少量なら良い…?妊娠中の妊婦の飲酒が胎児に与える影響

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妊娠中の飲酒の認識は変化している

一般的に、妊娠した妊婦はお酒などのアルコール類を飲んではいけないとされています。また、授乳中にアルコールを飲むことも控えるように言われます。

もちろん、お酒を飲んではいけない理由は、お腹の中にいる胎児や母乳を飲む赤ちゃんにアルコールの影響があるためです。

つまり、女性には、妊娠期間の約10か月と授乳期間の1年間(半年~1年半)、合わせて2年ほどお酒が飲めない期間があるということです。

これを聞いて子どもを諦める……という女性はほぼいないとは思いますが、お酒が大好きな人が2年も禁酒するというのは大変なことですよね。

中には「お医者さんから、お酒は少量なら良いって言われた。」「友達は妊娠中も割と飲んでたみたい。」「ストレスを溜めるなら禁酒しない方が良いんだって。」などの情報を聞いた人もいるでしょう。

ただ、妊娠中の飲酒による胎児への影響は年々認識が変化しています。アメリカの小児科学会では2015年に、妊娠中の飲酒は一切してはいけないという報告書を提出しています。

参考|CNN.co.jp : 「妊婦の飲酒は一切ダメ」、米小児科学会が勧告

では、妊娠中にお酒を飲むと胎児にどのような影響があるのでしょうか。また、妊婦が一切お酒を飲んではいけないとはどういうことでしょうか。

今回は、妊娠中の妊婦の飲酒が胎児に与える影響についてお話したいと思います。

妊娠中にお酒を飲んではいけない理由

妊娠中にお酒を飲んではいけない理由は、アルコールによって胎児に胎児性アルコール症候群(FAS)が起こり、身体機能や成長に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

また、胎児性アルコール症候群ほどではないものの、アルコール関連神経発達障害(ARND)やアルコール関連先天異常(ARBD)が起こる可能性もあります。

胎児性アルコール症候群(FAS)とは

妊娠中に妊婦がお酒を飲むことで、流産や死産、胎児の先天性異常の可能性が高まります。アルコールによって胎児が先天性異常を起こすことを「胎児性アルコール症候群」と言います。

胎児性アルコール症候群の原因は、アルコールの代謝によって発生するアセトアルデヒドなどが胎児の細胞を傷つけたり、神経細胞の発育に必要な作用を阻害してしまうことだと考えられています

胎児性アルコール症候群の影響

胎児性アルコール症候群を患って出生した赤ちゃんには以下の症状がみられます。

1.子宮内胎児発育遅延ならびに成長障害 
2.精神遅滞や多動症などの中枢神経障害
3.特異顔貌、小頭症など頭蓋顔面奇形 
4.心奇形、関節異常などの種々の奇形

引用|飲酒、喫煙と先天異常|日本産婦人科医会

胎児性アルコール症候群の赤ちゃんは、上記障害や奇形を伴うため目が小さい、鼻の下の溝がない、唇が薄いなどの顔つきの特徴も持っています。

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引用|Photo of baby with FAS – 胎児性アルコール症候群 – Wikipedia

胎児は妊婦のアルコール摂取によって発育遅延や成長障害だけでなく、神経障害・知的障害や胎児奇形を伴って産まれる可能性があるということです。

参考|「食の安全ダイヤル」に寄せられた質問等(平成18年7月分)について|食品安全委員会

アルコール関連神経発達障害(ARND)・アルコール関連先天異常(ARBD)とは

アルコール関連神経発達障害(ARND)、アルコール関連先天異常(ARBD)とは、胎児性アルコール症候群の一部の症状を言います。

アルコール関連神経発達障害は行動や認知の異常が見られ、アルコール関連先天異常では心臓、腎臓、骨、聴覚などで異常が見られることがあります。

参考|横浜市衛生研究所:胎児性アルコール症候群(FAS)について

妊娠中の飲酒の影響

妊娠中の飲酒による胎児へのリスクはわかりましたが、本当に妊婦は一切お酒を飲んではいけないのでしょうか。

アルコールの分解能力(無毒化)や胎児に与える影響には個人差があります。そのため、妊婦の1日の飲酒量・アルコール量による安全性を担保する基準は設けられません。

日本産婦人科医会では1日のアルコール摂取量の基準を15mlとしたときに、妊婦の飲酒が胎児に及ぼす影響について以下のように述べています。

参考|飲酒、喫煙と先天異常|日本産婦人科医会

アルコール摂取量の基準

お酒の種類によるアルコール含有量15mlの換算は以下の通りです。

ワイン|グラス1杯(アルコール度数11-15%)
日本酒|コップ1/2杯(アルコール度数15-16%)
ビール|350ml缶1本(アルコール度数4-5%)

アルコール摂取による影響

日本産婦人科医会は、1日のアルコール摂取量による胎児への影響を以下のように考えています。

15ml未満|胎児への影響は少ない
90ml以上|奇形の発生が明らかに高くなる
120ml以上|胎児アルコール症候群発生率30-50%

これらはあくまでも日本産婦人科医会の目安ですが、たとえビール1口だとしても「胎児への影響は少ない」なので、アルコールが胎児に何らかの影響を及ぼす可能性はあります。

アルコール摂取量に安全基準はない

妊娠中のアルコールに対する考え方で最も大切なことは、1日のアルコール摂取量に安全な基準はないと理解することです。つまり、少量でも胎児に影響をおよぼす可能性があると考えなければいけません。

たとえ医師が許可をしたとしても、1日のアルコール摂取量が15ml未満であっても、胎児が中枢神経障害を起こした場合は、妊婦の飲酒など生活習慣の乱れが疑われます。

胎児が罹患していた母親の多くは60~90ml を連日ではなく時々飲んでいた。この場合は一日量に換算すると少なくなる。胎児への影響は一日飲酒量だけでは判断できず、飲酒パターンが関与すると考えられている。中枢神経障害が主体である児の80%の母親は70~80ml (または75ml )以上を週に数回程度飲んでいた。これらのことより中枢神経障害に関しては、飲酒回数との関連が示唆されている。

参考|飲酒、喫煙と先天異常|日本産婦人科医会

また、日本助産学会では妊娠期の「エビデンスに基づく助産ガイドライン2016(※製作中2016年12月現在)」において、以下のように妊娠期の飲酒による胎児への影響を記しています。

母親が摂取したアルコールは容易に胎盤を通過し、母親のアルコール摂取 1~2 時間以内に胎児血中アルコール濃度は母親の血中濃度に達する(Burd 2012)。妊娠中の母親の少量の飲酒は、時期に関わらず、発育遅延、中枢神経障害、特異的顔貌などの症状を有する胎児性アルコール症候群を引き起こす可能性が指摘されている(Weitzman 2015)。母親が摂取するアルコール量が同じであっても、児への影響に違いがみられる。これは血中アルコールの消失が母親の代謝能力に影響を受けるためとされている(Buckley 2015; Chang 2014)。NICE、Lewis(2012)において、少量のアルコール摂取によっても児の発達への影響が指摘されている。

引用|エビデンスに基づく助産ガイドライン2016|日本助産学会

エビデンスに興味がある場合はリンク先で確認してください。

胎児性アルコール症候群の割合

日本では、胎児性アルコール症候群に関する調査や情報が少なく、どの程度の飲酒量でどのくらいの割合の胎児性アルコール症候群の赤ちゃんが産まれるかというデータはありません(2016年12月現在)。

日本医事新報の中では1-2万人あたり1人とされています。

田中晴美、高島敬忠、馬場一雄、他:わが国における胎児性アルコール症候群、日本医事新報、1979;2897:27-30.
田中晴美:日本における母親の飲酒による子どもの異常の現状、日本医事新報、1995;3714:45-49、1995.

世界における胎児性アルコール症候群の割合

米国疾病管理センター(CDC)の調査によると、アメリカにおける胎児性アルコール症候群の発生率は0.02-0.2%ほどで、アルコール関連神経発達障害・アルコール関連先天異常は、胎児性アルコール症候群の約3倍程度の発生率と考えられています。

また、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)の調査によると、フランスにおける胎児性アルコール症候群の発生率は0.05-0.3%ほどと推測されています。

参考|妊婦のアルコール飲料の摂取による胎児への影響|食品安全委員会

各国の妊娠中の飲酒量

では、実際アメリカ、フランス、日本の妊婦は、妊娠中にどの程度の飲酒をしているのでしょう。

アメリカの調査によると、妊娠中に週7回以上または1回5杯以上飲酒した妊婦の割合は1.9%、妊娠中に1度でも飲酒した妊婦の割合は10.1%となっています。

フランスの調査によると、妊娠中に1日1杯以上飲酒した妊婦は1995年の調査で5%、1998年の調査では3.9%となっています。

日本で2000年に厚生労働省が実施した妊娠中の飲酒に関する調査によると、妊娠中に飲酒した回数が10回未満と回答した人の割合は9.3%、妊娠中に1度でも飲酒をした妊婦の割合は18.1%となっています。

日本の妊婦が妊娠中に1度でも飲酒をした割合はアメリカの2倍近くもあり、飲酒リスクの認知が低い現状ですが、前述した通りアルコール摂取量が少量でも、胎児に影響がある可能性を考えなければいけません。

妊娠中に少量のお酒を飲んでも良い説は間違い?

妊婦が妊娠中にお酒を飲んでいけないことは、当たり前です。中には「少しだけだから……。」と飲んでしまう妊婦もいるようですが、勝手に判断して飲んではいけません。

仮に、アルコールを飲んでも良いと医師が判断するのは、アルコールを飲まないことによる影響が飲むことによる影響よりも少ないと判断された場合のみですが、これは余程のことです。

もし、妊娠中に妊婦の飲酒がわかった場合、今の周産期医療ではすぐに禁酒が勧められます。冒頭でお話した通り、妊娠中の飲酒リスクは昔よりも強く認識されるようになっています。そのため、「少しのお酒なら良い」というのは昔の話です。

「やっぱり妊娠すると、お酒飲めないんだ……辛い……。」と思うかもしれませんが、妊娠中の喫煙は当たり前ですし、喫煙者に近づくこともないですよね。それと同じです。

妊娠中はタバコもお酒も厳しい態度を持って、制限しなければいけないだけのことです。

今はノンアルコールビールやノンアルコール酎ハイもあるため、何とかお酒の代わりに気を紛らわせることもできます。ただし、ノンアルコール飲料の定義は度数1%未満なので、注意してあまり飲みすぎないようにしてください。

わたしもノンアルコールビールには何度か助けられました……(^_^;)

妊娠はとてもおめでたいことです。そのため、周囲のお祝いムードで「いいじゃん、一口くらい。お祝い事なんだから。」と勧められて、つい飲みそうになることもあるかもしれません。

でも、可愛い赤ちゃんを出産してからお酒を飲むチャンスはいくらでもあります。まずは、大切なひと仕事を終えるまでは、きちんと節制しましょう。

その方が何倍も美味しいお酒を飲めると思いますよ(授乳中もなかなか飲めないんですが……)。

授乳中のアルコールは赤ちゃんに影響ある?いつから飲酒できる?

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