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出産後にも陣痛のような痛み…
わたしは帝王切開なので前駆陣痛(偽陣痛)の経験はありますが、本陣痛や分娩の痛みはわかりません。
本陣痛から出産までは、痛みのあまり何も考えられない妊婦もいると聞きます。「とにかく早く出産したい!」「痛いから早く終わって!もう出てきて!」
……と、ようやく辛い出産が終わり、赤ちゃんをひと目見たときに全てが報われ、さまざまな感情が湧いてくるのですが(これは帝王切開も同じ)、そんな感情に浸る間もなく新たな痛みが起こります。
それが「後陣痛(こうじんつう)」です。後陣痛は、人によって痛みの強さが違います。中には「陣痛よりも痛い!」「とにかく激痛!」という女性もいるそうです。
そんなお話をすると、「陣痛と出産の痛みが怖いのに、出産してもまだ痛いのが続くの……?」と戦々恐々とする人もいるでしょう。
では、後陣痛はどれくらいの痛みがあるのでしょう。また、後陣痛はいつまで続くのでしょうか。
今回は、痛いのはイヤ……という人のために、出産後に後陣痛が起きる割合やいつまで続くのか、また後陣痛を和らげる方法についてお話したいと思います。
後陣痛(こうじんつう)とは
後陣痛とは、出産後に子宮が急激に収縮することで、陣痛のように下腹部に伴う痛みのことです。後陣痛は「後腹(あとばら)」とも言われます。出産直後に子宮が収縮し、胎盤などを娩出する「後産(あとざん)」とは異なります。
妊娠で大きくなった子宮は、出産後2時間で急激にへそ下まで収縮して、出血を止める助けをすると、その後12時間でへそのあたりまで一旦拡大し、それから6-8週間かけて徐々に妊娠前の子宮の大きさに戻っていきます(子宮復古)。
後陣痛 | 看護用語辞典 ナースpedia
後陣痛は、大きくなった子宮が急激に収縮して起こる痛みなので、出産前の子宮が大きいほど痛みが増す傾向があります。そのため、巨大児や双子などの多胎出産をすると、後陣痛が起こりやすく痛みが強くなります。
後陣痛が陣痛並みの痛みだったという女性は、ご飯が食べられない、常にうんうん唸る、眠れない……というほど痛いため、しばらくは赤ちゃんのお世話もままなりません。
後陣痛が起こるとしても、期間が短い方が良いな……。後陣痛は一体いつまで続くんだろう……。
後陣痛の痛みは?激痛もある?
・陣痛より痛かった|6.6%
・陣痛と同じくらい痛かった|8.9%
・陣痛ほどではないが痛かった|40.1%
・あまり痛みを感じなかった|33.2%
・あまり覚えていない|11.2%
1478名を対象にしたプレママタウンのアンケート調査によると、たしかに強い痛みを感じる人もいますが、「陣痛と同じくらい痛かった」「陣痛より痛かった」という人は全体の15%強です。
もちろん、痛みの度合いを表すのは難しいですが、陣痛と同じくらい、陣痛より痛いという人は激痛だと言えますね。
一方、「あまり痛みを感じなかった」「あまり覚えていない」という人は44%強もいます。
後陣痛はいつまで続く?
出産後は、後陣痛を和らげるために、医師の判断で鎮痛剤を投与することがありますが、もちろん後陣痛の強さや鎮痛剤の効きには個人差があります。
前述したプレママタウンのアンケート調査では、後陣痛の痛みがあった人を対象に後陣痛の期間を調査しています。
・出産後1日だけ|38.2%
・出産後2日間|23.6%
・出産後3日間|20.9%
・出産後4日間|6.9%
・出産後5日間|4.8%
・出産後6日間|2.1%
・出産後1週間以上続いた|3.6%
後陣痛が「出産後1日だけ」で治まる人は4割近くもいます。また、9割近くの人は出産後4日程度で後陣痛が治まりますが、「出産後1週間以上続いた」という人も3.6%いるためやっぱり怖いですね。
これだけ痛みの持続期間がバラバラだと、痛みのピークもはっきりしないようです。まれに産褥期の間(産後6-8週)、ずっと後陣痛の痛みが続く人もいるようです……。
帝王切開後の後陣痛の痛みや期間は?
基本的に経腟分娩であろうが、帝王切開であろうが、必ず子宮収縮は起こるため、多少なりとも後陣痛はあるものだと思ってください。
帝王切開だからといって、後陣痛の痛みや期間が変わるわけではありません。
ただし、帝王切開の場合は後陣痛とともに帝王切開の傷口が痛みます。わたしの場合は、正直帝王切開の傷口の方がズキズキして痛かった記憶があります。
経産婦の後陣痛の痛みや期間は?
一般的には、初産婦よりも経産婦の方が、後陣痛の痛みは強くなる傾向があります。
出産後の子宮の収縮・拡大は、初産婦よりも経産婦の方がスムーズです。そのため、急激な子宮収縮による後陣痛の痛みは、1人目よりも2人目、3人目の出産後の方が強い傾向があります。
ただし、子宮の収縮・拡大がスムーズな分、後陣痛が起こる期間は短くなるようです。
後陣痛の痛みを和らげる方法
出産後の入院期間中は、痛み止めが効いていたり、医師に痛みを訴えられるため心配する必要はないのですが、前述のアンケート結果を見る限り、退院後もおよそ10%弱の人は後陣痛の痛みが続くことがわかります。
では、そんな後陣痛の痛みをなるべく和らげるために、どうすれば良いのでしょうか。
後陣痛を和らげる方法1.体を温めて血行を良くする
後陣痛は、身体を温めて血行を良くすることで、痛みが和らぐ場合があります。衣服の調整だけでなく、下腹部を直接温めて子宮の周囲の血行を良くしてください。
産後は、女性ホルモンの関係から、以前よりも暑さを感じて汗をかくことがありますが(産褥期多汗)、冷たいものを飲みすぎるとお腹が冷えて血行が悪くなります。
そのため、夏場に部屋の温度を涼しくする場合も、子宮周辺を温めつつ、温かい飲み物を飲んで後陣痛の痛みを和らげましょう。
後陣痛を和らげる方法2.緊張せずリラックスする
ストレスや緊張を感じて筋肉が強張ると痛みを感じやすいため、身体をゆったり楽にして過ごしましょう。なるべく横になり、静かな音楽をかけると心が落ち着きます。
とくに、少なくとも産後2-3週間程度は何も考えずに身体を休めた方が良いため、家事や育児は家族の力を借りて、無理をしないようにしましょう。
後陣痛を和らげる方法3.子宮を圧迫する
横になってリラックスをしても後陣痛が重い場合は、うつ伏せに寝て下腹部を圧迫すると、患部周辺の触感が増えることで痛みが和らぎます。
また、ソファなどに腰掛けているときも、クッションやタオルなどを抱えて下腹部を適度に圧迫しながら過ごすと、痛みが和らぐ場合があります。
後陣痛を和らげる方法4.マッサージをする
こちらも患部を触るマッサージによって、後陣痛を和らげる方法です。下腹部を撫でたり、軽く揉んだりすることで、触感が増えて痛みが和らぎます。
また、産後は腰痛も起こるため、うつ伏せになって旦那さんに軽くマッサージをしてもらっても良いですね。
後陣痛を和らげる方法5.授乳を控える
母乳生成を促進する女性ホルモンはプロラクチンですが、母乳を射出させるにはオキシトシンが乳腺の筋肉を収縮させる必要があります。授乳をするとよりプロラクチンが増え、それに伴ってオキシトシンの量も増えます。
一方、オキシトシンは子宮収縮を促す作用もあります。そのため、授乳が増えることでオキシトシンの量が増え、より後陣痛が強くなる可能性があります。
そのため、初乳の授乳が終わっても後陣痛が重い場合は、ミルクを交えた混合育児をして、一時的にオキシトシンの分泌を抑えることを考えても良いでしょう。
後陣痛を和らげる方法6.痛み止めを処方してもらう
退院後も後陣痛が辛い場合は、出産した病院で痛み止めを処方してもらいましょう。市販の痛み止めは母乳育児に適さない成分が入っている場合があるため、病院で処方薬をもらってください。
後陣痛を和らげる方法7.他の病気の可能性を疑う
あまりに後陣痛が重くて普段の生活に支障が出る場合は、すぐに医師に相談してください。「産褥熱の何らかの症状」「卵管炎、卵巣炎などの子宮付属器炎」「虫垂炎」などの病気が発見されることもあります。
後陣痛の痛みを我慢しすぎない
通常の陣痛に比べて後陣痛の方が痛みが軽かったとしても、耐えられるか耐えられないかという話とは別です。
なぜなら、通常の陣痛は痛くても「これから出産が待っている!」「赤ちゃんに会える!」という希望がありますが、後陣痛はただただ痛いだけですから……。
もちろん、出産後の子宮収縮は良いことですし、子宮が収縮するように身体中で作用があることも良いことです。
授乳によってプロラクチンが分泌されることも、のどが乾いて水分摂取による頻尿気味になることも、全ては子宮を早く回復するために必要なことです。
そのため、後陣痛が起こっているということは、また妊娠できる身体に戻っている証拠だと良い方に考えるようにしましょう。
それでも、やっぱり痛みがあると気持ちは沈んでしまいます。気持ちが沈むとマタニティブルーや産後うつになる可能性もあるため、やっぱり痛みは我慢をせずに医師に頼ることが大切だと思います。