完全流産と不全流産の治療・処置の違いと子宮内容除去術のリスク

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流産の流れのおさらい

流産には6つの状態(種類)があります。

流産の種類1.切迫流産(せっぱくりゅうざん)
流産の種類2.進行流産(しんこうりゅうざん)
流産の種類3.不全流産(ふぜんりゅうざん)
流産の種類4.完全流産(かんぜんりゅうざん)
流産の種類5.稽留流産(けいりゅうりゅうざん)
流産の種類6.化学流産(かがくりゅうざん)

前期流産・後期流産の原因や時期は?状態による流産の6つの種類

妊婦が「切迫流産」と診断されると、流産の可能性があるため自宅での安静を指示されたり、管理入院をして止血や痛み止め、子宮収縮抑制などの薬剤治療、感染症の診断・治療を行います。

切迫流産は、妊娠全体の15%の確率で起こり、さらにその50%の確率で「進行流産」に移行することで流産が確定してしまいます。

また、出血や下腹部痛など流産の自覚症状が見られない状態で胎芽の細胞分裂が停止したり、胎児死亡が起こることを「稽留流産」と言い、しばらくすると進行流産に移行します。

さて今回は、進行流産後に移行する「完全流産」と「不全流産」の特徴や違いについてです。

胎児に進行流産が起こると、必ず完全流産または不全流産の状態になります。完全流産と不全流産とはどのような状態のことを言い、どのような違いがあるのでしょうか。

ちなみに、化学流産は上記の流産とは異なるので、以下を参考にしてください。

妊娠検査薬が陽性なのに…化学流産とは?症状・原因や予防法は?

完全流産と不全流産の違い

完全流産とは、流産が起こった際に胎児(胎芽)を含む子宮内容物が全て排出されたことを言い、不全流産とは、流産が起こった際に子宮内容物の一部が子宮内に残留することを言います。

完全流産と不全流産の違いは、エコーや触診によって子宮内容物の有無を確認しなければわかりません。

完全流産(かんぜんりゅうざん)とは

完全流産は、自然流産によって胎児、胎盤、卵膜、羊水などの子宮内容物が全て排出されるため、子宮からの出血は程なく止まり、子宮収縮による激しい腹痛もしばらくすると治まります。

子宮内が綺麗な状態になるため、一般的にその後の処置の必要がなく、すでに子宮が収縮するなど母体の回復が始まっています。ただし、日本では完全流産でも慣習的に抗生剤の投与、子宮内容除去術(掻爬手術)を行う医師・病院もあるそうです。

不全流産(ふぜんりゅうざん)とは

不全流産は、自然流産によって子宮内容物の一部が排出されずに残っているため、まだ子宮口が開いており、流産後も出血や腹痛が治まりません。

子宮内容物が残留していることで感染症の可能性が高まり、子宮収縮も進まないため、子宮内から残留している子宮内容物を取り除く掻爬手術や抗生剤の投与などを必要とします。

完全流産・不全流産後の処置・治療

完全流産の処置

完全流産は、処置や治療を施す必要がないため、経過観察を行います。

ただし、完全流産後も1週間程度少量の出血が続いたり、子宮回復などによる腹痛が起こるため、鎮痛剤や吐き気止めを処方されることがあります。

不全流産の処置

不全流産は、残留している子宮内容物を取り除く子宮内容除去術(掻爬手術)が必要になる場合があります。

残留物が少ない場合は、子宮収縮剤を投与して残留物が自然流出するように1週間ほど様子を見る場合があります。また、感染症を防ぐために抗生物質も投与します。

残留物が多い場合、または子宮収縮剤後に子宮内膜などが残っている場合は、子宮内容除去術(掻爬手術)によって残留物を取り除きます。

子宮内容除去術は、器具によって子宮口を開き、鉗子などを子宮内に挿入して残留物を掻き出します。手術自体は10-15分程度で完了しますが、一泊入院が必要になる場合もあります。

ちなみに、不全流産であっても、母体の負担や術後のリスクなどを考えて可能な限り自然流産を行う方針の病院もあります。どのような処置を行うかは、医師と相談して決めてください。

妊娠13週未満の流産確定から4週間自然経過をみた結果では、累積自然(完全)流産率は1週後:54%、2週後:62%、3週後:76%、4週後:84%であり、腹痛や感染、性器出血などの副作用は8%と流産手術に伴う副作用の発生率(13%)と差がなかったとする報告があります。

引用|流産手術 | 医療法人社団 鈴峰今中医院

子宮内容除去術のリスク

子宮内容除去術には、いくつかのリスクが伴います。

リスク1.子宮穿孔(しきゅうせんこう)

子宮穿孔とは、鉗子などの器具によって子宮に穴が開いてしまうことで、子宮内容除去術で最も注意しなければいけない合併症です。

リスク2.頸管損傷・裂傷

頸管損傷・裂傷とは、頸管拡張の際に頸管に裂傷が発生してしまうことを言います。

リスク3.子宮内出血

子宮穿孔や頸管損傷以外の出血が起こる可能性があります。その場合、子宮収縮剤(マレイン酸メチルエルゴメトリンなど)の投与を行う場合があります。

リスク4.感染症

子宮内容除去術後に子宮内感染が起こる場合があります。そのため、感染症を予防するために、事前に抗生剤の投与が行われることもあります。

リスク5.その他

その他、以下のリスクが考えられます。

・麻酔によるアレルギー……麻酔の成分にアレルギー反応が出てしまうこと
・胎盤遺残(たいばんいざん)……子宮内に胎盤やその他子宮内容物が残ってしまうこと
・子宮破裂……陣痛が強すぎた場合に子宮が破裂してしまうこと
・子宮内腔癒着……無月経などの原因になる子宮頚管や子宮腔の癒着が起こること

子宮内容除去術後の生理の再開

不全流産で行う子宮内容除去術(掻爬手術)には、大量の出血のリスクの他、子宮穿孔や頸管損傷、その他感染症など合併症のリスクの可能性があります。

また、術後にもリスクとして月経不順、習慣流産、不妊症、次回分娩時の障害、精神的な問題などが考えられます。これらは、人工中絶手術と同じ問題です。

人工中絶率の推移と経験割合は?中絶手術の後遺症リスクは?

そのため、何れの場合も、術後の充分な経過観察とカウンセリング等による対応が臨まれます。

これらのリスクを全て終えたうえで、流産後は4-8週間ほどで生理が再開し、さらにもう1度生理が来た後は妊娠をしても問題がない状態に戻ります。

進行流産の際にお話したことと同様、生理が来たとしても排卵を伴っていない場合もあるため、妊娠前と同じように基礎体温を付けるなどの体調管理が必要になりますし、生理が来ない場合は早めの受診を受けた方が良いでしょう。


参考|流産・切迫流産:病気を知ろう:日本産科婦人科学会
参考|子宮内容除去術|日本産科婦人科学会

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