人間の赤ちゃんが他の動物より未成熟で育児に手がかかる理由

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なぜ人間の赤ちゃんは手がかかるのか…

馬や牛の出産シーンをテレビなどで見たことはあると思います。また、身近なところでは、犬や猫の出産を直に見たことがある人もいるでしょう。

飼い犬や飼い猫の場合は、赤ちゃんが衰弱したり死んでしまわないように、わたしたちが出産後のお世話することもありますが、たとえお世話をしなくても、赤ちゃんは自分でママのおっぱいまで寄って行き、自分でおっぱいを咥えて、自分の力で生きようとします。

そんな光景を見ると、「何で人間の赤ちゃんは、何もできないんだろう。もうちょっと動けたら育児も楽になるのに。」と愚痴にも似た感情が……。

人間の赤ちゃんが可愛いと思えるのは、身体が小さく、赤ちゃんの見た目で、動きがぎこちないなどのベビーシェマ(スキーマ)という特徴があるためですが、もう少し身体機能が発達した状態で生まれても良いのに……と思ってしまいます。

人によって赤ちゃんや子どもを可愛い・可愛くないと感じる理由

そこで今回は、なぜ人間の赤ちゃんは手がかかるのか、なぜ身体機能的に未成熟な状態で生まれてくるのかについてお話したいと思います。

人間の赤ちゃんが身体機能が未成熟で生まれる理由

人間の赤ちゃんが他の動物に比べて身体機能が未成熟で生まれるのは、仮説を含めたいくつかの理由があります。

理由1.産道を通れなくなるから

スイスの生物学者であるアドルフ・ポルトマン氏は、「人間は動物学的観点から見た場合に、他の哺乳動物の赤ちゃんに比べて1年早く生まれてくる(未成熟な状態で生まれてくる)」という生理的早産説を唱えました。

人間は他の動物に比べて脳の体積が大きいため、必然的に頭の割合が大きくなります。そのため、出産前の赤ちゃんが今よりも大きくなると、産道を通ることができなくなるというお話です。

理由2.2足歩行をしているから

また、アドルフ・ポルトマンは生理的早産説において、人間は直立歩行をすることで骨盤が小さくなってしまったため、胎内での身体機能の発達、身体の成長よりも大脳の発達を優先させるようになったと言います。

理由3.母親の栄養状態が危険になるから

アメリカの研究チームが発表した「Metabolic hypothesis for human altriciality」という仮説によると、これ以上赤ちゃんが胎内で大きくなると母体の栄養状態にリスクが生じるそうです。

つまり、アドルフ・ポルトマン氏が唱えていた「産道の大きさに限界があるため出産の時期が決まる」のではなく、母親から赤ちゃんへのエネルギー供給ができなくなるため、胎児が成長する前に出産の時期が決まるという説です。

参考|人間の赤ちゃんが未熟な理由に新説|かずのつぶやき|堀産婦人科
参考|Selected Abstracts

理由4.脳の発達期間を長くするため

人間の赤ちゃんは10か月ほどの限られた妊娠期間のなかで、身体能力の発達よりも脳の成長に重きを置いています。

大脳新皮質の前頭葉が発達するためには、子どもの特徴を残したままゆっくりと成熟していく(ネオテニー)期間が必要だとされています。つまり、生まれてから成熟するまでの学習の期間が長いほど良いということです。

そのため、出産後に脳が発達する最低限の準備を終えると、すぐに出産に至ります。

参考|赤ちゃんがすぐに立ち上がらない理由と三歳児教育 [医療情報・ニュース] All About

身体機能よりも脳の発達を重視することの影響

さて、様々な理由(仮説)はありますが、母親の身体のことを考えると赤ちゃんは身体機能と脳の発達の両方を供えて生まれることは難しく、結果として脳が発達して生まれることが人間の特徴ということになります。

では、もし他の動物のように、脳の発達よりも身体機能がある程度成熟した赤ちゃんが生まれてくるとどうなるのでしょうか。

動物の成熟状態において、身体機能が成体に近い状態で生まれるということは、性的な成熟も早いということになります。つまり、生殖機能が早く身につくということです。

性的な成熟が早いと成長の早い段階で学習意欲が低下して、すぐに生殖活動に勤しむため、脳の発達前に本能のまま子どもを生んで育てるようになるデメリットがあります。

つまり、ネオテニーの期間がなければ人間の知能はここまで発展しておらず、身体機能の発達が重視されていれば、他の動物と同じような生き方をしていたのかもしれません。

ちなみに、一般的に女性の初潮が始まる平均年齢は12-13歳ごろ、男性の精通が始まる平均年齢も12-13歳ごろですが、人間は生殖機能が備わってもすぐに生殖活動に勤しむわけではありません。

これは、その年齢までの脳の発達の過程で、社会生活を営むためには学習が必要であり、社会性や心身的にまだ未成熟だということを理解できるためなのでしょう。

赤ちゃんに手がかかることは意味がある

人間の脳が他の動物に比べて優れていることを考えると、それなりの理由があって、あえて身体的未成熟で生まれてくると言えそうです。

このことを理解していると、乳幼児のころの学習や脳の発達を促すことが大切だと言われる意味がよく理解できます。

もちろん、脳の発達とは、単純にお勉強をいっぱいしましょうということではありません。たくさんの人や物に触れて心(感情)が発達することで、子どもの興味関心が高まり、それが自発的な行動を促すことになります。

また、幼児期は色々なものを見るだけではなく、集団生活を通じて社会性を養い、人間同士のコミュニティを作ったり、コミュニティの中での立ち位置を考えられるようになることで、子どもなりにコミュニケーション能力が高まります。

そして、このように培われた心身の成長が後の自立につながっていきます。

もし、ママが赤ちゃんや子どもの世話に疲れてしまっていても、それは子どもが将来大きく成長するために必要な手間なんだと考えてください。

そう考えると、大変な育児もちょっとは救われる気がします……よね(^_^;)

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