早産の低出生体重が原因で起こり得る赤ちゃんの病気や症状

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低出生体重児が病気になりやすい理由

低出生体重児は、一般的に出産時の体重が2500g未満の赤ちゃんのことを言いますが、その原因の多くは赤ちゃんが早産で産まれてしまうためです。

赤ちゃんが早産で産まれてしまうため、低出生体重児は単に体重が軽いだけではなく、臓器や身体機能などが未成熟であったり、母子免疫が十分に備わっていなかったり、体力も少ないため、病気の心配や特別な医療行為が必要になる場合があります。

では、低出生体重児は、具体的にどのような病気や身体未成熟によるリスクを負っているのでしょうか。

今回は、厚生労働省の「低出生体重児保健指導マニュアル」に記載されている低出生体重児がかかる可能性がある呼吸器系、循環器系、消化器系、感染免疫系、血液・凝固系、神経系、内分泌・代謝系の病気、また考慮事項や気をつけるべき点などについて、まとめてみたいと思います。

低体重児に見られる呼吸器系の疾患・症状

呼吸器系の疾患1.呼吸窮迫症候群(RDS)

呼吸窮迫症候群とは、肺呼吸の際に肺胞が膨らんだ状態を維持するために、肺胞の細胞から分泌される肺サーファクタント(表面活性物質)が不足しているか、肺サーファクタントの働きが阻害されることで肺胞がしぼんでしまい呼吸困難を起こす症状を言います。

妊娠34週未満で出生した赤ちゃんは、肺サーファクタントが十分に分泌されていないため、吸窮迫症候群を起こすことがあります。

吸窮迫症候群が見られる場合は、気管内挿管を行い、人口肺サーファクタントを投与して、呼吸状態を改善させる対処が多くとられます。

呼吸器系の疾患2.未熟児無呼吸発作

未熟児無呼吸発作とは、呼吸リズムを調節する呼吸中枢が未熟なため、赤ちゃんに「無呼吸が20秒以上続く」「20秒未満の無呼吸でも脈拍が遅くなったり、チアノーゼになる」という状態が起こることを言います。

未熟児無呼吸発作は、妊娠35週未満の出産になると割合が増えますが、特に妊娠28週未満で出生した赤ちゃんは、90%以上の確率で未熟児無呼吸発作を発症するため、呼吸中枢を刺激する投薬治療や鼻CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)が必要になります。

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呼吸器系の疾患3.慢性肺疾患(CLD)

慢性肺疾患とは、呼吸窮迫症候群や肺炎などで酸素投与や人工呼吸器による治療を行う赤ちゃんが、過剰な酸素による酸素毒性や圧力によって肺の損傷などを受けることで、肺に障害が残ることを言います。

慢性肺疾患になると、退院後も在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOT)などを継続することがあり、数か月から数年単位の在宅酸素療法が必要になる子もいます。

妊娠25週未満で出産した赤ちゃんのうち、12-13%の子がHOTの継続が必要だそうです。

低体重児に見られる循環器系の疾患・症状

循環器系の疾患1.未熟児動脈管開存症(PDA)

未熟児動脈管開存症とは、胎児が臍帯での酸素交換をする際に必要な肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管が、出産後も閉じずに残っている状態を言います。

動脈管開存症は全体の5-10%を占め、成熟児はほとんどが生後24-48時間に動脈管が自然に閉鎖しますが、低体重児ほど動脈管の閉鎖が遅延してしまいます。

そのため、全身に流れる血液の一部が大動脈から肺動脈へ流れてしまい、肺や心臓に負担がかかり、心不全、肺鬱血、体循環不全、場合によっては肺出血や脳室内出血を引き起こし重篤になる可能性もあります。

参考|動脈管開存症 — 日本小児外科学会

循環器系の疾患2.心不全

低体重児は、未熟児動脈管開存症でなくても、心筋の収縮力が弱いため心拍出量が低下し、心不全の症状を起こすことで低血圧や循環不全を起こす場合があります。

そのため、生後早期に昇圧剤、強心剤、血管拡張剤、利尿剤などによる治療が必要になることがあります。

循環器系の疾患3.未熟児網膜症

未熟児網膜症とは、未熟児医療で行う高濃度の酸素投与の影響で網膜の血管が収縮することで、網膜にある血管が異常な増殖をしたり、血管が破損して出血したり、網膜剥離などを起こしてしまう症状のことです。

未熟児網膜症は5つのステージに分かれており、ステージ3中期以上だと視力障害(弱視)、ステージ4で重度の視力障害、ステージ5でほぼ失明状態になる可能性があります。

低体重児ほど重症網膜症は増加し、現在は小児の失明原因の30%を占めています。

参考|一般の皆様へ – 日本小児眼科学会 | 子どもの眼の疾患に関する医療と学問の発展を目的とする日本小児眼科学会

低体重児に見られる消化器系の疾患・症状

消化器系の疾患1.栄養摂取の問題

低体重児に栄養摂取の問題がある場合は、経静脈輸液によって水分、糖分、電解質の投与を行います。

しかし、輸液のみでは栄養が不充分であるため、できるだけ早期から経腸栄養を開始していきます。低体重児の腸は未熟であり、細菌感染などに対して脆弱であるため、経腸栄養には母乳を優先して使用します。

消化器系の疾患2.胎便関連性腸閉塞

胎便関連性腸閉塞とは、赤ちゃんの腸管の動きが悪いなどの理由で胎便排泄不全を起こすことを言います。

胎便排泄不全によって閉塞が起こると、腸管などの穿孔を起こす場合もあるため、生後早期から浣腸などによる排便誘発を行いますが、腸閉塞が治らない場合や腸穿孔を起こした場合には、外科手術による胎便関連性腸閉塞の治療が必要になります。

消化器系の疾患3.壊死性腸炎

壊死性腸炎とは、腸の未熟性、血流障害、細菌感染などの原因によって、腸への血液の流れが障害されることで腸が壊死をしてしまう疾患を言います。

壊死性腸炎が重篤な場合には、外科手術により腸切除や腸瘻増設が必要となり、長期間の経静脈栄養が必要となります。

参考|壊死性腸炎 — 日本小児外科学会

低体重児に見られる感染免疫系の疾患・症状

感染免疫系の疾患1.新生児敗血症

新生児敗血症とは、免疫力が弱い低体重児が感染症を起こし、その病原体であるウイルスや細菌が血管に入り混んで全身で感染症を起こし、重篤な症状を引き起こす疾患のことです。

新生児敗血症の感染巣としては、尿路感染症、呼吸器感染症のほか、胆嚢炎・胆管炎、腹膜炎、褥瘡感染などがあります。

参考|新生児敗血症(早発型敗血症/遅発型敗血症)とはどんな病気か|症状や原因・治療と関連Q&A – gooヘルスケア

低体重児に見られる血液・凝固系の疾患・症状

血液・凝固系の疾患1.高ビリルビン血症(黄疸)

高ビリルビン血症とは、新生児の8割に見られるビリルビン値の上昇のことで、赤ちゃんには黄疸症状が見られます。

低体重児ほど黄疸を引き起こすビリルビン値が高くなる傾向があり、その結果ビリルビンが脳内に沈着して脳神経細胞を破壊し、脳性麻痺などを引き起こす可能性もあります。

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血液・凝固系の疾患2.新生児出血傾向

新生児出血傾向とは、凝固に必要な血小板や凝固因子の不足や機能低下、線溶因子の異常によって血液凝固が弱く、血が止まりにくくなる状態を言います。

新生児出血傾向は低体重児ほど顕著に起こり、脳室内出血や頭蓋内出血、肺出血などを起こし、重篤な状態に陥ったり、その後の後障害を引き起こすことがあります。

参考|新生児出血傾向とはどんな病気か|症状や原因・治療と関連Q&A – gooヘルスケア

血液・凝固系の疾患3.未熟児貧血

未熟児貧血とは、低体重で産まれた赤ちゃんが貧血を起こし、赤血球不足による顔色不良・浮腫、酸素不足による疲れやすさ・めまい・息切れ・食欲不振、心臓の負担増による動悸・微熱などの症状が出ることを言います。

早産児では、発育に伴って必要とされる赤血球の産生が追いつかないため未熟児貧血が起こります。

未熟児貧血の予防と治療目的として、人工合成されたエリスロポエチンを投与しますが、高度な貧血に対しては、赤血球輸血を行うこともあります。また、鉄剤の投与を行うのですが、退院後も数か月の間は鉄剤の内服が必要となる赤ちゃんも多数います。

病的貧血の原因としては、胎盤早期剥離や臍帯出血、胎児母体間輸血症候群などの出血によるもの、血液型不適合による溶血性貧血によるもの、血液の産生不全によるものが考えられます。

参考|未熟児貧血(未熟児早期貧血、未熟児後期貧血)とはどんな病気か|症状や原因・治療と関連Q&A – gooヘルスケア
参考|target=”_blank”新生児の貧血予防|日本子ども家庭総合研究所

低体重児に見られる神経系の疾患・症状

神経系の疾患1.脳室内出血

脳室内出血とは、主に低体重児の脳内血管から出血が起こり、静脈鬱滞が生じている状態のことです。

脳室内出血が起こる原因は、分娩の衝撃、人工呼吸管理、気道吸引などの未熟児医療や低血圧、血小板・凝固系の異常によって血管内圧が急激に上昇して、脳室上衣下胚層の血管が破損することで起こります。

重度は4段階に分かれており、上衣下出血のみを「IVHⅠ度」、上衣下出血が脳室内に穿破(せんぱ)して脳室内に血液が溜まった状態を「IVHⅡ度」、溜まった血液により脳室が拡大した場合を「IVHⅢ度」、出血が脳実質内に進展した場合は「IVHⅣ度」とされます。

IVHⅠ度、IVHⅡ度では、後障害を残すことはほとんどありませんが、IVHⅢ度やIVHⅣ度では、痙性片麻痺や精神運動発達遅滞などの後障害を残すことが多く、脳室内出血の後に水頭症を続発することもあります。

参考|早産児脳室内出血の予防|日本子ども家庭総合研究所

神経系の疾患2.脳室周囲白質軟化症(PVL)

脳室周囲白質軟化症とは、脳室の後外側の脳細胞が生後の循環不全による虚血や炎症などによって傷害されることで、細胞が死滅して軟化する症状を言います。

脳室周囲白質軟化症によって軟化する領域は、大脳皮質の運動野から出た神経線維が通過する領域のため、手足に向かう運動神経線維が傷害されることで、手足の痙性麻痺を起こす可能性があります。

脳室周囲白質軟化症は、極低出生体重児の5-7%に見られ、脳性麻痺の赤ちゃんの約3分の1を占めるとされています。

低体重児に見られる内分泌・代謝系の疾患・症状

内分泌・代謝系の疾患1.未熟児骨減少症

未熟児骨減少症とは、未熟児に多く見られる代謝性骨疾患のことで、骨がもろく、様々な部位の骨折や成長障害を起こす疾患を言います。

低体重児は、出生時に体内のカルシウム、リン、ビタミンDの蓄積量が少ないため、カルシウムやリンを多く含む母乳添加用粉末(HMS-1)を母乳に添加して飲ませたり、ビタミンDを服用させる必要があります。

低出生体重児の病気の治療法・対処法

このように赤ちゃんの体重が少なく産まれてしまうことは、単純に身体の機能が未熟なだけや疾患を起こしやすいだけでなく、未熟児医療を行うことでも大きな負担がかかり、特定事項におけるリスクを高めてしまう場合があります。

そのため、低出生体重児の出生後は、比較的元気でも保育器に入れて保温、過湿、感染防止、酸素供給を行うことが多くなります。

また、体重が2000gを下回る場合には、医師の判断によりNICUに搬送して、経過観察を含めた未熟児医療を時間をかけて行うことも多くなります。

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胎内での1日は、保育器で過ごす3日分に相当する(4日だったり、1週間だったり、10日とも言われる)と言われますが、それだけ赤ちゃんが低体重で出生すること、早産で産まれてしまうことにはリスクがある認識しましょう。

もちろん、やむを得ず赤ちゃんが早く産まれてしまうことで、体重が少なく、身体の機能が未熟になる場合もありますが、たった1日でも赤ちゃんをお腹の中にいさせてあげようという意識が大切だと思います。

そのため、赤ちゃんを妊娠したら、良い妊婦生活を送ることができるように規則正しい生活習慣などを意識して過ごしてください。

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