妊娠糖尿病とは?症状や原因・診断基準は?妊婦や胎児への影響

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妊婦の10人に1人が妊娠糖尿病?

妊娠糖尿病という病気を知っていますか?

「糖尿病って成人病でしょ?わたしはダイエットしてるし大丈夫でしょ。」

たしかに、妊娠糖尿病は名前の通り妊娠中に起こる”糖尿病に似た症状”なので、自分とは関係がないと思っている人は多いでしょう。

ただ、妊娠糖尿病は、糖尿病と似ているようで別物です。なぜなら、妊娠糖尿病は、20代でも、痩せていても、妊婦であればかかる可能性がある病気だからです。

日本糖尿病・妊娠学会によると、妊娠糖尿病にかかる妊婦の割合は12%ほどと発表されています。

妊娠糖尿病の頻度は2.92%でしたが、2010年7月に大規模な診断基準の変更があったため、妊娠糖尿病の頻度は12.08%と4.1倍に増えることがわかりました。

ただし、この数字は全員に75gぶどう糖負荷試験を行った場合の数字ですので、スクリーニング陽性者のみぶどう糖負荷試験をしたときは、これより若干少なく7〜9%の頻度になります。

引用|Q1. 妊娠糖尿病とは? | 糖尿病と妊娠に関するQ&A | 一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会

では、この妊娠糖尿病は妊婦にどのような影響を与えるのでしょうか。また、胎児にも何か影響があるのでしょうか。

今回は、妊娠糖尿病の症状と原因、また、妊婦・胎児に与える怖い影響についてお話したいと思います。

糖尿病とは

妊娠糖尿病の前に、簡単に糖尿病の仕組みを押さえましょう。糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌される血糖値を下げる「インスリン」が減少するため身体が高血糖状態になり、高血糖が合併症を起こす病気のことです。

糖尿病の簡単な流れ

糖尿病の流れ
食事をするとブドウ糖が作られる

ブドウ糖は血管を流れて細胞に運ばれる

血液中の糖の値(血糖値)が上がる

血糖値が上がると膵臓からインスリンが分泌される

インスリンはブドウ糖を細胞に渡したり、過剰なブドウ糖を破壊する

糖尿病は膵臓の働きが悪く、インスリン分泌されない……

血糖値がずっと高いままになる

高血糖状態で生活を続けると、血管がもろくなったり、詰まりを起こす血管病になります。さらに、全身の臓器に適正な栄養供給ができなくなるため、様々な合併症を起こします。

血管の破壊や血管のつまりが身体のあちこちで起こる……これを聞くと糖尿病が怖い理由がわかりますね。

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中に起こる糖代謝異常のことで、一般的な糖尿病とは異なります。そのため、妊娠前から糖尿病を患っている場合や、妊娠中に糖尿病と診断された場合は、妊娠糖尿病とは言いません。

日本糖尿病・妊娠学会によると、妊娠糖尿病の定義は「妊娠中に初めて発見、または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常」のため、妊娠糖尿病よりも糖尿病の方が重い病気だとわかります。

とは言え、妊娠中の妊婦が糖代謝が行えない状態は疲労が溜まりやすく、高血圧症も発症しやすいうえに、胎児は発育に影響する病気の原因になるため、注意すべき病気には違いありません。

妊娠糖尿病で糖代謝異常が起こることは糖尿病と同じなのですが、糖尿病とは原因が異なります。

妊娠糖尿病と糖尿病の原因

一般的な糖尿病の原因

一般的な糖尿病の原因は主に3つあり、3種類の糖尿病に分けられます。

糖尿病の種類
1.1型糖尿病
2.2型糖尿病
3.その他の糖尿病

「1型糖尿病」は、過去のウイルス感染によって増えたリンパ球が膵臓の機能を阻害して、インスリン分泌が減少する糖尿病です。子どもに起こることが多いため小児糖尿病とも呼ばれます。

「2型糖尿病」は、2つの原因があります。1つは肥満や運動不足などの生活習慣の乱れで膵臓の働きが弱くなりインスリン分泌が低下するため、もう1つは身体がインスリンの働きに鈍感になりインスリンが効きにくくなるために起こります。

「その他の糖尿病」は、遺伝子異常や他の病気、薬剤などによって起こります。

妊娠糖尿病の原因

妊娠糖尿病の原因は、胎盤から分泌される女性ホルモン(インスリン抵抗性ホルモン)が、インスリンの働きを抑えることで起こります。

胎盤からインスリン抵抗性ホルモンが分泌される理由は、インスリンによる糖の破壊を阻止して、胎児により多くの栄養(ブドウ糖)を供給するためです。

ところが現代の妊婦は、昔の妊婦に比べて十分な栄養を摂取でき、むしろ栄養過多になることも増えました。そのため、インスリンの働きを抑えなくても、胎児に供給するブドウ糖は十分に足りています。

つまり、インスリン抵抗性ホルモンの働きは、現代の妊娠事情では過剰な働きだということです。

妊娠中の糖代謝異常の診断基準

妊娠糖尿病は初期症状に気付きにくく、高血糖が進行して様々な合併症が現れることで、ようやく判明します。また、原因は違うものの、同じ糖代謝異常の糖尿病も合わせて、「妊娠中の糖代謝異常」として診断します。

以下参考|妊娠中の糖代謝異常と診断基準の統一化について|日本糖尿病・妊娠学会

妊娠糖尿病の診断基準

75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)において、次の基準の1点以上を満たした場合に診断します。

1.空腹時血糖値 ≧92mg/dl(5.1mmol/l)
2.1時間値 ≧180mg/dl((10.0mmol/l)
3.2時間値 ≧153mg/dl(8.5mmol/l)

つまり、空腹時の血糖値が92mg/dl以上、経口ブドウ糖負荷試験1時間後の血糖値が180mg/dl以上、2時間後の血糖値が153mg/dlの1点異常を満たした場合に、妊娠糖尿病と診断されます。

妊娠中の明らかな糖尿病の診断基準

また、以下のいずれかを満たした場合は、糖尿病だと診断されます。

1.空腹時血糖値 ≧126 mg/dl
2.HbA1c(ヘモグロビンA1c)値 ≧6.5%

ヘモグロビンA1c値とは、赤血球中のヘモグロビンがどれくらいの割合で糖と結合しているかを示す値のことです。

糖尿病合併妊娠の診断基準

1.妊娠前にすでに診断されている糖尿病
2.確実な糖尿病網膜症があるもの

ただし、これらの糖代謝異常の診断は、妊娠後期に多く分泌されるインスリン抵抗性ホルモンの影響など、時期によって高い値を示すことがあるため、非妊娠時の糖尿病診断基準をそのまま当てはめずに、複数の要素から考えなければいけません。

妊娠糖尿病による妊婦の症状・影響

では、糖代謝異常(ここでは妊娠糖尿病とする)が起こったときに、妊婦にどのような症状や影響が出るのでしょうか。

妊婦の症状1.のどが渇く

血糖値が上がることで、浸透圧によって血液中の水分が不足するため、妊婦はのどが渇きます。

妊婦の症状2.頻尿

のどの渇きを癒すために水分を補給しても、血糖値が高いままだと細胞に水分が行き渡らずに、余分な水分として尿で排出されます。そのため、頻尿になります。

妊婦の症状3.疲労感

細胞に水分が行き渡らないため、栄養素も供給されません。そのため、栄養不足ですぐに身体が疲れてしまいます。

妊婦の症状4.羊水過多症

羊水過多症とは、妊娠後期において通常500mlほどの羊水の量が、800mlを超えてしまう状態を言います。

羊水過多の原因は様々ですが、妊婦が妊娠糖尿病だと胎児も高血糖になり、胎児の頻尿傾向が強くなることで羊水が増えてしまいます。

羊水過多症は前期破水、常位胎盤早期剥離などの原因になり、胎児の早産や臍帯異常、奇形、浮腫、逆子などを引き起こす可能性もあります。

妊婦の症状5.妊娠高血圧症候群

妊婦は、妊娠糖尿病によって血糖値が上がることで、妊娠高血圧症候群を発症する可能性があります。

妊娠高血圧症候群とは?原因や症状は?予防や治療は可能?

妊婦の症状6.尿路感染症

糖尿病患者は尿中に細菌が繁殖する可能性が高く、非糖尿病患者に比べて腎盂腎炎(じんうじんえん)を合併する確率が4倍になります。

参考|糖尿病における細菌尿頻度について|名古屋大学医学部分院内科

同じように、妊娠糖尿病の妊婦も尿中に細菌が繁殖しやすいため、尿路感染症にかかる可能性が高くなります。尿路感染症の詳細は以下を参考にしてください。

赤ちゃんに多い尿路感染症の症状と原因は?予防法はある?

妊婦の症状7.2型糖尿病への移行

妊娠糖尿病を発症した妊婦の半分は、出産後も血糖値が高いままになり、2型糖尿病に移行する可能性があります。痩せていても、高齢ではなくても、あの糖尿病です……。

妊娠糖尿病による胎児の症状・影響

妊娠糖尿病が胎児に与える影響は大きく、ときには障害や胎児ジストレス、死産など生命のリスクに発展する恐れもあります。

胎児の症状1.早産・流産の確率が上がる

妊娠糖尿病の妊婦は、妊娠22週までに起こる流産確率が25-30%あると言われています。厚生労働省発表によると、一般的な流産の確率は13-15%程なので流産の確率が2倍になるということです。

もちろん、高齢妊娠ほど妊娠糖尿病を患いやすく、流産確率も上がります。

・24歳以下の流産率は16.7%
・25-29歳の流産率は11.0%
・30-34歳の流産率は10.0%
・35-39歳の流産率は20.7%
・40歳以上の流産率は41.3%
・全体の平均流産率は13.9%

となっており、やはり40歳以上の高齢妊娠における流産の確率は41.3%とかなり高い数字だということがわかります。また全体を均しても13.9%と7-8人に1人が流産を経験する計算です。

年齢別・妊娠週数別の流産確率は?妊娠初期流産の予防法はある?

胎児の症状2.胎児発育不全が起きる

妊娠糖尿病によって妊婦の血糖値が上がると、胎盤の機能が低下します。すると、胎児に栄養が十分に供給されず発育が遅れる「胎児発育不全(FGR)」になる可能性があります。

胎児の症状3.胎児奇形の確率が上がる

上記同様、胎児発育不全(FGR)によって胎児の身体や機能が上手く形成されないため、先天性の胎児奇形の可能性が高まります。

胎児の症状4.栄養過多で巨大児になる

妊娠糖尿病によって胎児にブドウ糖の供給が増えると、胎児は必要以上に大きく育ってしまい、4,000g以上の巨大児になる可能性があります。

巨大児は「児頭骨盤不均衡(じとうこつばんふきんこう)」などが起きやすく、難産になったり、頭血腫、頭蓋内出血など脳の損傷につながる可能性があります。

赤ちゃんが4000g以上の原因は?巨大児の障害や後遺症リスク

胎児の症状5.胎児の多血症(たけつしょう)

胎児は、元々酸素を効率良く体内に運ぶために赤血球が多めに存在する多血な状態で、これを多血症と言います。

さらに、胎児の頻尿で体内の水分が少なくなると、血液中の赤血球の割合が増えてより多血な状態になり、血液に粘り気が出て血流が悪化します。

その結果、痙攣や脳梗塞、チアノーゼ、無呼吸、哺乳不良、嘔吐、壊死性腸炎、腎静脈血栓、腎不全などの症状につながる可能性があります。

胎児の症状6.高ビリルビン血症(新生児黄疸)

胎児が病的な多血症になると、通常は肝臓に運ばれて便や尿とともに排泄される血液中の「ビリルビン」の量が増えすぎてしまいます。

ビリルビンは黄色い色素を持っているため、高ビリルビン血症になると肌や粘膜が黄色くなる「新生児黄疸」が見られます。

赤ちゃんが黄色い!新生児黄疸の原因・症状・治療法と後遺症

胎児の症状7.新生児低血糖症

妊娠糖尿病によって胎児にブドウ糖の供給が増えると、胎児は胎児インスリンを多く分泌してバランスを取ろうとします。

ところが、出産後にブドウ糖の供給がストップしても、産まれたばかりの赤ちゃんは胎児インスリンを分泌し続けるため、インスリン過剰症を起こし、結果として血糖値が下がり過ぎて「低血糖症」を起こす場合があります。

胎児の低血糖が過剰になると、低体温、痙攣、無呼吸、意識低下などを引き起こし、後遺症が残る原因にもなります。

胎児の症状8.低カルシウム血症

低カルシウム血症とは、血液内にある8.5-10.4mg/dlという一般的なカルシウム量を下回っている状態を言います。

胎児の頻尿により、尿から過剰にカルシウムが排泄されることで起こり、手足のしびれ、痙攣、嘔吐、悪心、皮膚の乾燥、湿疹、筋緊張低下、無呼吸、哺乳不良、神経過敏などがみられます。

妊娠糖尿病は予防が大切

若い人の中には糖尿病と聞くと、おじさん・おばさんや太っている人の病気というイメージを持つ人も多いため、妊娠糖尿病と聞いても怖さがあまりピンとこないと思います。

ただ、妊娠糖尿病は妊婦なら若い人・痩せている人でもかかる可能性があり、その影響は胎児に及ぶため十分に注意しなければいけません。

特に、妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群はどちらも気付かないうちに悪化し、妊娠中だけでなく出産後の母子の健康にも影響を与えます。

そのため、妊娠糖尿病の予防が大切です。これらの病気の確率を減らすためには、栄養バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスのない生活を心がけることが1番です。

普段の生活習慣の見直しとともに、妊婦健診での医師との対話を重視して、良い出産を行えるようにしましょう。妊娠高血圧症候群の症状や予防に関しては、以下を参考にしてください。

妊娠高血圧症候群とは?原因や症状は?予防や治療は可能?


参考|早産・切迫早産:病気を知ろう:日本産科婦人科学会
参考|糖尿病ってどんな病気?│糖尿病サポートネット
参考|妊娠糖尿病とはどんな病気か|症状や原因・治療 – gooヘルスケア
参考|Q1. 妊娠糖尿病とは? | 糖尿病と妊娠に関するQ&A | 一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会
参考|糖尿病だと流産しやすいの?糖尿病と流産の関係 | 近江八幡市の整体なら地域NO.1産後の骨盤矯正専門治療院のひろた整体院へ/滋賀県

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