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赤ちゃんがおしりを引きずって移動してる…
厚生労働省が平成22年度に行った「乳幼児身体発育調査」によると、赤ちゃんがずりばいを行う平均的な時期は生後6-7か月ごろで、はいはいをするのは生後7-8か月ごろです。
もちろん、赤ちゃんの運動機能の成長には個人差がありますし、必ずしも他の子と同じ時期にずりばいやはいはいをするわけではありません。
生後04-05か月未満:0.9%
生後05-06か月未満:5.5%
生後06-07か月未満:22.6%
生後07-08か月未満:51.1%
生後08-09か月未満:75.4%
生後09-10か月未満:90.3%
生後10-11か月未満:93.5%
生後11-12か月未満:95.8%
生後12-13か月未満:96.9%
生後13-14か月未満:97.2%
生後14-15か月未満:98.9%
生後15-16か月未満:99.4%
生後16-17か月未満:99.5%
また、はいはいに移行する際に、「はらばい」「ひじばい」「高ばい」などずりばいの亜種もいろいろあり、赤ちゃんがどの行動を選択し、どのような順番で運動機能が発達するかは赤ちゃん次第です。
そんな赤ちゃんの中に、なかなか四つん這いではいはいをせずに、お座りからおしりをズリズリ引きずって移動する個性的な子がいます。赤ちゃんがおしりを引きずって移動する方法を「いざりばい」と言います。
いざりばいには、一体どのような意味があるのでしょうか。はいはいをしない赤ちゃんには、何らかの影響があるのでしょうか。
今回は、いざりばいをする赤ちゃんの割合や原因についてお話したいと思います。
いざりばいとは
いざりばい(座りばい、尻ばい)とは、お座りできる子がはいはいをしないで、座ったままおしりを引きずったり、おしりをポンポン浮かせながら移動する様子を言います。
シャフリングベビーとは
いざりばいをする赤ちゃんのことを「シャフリングベビー(shuffling baby)」や「シャッフラー(shuffler)」、または「いざりっこ」などと呼びます。かわむらこどもクリニックの動画を見ると、いざりばいをする子のイメージがわかりやすいと思います。
なお、「いざり(膝行/しっこう)」とは、足が不自由な身体障害者が膝やおしりをついて移動する行為やその人そのものを表すため、一部では差別用語とされています。場合によっては使い方に注意が必要です。
一般的な赤ちゃんの運動機能は、「首すわり→寝返り→寝返りがえり→ずりばい→お座り→はいはい→つかまり立ち→つたい歩き→ひとり歩き」と発達しますが、シャフリングベビーははいはいをしないため、ママは「発達性協調運動障害」などの発達障害などを心配します。
シャフリングベビーの割合と特徴
「発達障害があるからシャフリングベビーになる。」という考え方は間違っています。ましてや、いざりが脳の発達に影響を与えるわけでもありません。
シャフリングベビーの割合は3-4%
イギリスの小児科医ロブソン(Peter Robson)によると、赤ちゃんの40人に1人以上(3-4%)はシャフリングベビーで、その多くが通常とは異なる筋道で運動発達をする「正常な子供」だと結論づけており、以下の特徴があるとしています。
約40人に1人は、ハイハイをしないシャッフラーであること、歩き始める時期が平均1歳9ヶ月とハイハイをする子供より遅れること、またこれらの子供は、支えて立たせると足を床につけずに曲げてしまいあたかも空中に座っているような姿勢をとること、腹這いを嫌うことなどの共通した特徴がある
【子供のからだと健康】第1回 ハイハイしない子ども - 研究室
Robson P. Shuffling, Hitching, Scooting or Sliding: Some Observations in 30 Otherwise Normal Children. Developmental Medicine & Child Neurology 1970; 12: 608-17.
シャフリングベビーの特徴
1.シャフリングベビーは40人に1人の割合である
2.シャフリングベビーは手足腰の筋力の発達が遅れている
3.シャフリングベビーを立たせると足を床につけることを嫌う
4.シャフリングベビーはうつぶせの姿勢が好きではない
5.シャフリングベビーはひとり歩きの平均が1歳9か月である
要は、多くのシャフリングベビーは筋力などの発達に多少の遅れがあるか、赤ちゃん自身の性格によるものだということです。
シャフリングベビーの発達障害の可能性
赤ちゃんがシャフリングベビーになる原因は明らかになっていませんが、シャフリングベビーだから赤ちゃんに発達障害や脳性麻痺などがあるわけではありません。
ただし、筋力などの発達の遅れがある赤ちゃんの一部には以下の特徴が見られ、その場合は発達障害や脳性麻痺などの可能性もあります。
発達障害や脳性麻痺が疑われる特徴
(1)ミルクののみが悪く、泣き方も弱い
(2)首のすわりが悪く抱っこするとぐらぐらする
(3)表情の発達が乏しく、言葉の理解も遅い
(4)手指の発達が遅い
また、これらの特徴はシャフリングベビーでなくても、赤ちゃんの発達障害を疑うきっかけになります。そのため、赤ちゃんに上記の特徴が見られたら、1度医師に相談してください。
赤ちゃんにいざりばいが見られたら
もし赤ちゃんがはいはいをしなかったり、いざりばいをする様子を見ると心配になりますね。
ただ、いざりばいをしているから発達障害だという確率は低く、それ以外の特徴で赤ちゃんの状態を判断しなければいけません。
いざりばいの矯正は必要?
もちろん、健康で障害がない赤ちゃんがいざりばいをしていても、とくに矯正の必要はありません。ただし、手足の筋力の発達が遅れていることは考えられるため、赤ちゃんの好奇心をくすぐって、はいはいに興味を持たせることは良いことだと思います。
ちなみに、上記で挙げた「かわむらこどもクリニック」の動画の子も、その後は1歳5か月でつたい歩きをし、1歳9か月にはひとり歩きをしたようですね。
このお子さんの発達は次の通りです。
1歳5ヶ月 膝歩行、つたい歩き
1歳7ヶ月 独り立ち
1歳9ヶ月 歩行
現在小学生で、何の問題もないことを付け加えておきます。
途中で発達が止まってしまった場合は、Shuffling Babyとは呼びません。
赤ちゃんの発達は、つい平均的な時期が気になったり、周囲の子と機能発達の時期を比較して心配しがちです。反対に、赤ちゃんの発達がちょっと早いと、誇らしい気持ちになります。
ただ、赤ちゃんの成長が早いほど、「もっとゆっくり見ていたかったなぁ。」と後から思うのも親心です。どちらにしても、大切な赤ちゃんの成長なので、心穏やかに育児をするのは難しいものですね。
赤ちゃんのはいはいについては、以下も参考にしてください。