鉗子分娩は頭や顔に傷跡が残る?後遺症や発達障害リスクは

眠っている顔がパンパンの赤ちゃん

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急速遂娩術(きゅうそくすいべんじゅつ)とは

出産方法にはさまざまな種類がありますが、経腟分娩の中で分娩中に母体や胎児に何らかのリスクが生じると、医療器具などを使って医療処置を行う分娩方法がいくつかあります。

たとえば、「鉗子分娩」や「吸引分娩」は、子宮口の状態や胎児の下降度などを総合的に判断して行われる分娩方法で、これらを総称して「急速遂娩術(きゅうそくすいべんじゅつ)」と言います。

今回は、急速遂娩術の1つである「鉗子分娩(かんしぶんべん)」を行う理由・条件、また鉗子分娩にどのようなリスク・影響があるのかというお話をしたいと思います。

参考|急速遂娩 | 看護用語辞典 ナースpedia※リンク切れ

鉗子分娩(かんしぶんべん)とは

鉗子分娩とは、分娩が進まずリスクがある場合の緊急手段として、鉗子分娩用の鉗子(ハサミ型の大きなクリップ)をで胎児の頭を挟み、いきみのタイミングに合わせながら引っ張って分娩補助を行う方法を言います。

鉗子分娩は、分娩時の胎児の状態によって、児頭を引っ張るために用いる「ネーゲレ鉗子」、胎児の回旋を助けるために用いる「キーラン鉗子」の使い分けが必要になります。

前述した通り、急速遂娩術には鉗子分娩と吸引分娩があり、鉗子分娩は吸引分娩に比べて、索引力が強く、骨盤位や顔位でも行えるという利点がありますが、日本では主に吸引分娩が行われます。

その理由としては、鉗子分娩の方が技術の取得が難しく、産道の損傷頻度が高いだけでなく、吸引分娩を行うよりも膣口を広げる必要があるため会陰裂傷を起こしたり、鉗子で挟んだ児頭に傷をつける可能性が高いためです。

鉗子分娩が行われる理由

理由1.児頭が大きく産道を通りにくい

胎児の頭が大きく産道の途中で引っかかったり、膣口から胎児がなかなか取り出せない場合に鉗子分娩を行います。

理由2.肩甲が引っかかり産道を通りにくい

肩甲難産(産道内で上半身が引っかかり出産しづらい状態)を起こす胎児も、鉗子分娩を行う理由になります。ただし、鉗子分娩によって旋回異常が起こり、肩甲難産を引き起こす場合もあります。

肩甲難産の危険因子のひとつとして吸引・鉗子分娩が挙げられている.
とくに中在からの吸引・鉗子分娩での頻度が多く,吸引分娩ではより頻度が上昇するとされ
ている.

引用|6)巨大児の取り扱いについて|日産婦誌60巻 9 号|日本産科婦人科学会

理由3.臍帯巻絡など臍帯異常が起きている

胎児のへその緒が身体に巻き付いていたり、臍帯脱出によってへその緒が産道で圧迫されているなどの臍帯異常がある場合は、胎児に送られる酸素や栄養素が遮断されている可能性があるため、素早く取り出さなければいけません。

理由4.産道を通る向きや回旋がおかしい

胎児は狭い産道を降りてくる際、身体を捻って回りながら少しずつ頭を膣から出します。これを「回旋(かいせん)」と言い、回旋には第1回旋から第4回旋まであります。

ところが、頭の向きや回旋に問題があると、胎児がなかなか出て来れないため、鉗子を使って誘導する必要があります。

理由5.新生児仮死状態にある

分娩の最中に胎児がぐったりしていたり、脈拍が少ない・止まっているなどがわかった場合、または仮死状態だとわかった場合は、速やかに鉗子分娩を行うことがあります。

理由6.母体に異常がある

難産によって母体の体力低下が著しい場合や、大量の出血が見られる場合は鉗子分娩を行う場合があります。

鉗子分娩が行えない利用条件

鉗子分娩は、母体や胎児にリスクが生じていたとしても、利用条件や環境によっては行えない場合があります。鉗子分娩が行えない条件は以下の通りです。

参考|吸引・鉗子分娩について – 日本産科婦人科学会※リンク切れ

条件1.児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう)の場合

母体の骨盤に比べて胎児の頭が大きいなど、骨盤と胎児の大きさが不均衡で経腟分娩が不可能だと判断される場合は、鉗子分娩を行わずに緊急帝王切開を行う必要があります。

条件2.巨大児の場合

胎児の体重が4000g以上の巨大児の場合も相対的に頭が大きく、母体の骨盤に胎児が通らないことが予想されるため、鉗子分娩が行えません。

条件3.水頭症(すいとうしょう)の場合

水頭症とは、脳の中の脳脊髄液(のうせきずいえき)が頭蓋腔内に溜まってしまい、頭が大きく膨らんでしまう病気のことです。この場合は、胎児の頭に衝撃を与えてはいけません。

条件4.母体が狭骨盤(きょうこつばん)の場合

母体の骨盤が異常に狭いと認められる場合も、児頭骨盤不均衡になる可能性が高く、鉗子分娩が行えません。

条件5.横位や臀位などの場合

胎児が骨盤位や顔位などの逆子の場合は頭を挟むことができますが、横位や臀位などの場合は鉗子で頭部を挟むことができないため、鉗子分娩が行えません。

鉗子分娩に伴う影響・リスク

鉗子分娩にはリスクがあるという話を聞きますが、鉗子分娩自体は出産リスクを軽減するために行われるものです。そのため、鉗子分娩による以下のリスクは、予め認識しておかなければいけません。

影響1.母体への影響

鉗子分娩によって母体が受ける影響は、頸管裂傷や膣壁裂傷など、胎児が通る産道が傷ついてしまうことです。

また、鉗子分娩を行う場合は器具を挿入する必要があるため、会陰切開などを行って施術を行いやすくする必要があります。

影響2.胎児への影響

鉗子分娩によって胎児が受ける影響は、以下の症状が考えられます。

・圧迫による頭蓋変形・骨折
・頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)
・頭血腫(とうけっしゅ)
・黄疸(おうだん)
など

鉗子分娩による後遺症・障害リスク

鉗子分娩によって頭の形が変わったり、コブ(頭血腫)ができたとしても、時間が経てばほとんどが自然に消えて元通りになるため、過剰に心配する必要はありません。

鉗子分娩による頭部の圧迫で赤血球が破壊され、黄疸が起こることもありますが、こちらも元に戻ります。新生児に出る黄疸の症状は以下を参考にしてください。

ただし、頭蓋内出血が起きた場合は、皮下血腫や脳浮腫などを起こす場合があり、脳性麻痺などの後遺症や発達障害につながる可能性もあります。

日本では出産リスクが生じた場合、鉗子分娩よりも吸引分娩によって分娩を補助する病院の方が多いと思います。また、吸引分娩が難しい場合は、緊急帝王切開に切り替えるはずです。

そのため、出産前には医師とリスクを含めて出産方法に付いて色々と話しをしておくと良いでしょう。吸引分娩については以下を参考にしてください。