カンガルーケアのやり方と効果は?早期母子接触の違いと事故リスク

カンガルーケアのやり方と効果は?早期母子接触の違いと事故リスク

投稿日:2019年4月8日 更新日:

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出産直後にママに密着する赤ちゃん

「はーい、元気な男の子ですよーー。」と言って、助産師さんが分娩台に寝ているママの側まで赤ちゃんの顔を見せに来ます。その後、赤ちゃんをママの上にうつ伏せに寝かせて、ママが赤ちゃんを愛おしそうに見ている……。

そんなワンシーンをドラマやドキュメントの映像で見たことがある人は多いでしょう。妊婦や妊活中の女性の中には、この姿に憧れている人もいると思います。

一方、出産後に助産師さんが赤ちゃんを連れてきて、「あ、あのシーンだ!」と思ったら、「はーい、じゃあ赤ちゃん洗ってきれいにしますねー。」とすぐに連れて行かれて、がっかりした人もいるかもしれません(最近は産湯で洗うことは減っているようですが)。

出産直後に、赤ちゃんをママのところに連れてきて抱っこをさせることを「カンガールケア※」と言います。日本では2000年代に入って徐々に増えてきましたが、すべての出産で行われるわけではありません。

注意一般的な総称として呼ばれている

では、カンガルーケアとは一体何のために行うものなんでしょうか。単純に出産直後の赤ちゃんを抱っこできる幸せを味わいたいからなのでしょうか。

今回は、カンガルーケアのやり方とその効果やリスクについてお話したいと思います。

カンガルーケアとは

カンガルーケア(Kangaroo care)とは、出産直後の新生児を母親の胸の上に仰向けで密着させ、肌のぬくもりを感じたり、初めての授乳を行ったりする行為のことです。

カンガルーケアは本来、早産などでこれからNICUに入る未熟児の赤ちゃんが、母親と離れてしまう前にスキンシップをとったり、安心感を与えるために行うものです。

そのため、日本では正期産で産まれた赤ちゃんに対してもカンガルーケアという言葉を使いますが、日本周産期・新生児医学会では「早期母子接触(early skin to skin contact)」という違う行為として分けられています。

出生直後におこなう「カンガルーケア」について|日本産婦人科医会

「早期母子接触」実施の留意点|日本周産期・新生児医学会

カンガルーケアの由来

カンガルーケアの由来は、母親が赤ちゃんと肌を密着させて包み込むような姿が、ポケットに赤ちゃんを入れて育児をするカンガルーの様子に似ていることから名付けられました。

もともとは1970年代のコロンビアの出産において、早産・低体重児でも保育器がまったく足りなかったため、数日間保育器に入れて状態が改善した赤ちゃんを母親と素肌で密着させて、哺乳や保温を目的としたケアに移行したことが始まりです。

カンガルーケアの実施率

2010年にこども未来財団が行った「分娩室・新生児室における母子の安全性についての全国調査」によると、早期母子接触(カンガルーケア)を行っている施設は65.4%となっています。

ただしこれは早期母子接触(カンガルーケア)を行っている施設の割合であり、実施率ではありません。実施率はより低くなるでしょう。

カンガルーケアを行う時間

早期母子接触(カンガルーケア)を行う時間は病院によって異なり、10分以内が28.5%、15-30分が27.7%、40-60分間が19.7%、90分以上が19.9%という割合で行われています。

カンガルーケア、早期母子接触の効果

カンガルーケアは、未熟児を母親に密着させることで、保温効果と泌乳の維持による救命的効果が期待されます。ただし、一般的な先進国では、未熟児をNICUに入れる前に密着させることで、親子の愛着形成を促進させる効果が期待されます。

Andersonら、J Perinat Med 1991

飯田ゆみ子ら、小児看護 1997

カンガルーケアの効果
1.皮膚接触によって新生児の体温が維持される
2.皮膚接触によって呼吸が安定し、体重増加を促進する
3.母乳の分泌が増し、母乳哺育の期間が長くなる
4.出産直後の密着によって、母子の愛着形成が促進する
5.新生児に母親のぬくもりを体感させて安心感を与える
6.未熟児出産をした母親の喪失感を軽減する
7.母親が新生児に触れることで親の自覚を感じる

Whitelaw A, Sleath K: Lancet 1985

上記の中で、早期母子接触の効果として期待されるのは、3、4、5、7ですが、どちらにしてもNICUに入る必要がない健康な赤ちゃん(正出生体重児)に対して、必ず行わなければ得られない効果ではありません。

カンガルーケアのやり方

カンガルーケアは、出産直後、または新生児のケアなど一通りの確認が終わった後に行われます。ただし、新生児は体温の低下が激しく体力もないため、出産後の医師の判断によってカンガルーケアの可否や時間が決められます。

カンガルーケアを行う際は髪の毛を束ね、衣服の打ち合わせ部分を開いて、赤ちゃんの身体を母親の胸に密着させます。赤ちゃんの身体にはタオルなどをかけて、体温が下がることを防ぎます。もし赤ちゃんがおっぱいを求めているようであれば、そのまま授乳をさせます。

出生直後におこなう「カンガルーケア」について|日本産婦人科医会

全身状態が落ち着いた未熟児に対するカンガルーケア

全身状態がある程度落ち着いた未熟児に対しては、母子同室のうえで、24時間カンガルーケアを行うことが勧められます。

集中治療下の新生児に対する一時的なカンガルーケア

集中治療中の新生児に対するカンガルーケアは、体温や呼吸状態などを確認し、安全が確保された状態、また家族の同意を得たうえで、短時間のカンガルーケアを行います。

正期産児の出産直後に行うカンガルーケア(早期母子接触)

健康な正期産児の場合、新生児のモニタリングと医療スタッフの観察のもとで、出産から30分以内にカンガルーケアを行い、1時間ほど継続することが望ましいとされます。

カンガルーケア(早期母子接触)の適応基準・中止基準

母親の適応基準
・本人が早期母子接触を希望している
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
児の適応基準
・胎児機能不全がなかった
・新生児仮死がない(1分・5分アプガースコアが8点以上)
・正期産の新生児である
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

母親の中止基準
・傾眠傾向にある
・医師、助産師が不適切と判断する
児の中止基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)が90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

「早期母子接触」実施の留意点|日本周産期・新生児医学会

カンガルーケアの事故やリスク

良いことしかないように思えるカンガルーケアには、リスクを招くという反対意見もあります。ただし、多くの事故やリスクは、医療スタッフが目を離さない限り軽減できるものでしょう。

新生児の落下事故

カンガルーケアは、産まれたばかりで何もできない赤ちゃんを出産したばかりで心身ともに疲れ切っている母親に預ける行為です。そのため、赤ちゃんが母親から落下する危険性があります。

新生児の容態の急変

新生児は出産後にさまざまなケアが必要です。とくに、体温や呼吸の状態が急変するため、医師や医療スタッフが常にカンガルーケアの状況を確認し、容態の変化に迅速に対応しなければいけません。

カンガルーケア中の事故や後遺症

出生直後におこなう「カンガルーケア」について|日本産婦人科医会

上記のようにカンガルーケア中に心臓が止まり、心肺蘇生が必要になるケースもあるため注意が必要です。もしこのようなケースで新生児が障害を負ったり、死亡してしまうと、母親の心的外傷の原因になってしまいます。

カンガルーケアを正しく理解しよう

カンガルーケアは、もともとは未熟児の回復や愛着形成のために行われていたものですが、近年は健康な正期産児でもさまざまな効果が期待されて行われることが多くなりました。

ただし、健康な正期産児だからか、医療スタッフが母子から目を離したり、十分な安全を確認しないままカンガルーケア(早期母子接触)を行い、それが赤ちゃんの落下や処置の遅れにつながる事故が起きていることも事実です。

赤ちゃんが正期産時でも未熟児でも、カンガルーケアは親子の絆を深める行為なので、安全に行える環境であれば推奨されるものだと思います。

もしカンガルーケアを受けたい場合は、事前に病院にどのように行うのか、どのような体制で行うかを聞いて、安全に行えるかを確かめてください。

もちろん、カンガルーケアに対応していない病院もあります。カンガルーケアは、大切な出産のオプションでしかありません。

そのため、もしカンガルーケアができなくても、すぐに赤ちゃんと触れ合えることを忘れずに、気持ちを切り替えて良い出産を迎えられるようにしましょう。

子育ては科学的に学ぶ時代

子育ては日々変化しています。今日OKな子育てが、明日はNGになるかもしれません。

「なんで泣き止んでくれないの?」「わたしの言うこと聞いてよ!」「もっとしっかり食べてほしいのに……。」こんな悩みを解決する子育てはできてますか?

今もっとも正しい方法は、脳科学や心理学的を使った子育てです。赤ちゃんや子供の心を理解できれば、子育てがもっと楽しくなります。

まーさ
わたしも保育士として、年10回は発達心理学、栄養学、衛生管理学などの研修を受けます。

保育士が心理学を学ぶのは当たり前。幼児教育に力を入れる園ほど研修は多いです。子供の気持ちを知りたいママは、以下から資料を取り寄せてみてください。

子供の気持ちを理解できるようになって、乳幼児教育アドバイザーという第二の人生を始めてもいいですね。

昔からの子育てには正しい方法もありますが、ママが辛いだけの方法もあります。「うちの子かわいい!」がずっと続くよう、楽しい子育てをしてください。

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まーさ

保育士資格、幼稚園教諭免許(一種)を取得後、保育園・幼稚園・支援センターを複数回経験して、もうすぐ業界歴20年です。 仕事と2人の子育てをこなしつつ、勉強をしつつ、ゆっくり情報を発信しています。

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