時期は旦那さんになるべく外食をお願いしたり、早めに家に帰ってきて家事・育児を手伝ってもらえるように調整してください。
ただし、手軽だからと言って、ママが毎日カップラーメンを食べるのはNGです。赤ちゃんの授乳は、産後の1か月がとても大切な時期です。栄養バランスが良い食事を心がけましょう。
対策4.タクシーを利用する
家族を頼ることができず、その他の理由で外出しなければいけない場合は、タクシーを利用しましょう。タクシー会社によって違いますが、初乗り料金は400円-700円前後、初乗りの距離は1-2kmです。
ママが車を運転できない産後の期間のタクシーは、必要経費だと思って割り切ってください。
ちなみに、産後の退院の際は、新生児用のチャイルドシート(ベビーシート)をつけて、ママと赤ちゃんを病院から自宅に送り届けてくれるタクシーサービス(キッズタクシー、チャイルドタクシーなど)もあります。
産後の運転許可後の注意点
たとえ、医師から運転許可が下りても、体調の良し悪しを判断をするのは自分です。赤ちゃんのママは1人しかいないことを自覚して、注意しながら運転するようにしましょう。
注意点1.長時間の運転はしない
わたしは産後すぐに息子の病気のために、車で片道1.5時間ほどの「こども病院」に通う必要がありました。
産後2か月ほどで病院に行く日は夫に会社を休んでもらいましたが、それ以後で夫が会社を休めない日は、わたしが休憩を取りながら運転をして病院に通っていました。
長時間の運転は、身体に負担がかかります。医師の運転許可後でも、しばらくは長時間の運転は避けた方が良いのですが、仕方がない場合は必ず何度か休憩を取り、余裕を持って運転しましょう。
注意点2.運転に集中する
生後間もない赤ちゃんをチャイルドシート(ベビーシート)に乗せると、後ろの様子がとても気になります。
たとえ赤ちゃんが泣いても、普通の泣き方なら運転に集中してください。もし赤ちゃんの泣き方に違和感を感じたら、後ろを振り返らずに早めに車を停めて赤ちゃんの様子を確認してください。もちろん、チャイルドシートは正しくつけましょう。
注意点3.体調が悪い日は運転しない
たとえ、産後1か月以上が経っても、体の調子が悪い日はよくあります。1か月が過ぎても産褥期ならなおさらです。
頭痛や吐き気、後陣痛が続く人もいます。帝王切開や会陰切開の傷が痛む日もあります。また、急な眠気に襲われることもあるでしょう。
そんなときの運転は、自分だけでなく赤ちゃんまで事故の危険にさらす行為です。運転前に自分の体調をチェックすることを忘れないでください。
産後はとくに安全運転を心がける
妊娠前は、車の運転が趣味だった人もいるでしょう。運転に自身があると、「事故ったことなんてないし……。」「ちょっとスピード出すくらい……。」と思うかもしれません。
ただ、もう妊娠前の自分とは違うことを自覚してください。なるべく追い越し車線には入らず、後ろから煽られてもスピードを出さずに、一旦路肩に車を停めるくらいの心の余裕が必要です。
「赤ちゃんが乗っています」ステッカーを貼って、安全運転を心がけていることを周囲に伝えることもお忘れなく。赤ちゃんを車に乗せる際は、自分の運転でも他人の運転でも以下のことに気をつけてください。
最後に、産後1か月以内でどうしても車を運転しなければいけない人もいると思います。「絶対に車に乗ってはいけないのか!」と言われると……事情によりますがおすすめはしません。
以前もお伝えしましたが、1年間で自動車事故に合う確率は0.9%で、これは妊産婦死亡率よりも圧倒的に高い確率です。
20-24歳の妊産婦死亡|4.7件/10万件……0.0047%
25-29歳の妊産婦死亡|6.0件/10万件……0.0067%
30-34歳の妊産婦死亡|9.5件/10万件……0.0095%
35-39歳の妊産婦死亡|24.5件/10万件……0.0245%
40-44歳の妊産婦死亡|124.5件/10万件……0.1245%
また、妊娠22週以降の胎児から6歳未満までの乳幼児の死亡率は1000人中5人未満、つまり0.5%の確率なので、こちらも自動車事故に合うよりも少ない確率です。
車を運転するということは、出産よりもリスクが高いことを認識してから乗るようにしてください。