妊婦加算とは?診療報酬改訂で妊娠中の初診・再診料が増えた理由

d06504511be064049975e04ece262d88_s

この記事の読了時間は約 6 分です。

話題になった妊婦加算

さて、みなさんはこれが何かわかるでしょうか。

「妊婦加算……?75?38?何これ?」というのが、一般的な(とくに男性の)反応ではないかと思います。

妊婦加算とは、妊婦の医療費に関わる規定の1つですが、少し前にTwitterで火が付き、どんどん拡散され、新聞やテレビでも話題として取り上げられるようになりました。ただ、話題になる半年前の2018年4月には施行されていたものです。

この妊婦加算を巡って、賛否両論が繰り広げられていますが(否の方が圧倒的かな……)、まだ理解していない人もたくさんいますね。わたしもTwitterで見かけたときに、瞬間湯沸かし器のようにブワッと怒りがこみ上げましたが、今は少し冷静に見るようにしています。

そこで今回は、妊婦加算がどのようなものなのか、なぜ妊婦加算が施行されたのかについてお話したいと思います。

妊婦加算とは

妊婦加算とは、妊婦が医療機関を受診した際に、所定の診療報酬に加えて、妊婦であることを理由とした加算を医療機関が請求できるものを言います。少し乱暴な言い方をすると、妊婦割増のような意味合いです。

現在、診療報酬は2年毎に見直しが行われていますが、妊婦加算は2018年に「初診料」「再診料」「外来診療料」において新設されたものです。

診療報酬とは

診療報酬とは、医療機関が行う医療行為の対価として、公的医療保険制度の保険者から医療機関に支払われる保険診療の報酬のことです。

医療機関が行うすべての医療行為には○点という決まった点数があり、医療機関は毎月その点数を合計し、診療報酬明細書(レセプト)として計上しています。1点は10円で計算されます。

公的医療保険制度の説明は省略しますが、たとえば医療行為が1000点(1万円)だった場合、わたしたちが医療費として3割の3000円を負担し、残り7割の7000円は保険者が毎月徴収する健康保険料+税金で賄われています。

診療報酬の仕組み

出典|なるほど診療報酬!|国民のみなさまへ|日本医師会

ちなみに、イラストには「全て私たちの収入になっているわけじゃないんですよ」とありますが、正しくは全て病院の収入になっています。医師の所得(給料など)とは違います。

初診料とは

初診料とは、初めて診察が行われた日に算定する診療報酬で、通常は282点(2820円)と決まっています。利用者負担が3割の場合の医療費は850円(10 円未満は四捨五入)になります。

再診料とは

再診料とは、診療所及び一般病床200床未満の病院において、初診以外の診療が行われた場合に算定する診療報酬で、通常は72点(720円)と決まっています。利用者負担が3割の場合の医療費は220円になります。

外来診療料とは

外来診療料とは、一般病床が200床以上の病院において、初診以外の診療が行われた場合に算定する診療報酬で、通常は73点(730円)と決まっています。利用者負担が3割の場合の医療費は220円になります。

再診料と外来診療料の違いは、病院の規模が違うだけで同じものと考えて良いですね。

妊婦加算で増えた医療費はいくら?

では、診療報酬に妊婦加算が加わったことで、妊婦が支払う医療費はどのように変わったのでしょうか。初診料、再診料、外来診療料の妊婦加算は以下の通りです。

妊婦加算
初診料|75点(750円)
再診料|38点(380円)
外来診療料|38点(380円)

初診の診療報酬に妊婦加算が加わると、75点(750円)が上乗せされます。自己負担3割だとすると、医療費の支払いは225円増えます。

妊婦加算ありの初診料=850円+225円=1075円

再診の診療報酬に妊婦加算が加わると、38点(380円)が上乗せされます。自己負担3割だとして、医療費の支払いは114円増えます。

妊婦加算ありの再診料=220円+114円=334円

外来診療の診療報酬に妊婦加算が加わると、38点(380円)が上乗せされる。自己負担3割だとして、医療費の支払いは114円増えます。

妊婦加算ありの外来診療料=220円+114円=334円

つまり、単純な初診料、再診料、外来診療料に対して、妊娠をしているという理由で、医療費を25-50%ほど多く支払わなければいけないということです。ここだけを見ると、消費税10%許せない!どころの騒ぎではありませんね。

妊婦加算の算定要件など疑問点

では、妊婦加算の算定要件(どのように適用されるのか)に対する疑問を、京都府保険協会のQ&Aで見てみましょう。

参考|保険請求 NEWS 妊婦加算(初診時75点、再診時38点)の新設について!  – 京都府保険医協会

患者が妊婦かどうかの確認

妊婦加算は、医師が女性を診察した際に、妊婦だと判断した場合に限り算定可能なものです。ここで妊娠反応検査の実施や母子健康手帳の確認は必要ではありません。

診療後日に妊婦と発覚した場合

もし、医師が女性を診察した際に妊婦だと判断せず、後から妊婦だっと発覚した場合、遡って妊婦加算を算定することはできません。

診療内容が妊娠と関係ない場合

妊婦加算は、診療内容が季節の風邪やもともと持っている持病など、妊娠とは関係ない場合でも適用されます。

夜間や早朝など時間外診療の場合

妊婦加算は、夜間・早朝等加算(時間外診療による加算)と合わせた算定が適用されます。

妊婦加算ができた理由

診療報酬はけっこう複雑で、医療行為は様々な条件によって点数が変わります。そのため、大手の医療機関では、数億円かけて診療報酬の計算やレセプトのやりとりをするシステムを導入するくらいです。

今は妊婦加算が話題になっていますが、時間外診療も加算されることを知らない人はいますし、実は乳幼児加算があったり、脳卒中など特定の病気の加算などもあります。

このような加算は、医療対応が難しかったり、特別な知識が必要な場合に対応を平準化させる目的で導入されています。つまり、「対応ができれば加算されるから、医療機関も収入が増えるよ。」という考え方です。

妊婦加算も同じ理由です。妊娠していることで注意しなければいけない病気や環境がありますし、処方できる薬も限られます。妊婦を診療することは、医師にとってもリスクを考えなければいけないわけです。

たとえば、妊婦が耳の調子が悪く耳鼻科に行った場合、処方される飲み薬は妊娠前とは違い、妊婦や胎児への影響を考えた成分の薬に変えなければいけないかもしれません。足を骨折して外科に運ばれたときに、レントゲン撮影の方法を変えなければいけないかもしれません。

これまでは別の科目の医師でも、妊婦に対して使える薬を調べるなど無料で手間をかけていたけど、今後はその時間や知識に対してお金を請求します、というものです。

そう考えると……まぁ仕方がないのかな……という気もしますが。

妊婦加算と医療費の問題

現在のところ、「妊婦加算は妊婦に対する増税だ!」「妊婦の医療費負担を増やすなんて、少子化に悪影響だ!」というのが、妊婦加算に対する大多数の声だと思います。わたしもこの意見には賛成です。

一方、妊娠10か月程度の間に、1回たかだか225円や114円が増える程度の話しなので、今の医療機関の体制を考えたら、その程度の負担は仕方がないという考え方もあります。この考え方も理解はできます。

ただ、金額うんぬんではなく、負担が増える事実があるだけで、これから子供を作りたいと考える人たちの気持ちは重くなります。とくに、迷っていた人には良くない影響があるはずです。

では、妊婦加算分を税金で負担すれば良いか……というと、それも将来の子供のことを考えると、モヤッとした気持ちが残りますよね。

そもそも、妊婦加算があるというだけで国の医療費の総額は上がります。そのため、仮に妊婦が3割負担しても、残り7割の一部は税金で賄われているわけで、そのしわ寄せはやっぱりわたしたちに回ってくるんです……。

まぁ、国や医療機関は、まずはしっかりと情報伝達をすることが大切ですね。もちろん、わたしたちも人任せにするだけではなく、自分が関係する情報は常に取得して、知識として備えておかなければいけないわけですが。