離乳食前の赤ちゃんに果汁を与えない方が良い4つの理由

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赤ちゃんに果汁を飲ませて良い?

離乳食前の赤ちゃんに母乳やミルク以外の水分を与える必要がないことは、今では当たり前に言われていますが、この認識が一般的に浸透してきたのは、2000年代に入ってからです。

わたしの親世代の常識として、母乳やミルクの飲みが悪い場合に赤ちゃんの水分補給のために使われていたのは、主に湯冷まし、麦茶、果汁でした。

今の育児において、離乳食前の赤ちゃんにどうしても母乳やミルク以外の水分補給が必要な場合は、湯冷まし、麦茶、軟水のミネラルウォーターを飲ませるようにします。それぞれ注意点は以下の通りです。

赤ちゃんが飲むミネラルウォーター・湯冷まし・麦茶の注意点

ここで「あれ?わたし親から果汁は飲ませた方が良いって聞いたけど……。」というママもいるのではないかと思います。

たしかに、わたしの親の世代の育児では、離乳食前の赤ちゃんには母乳やミルク以外の水分どころか、果汁を飲ませることも推奨されていました。ところが、後の研究により果汁は飲ませない方が良いという結論に至ったようです。

では、なぜ離乳食前の赤ちゃんに果汁を飲ませてはいけないのでしょうか。

今回は、赤ちゃんに果汁を飲ませてはいけない理由についてお話したいと思います。

果汁とは

果汁は一般的な言葉のため、りんご、みかん、ぶどう、いちごなどの果汁が入った飲量を思い浮かべる人もいるかもしれません。

ただ、赤ちゃんが飲む果汁とは、果物をそのまま搾った絞り汁のことを指します。製品として果物の香料をつけて、ショ糖やブドウ糖で味付けをしている飲料は果汁とは言いません。

また、いわゆる果汁100%ジュースという製品も、果汁ではなくジュースになります。

では果汁はどのように用意すれば良いかというと、りんごはすりおろした後にガーゼで包んで汁を絞り出したり、みかんは皮を剥いてガーゼで包んで汁を絞り出して作ります。

ただし、一般的に果汁は、離乳食が始まってから飲ませるか、離乳食直前の準備として飲ませるものであって、それ以前の赤ちゃんに飲ませるものではありません。

赤ちゃんに果汁が推奨されていた理由

前述した通り、わたしの親の世代には離乳食前の赤ちゃんに、積極的に果汁を飲ませることが推奨されていました。

年代で言うと、1950年代から2000年ごろまでです。つまり、わたしの親世代どころか今の40-70代の女性にとっては、「果汁を飲ませるべき」という感覚を持った人が多かったということです。

1950年代当時は、日本で粉ミルクを再生産できるようになった環境と病院で分娩を行うスタイルが定着したため、栄養管理がしやすいという理由で粉ミルクで赤ちゃんを育てることが定着しました。

その結果、粉ミルク全盛期の昭和50年ごろには、母乳育児の比率が20%台にまで低下したというデータがあります。

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参考|●ミルクの歴史:育児情報ひろば!|株式会社 明治○●

ただ、粉ミルクは世界中で広く使われていたものの、赤ちゃんに必要な栄養成分、特にビタミン類が足りませんでした。そのため、ビタミン類を補うために、赤ちゃんに果汁を飲ませるようになっていきました。

実際に、2008年以前の母子手帳には、生後3-4か月を目安にした「薄めた果汁やスープを飲ませていますか」という一文が掲載されていました。このような背景もあり、赤ちゃんに果汁を飲ませることは当たり前でした。

アメリカ小児科学会の果汁摂取に対する見解

では、なぜ今赤ちゃんに果汁を飲ませない(飲ませてはいけない)のでしょうか。

アメリカ小児科学会は、2001年に栄養に関する専門委員会による方針宣言として、「子どもに果汁を与えるリスクと適切な摂取方法についての勧告」という報告をしています。

参考|子どもに果汁を与えるリスクと適切な摂取方法についての勧告|アメリカ小児科学会

そして、その報告の中で、以下の赤ちゃんと子どもの果汁摂取に関する9つの結論を出し、9つの勧告を行いました。

果汁摂取に関する結論
1.果汁は生後6ヵ月未満の乳児にはなんら栄養学的な利益はありません。
2.生後6ヵ月以降の乳児や子どもに対して果汁は果物そのものに優るような栄養学的な利益はありません。
3.果汁や濃縮還元果汁はよくバランスのとれた食事の一部として摂取されるなら、健康的な食事の一部分となりえます。しかし、果汁飲料は栄養学的に果汁と同等ではありません。
4.果汁は脱水の治療や下痢の管理に用いる飲料としては不適切です。
5.果汁の過剰摂取は栄養障害に関係するかもしれません(栄養過剰や栄養不足)。
6.果汁の過剰摂取は下痢、鼓腸、腹部膨満、そしてう歯と関係する可能性があります。
7.殺菌されていない果汁は重篤な疾患を引き起こす病原体を含んでいるかもしれません。
8.各種の果汁は、小児の年齢に応じて適切な量が与えられる限り、問題となる臨床症状を引き起こすようなことはないでしょう。
9.カルシウムを強化した果汁は有効なカルシウム源となりますが、母乳や人工乳そして牛乳に含まれるほかの栄養素は存在しません。

果汁摂取に関する勧告
1.果汁は生後6ヵ月未満の乳児に飲ませるべきではない。
2.乳児には哺乳びんや簡単に持ち運びのできる蓋つきのコップから果汁飲料をあたえない。これにより簡単に1日中果汁を摂取することを許すことになる。乳児には寝る前に果汁を与えてはならない。
3.果汁摂取量は1~6歳の小児では1日当たり4~6オンス(約110~170mL)に制限すべきである。7~18歳の小児では1日あたり8~12オンス(約220~340mL)または2盛り(サービング)に制限すべきである。
4.小児が果物そのものを食べることにより、1日の摂取量を摂るように推奨する。
5.乳児、小児、そして青少年は殺菌されていない果汁を飲むべきではない。
6.小児の栄養障害(栄養過剰と栄養不足)を評価する時に、保健医療従事者は摂取されている果汁の量を確認すべきである。
7.慢性の下痢、過度の鼓腸、腹痛、腹部膨満を伴う小児の評価をする時に、保健医療従事者は摂取されている果汁の量を確認すべきである。
8.う歯の評価をする時に、果汁の量と飲む方法を確認すべきである。
9.小児科医は、果汁と果汁飲料の使用について普段から話し合い、親に両者の違いについて教えるようにすべきである。

これらはもちろん程度の問題もあります。当時のアメリカでは赤ちゃんの果汁摂取信仰が著しく、問題視されていた背景があります。

アメリカの調査会社の報告によると、1歳までにはほぼ90%の赤ちゃんが果汁を摂取しており、1日あたりの赤ちゃんの果汁の平均消費量は約2オンス(56ml)、そのうち2%の赤ちゃんは16オンス(約450ml)以上、さらに1%の赤ちゃんは21オンス(約590mL)以上を消費しているというものでした。

赤ちゃんに果汁を飲ませてはいけない理由

上記のアメリカ小児科学会の報告を参考にして、特に離乳食前の赤ちゃんが果汁を摂取することで考えられるリスク、果汁を飲ませてはいけない理由には以下のものがあります。

理由1.果汁摂取は栄養を阻害する

元々果汁摂取が良いとされた背景には、粉ミルクにビタミンが配合できないためでしたが、技術の進歩によって粉ミルクの栄養価も高くなり、母乳に近い栄養価で生産することが可能になりました。

そのため、果汁を摂取する必要がないどころか、果汁には母乳に足るほどの十分な栄養素がないため、果汁を摂取した分だけ赤ちゃんの母乳・ミルク摂取が不足し、結果として栄養不足の原因になる可能性があります。

理由2.虫歯リスクが高まる

母乳に含まれる乳糖や粉ミルクに含まれるオリゴ糖は虫歯菌が分解しにくく、虫歯になりにくい糖類です(ならないわけではない)。さらに、母乳に含まれるラクトフェリンは虫歯菌の増殖を抑える作用があります。

それに対して、果汁に含まれる果糖は、ショ糖(砂糖)や果糖ブドウ糖(スポーツドリンク、アイスクリームなど)に比べれば虫歯ができにくい糖類ですが、乳糖やオリゴ糖に比べると虫歯の原因になりやすい糖類です。

理由3.下痢・腹痛の原因になる

糖類が多い(甘みの強い)飲食物は腸内で発酵しやすく、軟便や下痢の原因になる場合があります。また、柑橘系の果汁に含まれるクエン酸は、腸を刺激して腹痛や下痢の原因になる場合があります。

そのため、水分補給や脱水症状の改善のために、赤ちゃんに果汁を摂取すると余計に下痢を起こす可能性があります。

理由4.アレルギーの原因になる

赤ちゃんが果汁を摂取した際、下痢や腹痛を起こすのは腸内発酵やクエン酸のせいだけでなく、アレルギー反応が出ているためかもしれません。

アレルギーとは、異物ではないものを身体が異物だと認識して起こる拒否反応です。そのため、分解しにくい果汁成分が赤ちゃんの身体に入るとアレルギーの原因になったり、アレルギー症状を強くする可能性があります。

赤ちゃん・子どものアレルギー原因は?アレルギーの種類と症状

臓器の機能が未熟な乳児ほどアレルギー反応が出やすく、成長とともにアレルゲンは減少していきます。

今と昔の育児ギャップを埋めるためには

現在では以前ほどの果汁信仰もなくなりましたし、ミルク育児よりも母乳育児の方が子育てには大きなメリットがあると認識されるようになりました。

これは、ユニセフと世界保健機関が共同声明として「母乳育児を成功させるための10か条」を発表したことや、厚生労働省が「授乳・離乳支援ガイド」を策定したことによる背景があります。

ちなみに、現在の母乳育児の割合は40%を超えるほどで、昭和50年ごろに比べるとおよそ2倍ほどの割合です。また、混合育児の割合が50%を超えており、ミルク育児は5%程度に減少しています。

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引用|授乳に関する現状 – 厚生労働省

完母・混合・完ミの割合とそれぞれのママが抱える授乳の悩み

今の若いママにとっては信じられないかもしれませんが、少し前までは赤ちゃんを育てるためにはミルクの方が適していて、離乳食前でも果汁を飲ませた方が良いとされた時代が何十年もあったということです。

このように、今と昔の育児には色々なギャップが存在する場合があります。赤ちゃんを健康に育てるためには、経験とともに日々の勉強も必要です。

「昔の人が言ってたから~~」だけではなく、自分の目で見て確かめて子育てに挑戦することも大切なことだと思います。

育児の常識がガラッと変わった!今と昔の子育ての違い18選

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