産後に産褥熱・合併症が起こる産褥感染症の原因・症状・治療法とは?

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産褥感染症(産褥熱)とは

産褥感染症(さんじょくかんせんしょう)とは、主に分娩の際に生じた産道や膣付近の傷に細菌が感染して起こる熱性疾患の総称です。

通常、分娩後は37度台の発熱が起こり、翌日には平熱に下がります。ところが、分娩後24時間経ってから6時間以上間隔をおいた体温測定で、2回38度以上の発熱があった場合は産褥感染症と診断されます。

産褥感染症は、熱性疾患であるため「産褥熱(さんじょくねつ)」とも呼ばれます。

また、産後6-8週間の産褥期は出産によって体力が低下しているため、産褥熱の原因である細菌が「会陰切開創(えいんせっかいそう)」に感染することで「尿路感染症(にょうろかんせんしょう)」を起こしたり、うっ滞した乳汁(にゅうじゅう)で細菌が繁殖して「乳腺炎(にゅうせんえん)」を起こすなど、合併症の危険もあります。

どちらにしても、産後のママにとっての産褥期は、身体機能や体力を回復させつつ、様々な感染症に注意しなければいけない時期だということです。

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産褥感染症(産褥熱)の原因

出産後は体力を消耗している上に、分娩によって会陰、膣、子宮などに細かい裂傷などができているため抵抗力が低く、細菌に感染しやすい状態です。

産褥感染症の細菌の感染経路を特定することは難しいのですが、主に医師など分娩介助者の手や器具から感染する外的感染、母体が持っている常在菌から感染する内的感染が原因だと考えられています。

また、以下の場合には産褥感染症を起こしやすくなります。

・貧血を持っている場合
・以前、細菌性腟炎を患っている場合
・破水から出産までの時間が長引いた場合
・分娩が長引いた場合
・帝王切開を行った場合
・子宮内容物が残っている場合
・出産後の出血が多い場合
など

産褥感染症(産褥熱)の症状や合併症

産褥感染症を発症することで、38度台の発熱が継続する以外に下腹部や子宮、骨盤部に圧痛が起こります。また、頭痛や食欲不振になる場合もあります。さらに、細菌による感染症であるため、様々な病気を併発することがあります。

産褥熱の症状・合併症1.悪露停滞(おろていたい)

細菌の感染により、子宮内に溜まっている悪露の排泄がうまくいかず悪臭を伴った出血が持続します。悪露の排出が進まなければ、子宮内で細菌が繁殖してしまい、産褥子宮内膜炎などの感染症を引き起こす可能性があります。

通常の悪露の状態は以下を参考にしてください。

産後の悪露はいつまで?色・量・匂いの変化と帝王切開時の症状

産褥熱の症状・合併症2.尿路感染症(にょうろかんせんしょう)

会陰切開創に細菌が感染することで、尿路感染症を起こすこともあります。尿路感染症の症状などは以下を参考にしてください。

赤ちゃんに多い尿路感染症の症状と原因は?予防法はある?

産褥熱の症状・合併症3.産褥子宮内膜炎(さんじょくしきゅうないまくえん)

産褥子宮内膜炎とは、産褥期に細菌が子宮頚管から子宮内に入り、炎症を起こす病気を言います。産褥子宮内膜炎にかかると子宮収縮が上手くできず、下腹部や子宮の圧痛、発熱、疲労感、食欲不振や全身の倦怠感、39度前後の高熱などの症状があります。

産褥熱の症状・合併症4.乳腺炎(にゅうせんえん)

乳腺炎とは、うっ滞した乳汁に細菌が感染して炎症を起こす病気を言います。乳腺炎を起こすと乳房が腫れてしこりができたり、乳房の痛みや38度以上の高熱、また、化膿性乳腺炎では乳首から膿が出るなどの症状があります。

産褥熱の症状・合併症5.産褥潰瘍(さんじょくかいよう)

産褥潰瘍とは、外陰や膣などの会陰切開創に細菌が感染して、各所に潰瘍ができる病気を言います。

産褥熱の症状・合併症6.卵管炎、卵巣炎など子宮付属器炎

子宮付属器炎とは、卵管や卵巣に細菌が感染して炎症を起こす病気を言います。産褥子宮内膜炎が進行すると、卵管炎、卵巣炎などに細菌が感染して子宮付属器炎を併発し、下腹部の痛みを伴って新たな発熱などが起こります。

細菌感染の侵入経路によって、卵管炎、卵管留膿腫、卵巣膿瘍と診断が分かれています。

産褥熱の症状・合併症7.骨盤腹膜炎(こつばんふくまくえん)

骨盤腹膜炎とは、子宮内膜炎、子宮筋層炎、子宮付属器炎などから、骨盤に細菌が感染する病気を言います。子宮や骨盤など下腹部の強い痛みや40度の高熱、嘔吐を伴います。

通常は数日で改善に向かいますが、腹腔内が穿孔すると汎発性腹膜炎をきたす場合があり、全身に重篤な症状をもたらす可能性もあります。

産褥熱の症状・合併症8.産褥敗血症(さんじょくはいけつしょう)

産褥敗血症とは、細菌が血管内に入り血流内で増殖することで、全身が感染症になる病気を言います。悪寒を伴う39度以上の高熱やショック症状を起こし、内臓に後遺症が残ったり、 回復が望めない状態に陥る可能性もあります。

産褥熱の症状・合併症9.播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)

播種性血管内凝固症候群とは、産褥敗血症と併発して起こる症状のことで、細菌が血管内に入ることで血液の凝固作用が強くなってしまい、体中の毛細血管に血栓ができる病気を言います。

播種性血管内凝固症候群を起こすと、多臓器不全なども引き起こしてしまう場合があります。

産褥感染症(産褥熱)の治療方法

産褥感染症は、身体の一部に細菌が感染することによって徐々に各所に細菌感染が広がっていきます。

産褥感染症の最も効果的な治療方法は、早期発見・早期治療ですが、まず38度以上の発熱があるため感染症の発見自体は難しくないとされています。

38度以上の高熱が2日以上継続する場合は、悪露の状態、裂傷部の分泌物の検査、血液中の細菌培養検査などを行い、産褥感染症だと認められる場合は、抗生物質を投与して感染原因となる細菌を殺菌します。

一般的には、抗生物質の投与により9割以上が3-4日で解熱し、健康状態を回復することができます。

また、もし産褥感染症の発生後に合併症が起こっている場合は、それぞれの病気に対応した抗生物質の投与、排膿、患部の切除術などの治療を行なわなければいけません。

産褥期は無理をしないことが大切

産褥感染症(産褥熱)は、以前は妊産婦死亡が高い感染症でしたが、現在では早期発見して抗生物質を投与することで比較的危険性がない病気になりました。

また、清潔な手術室で出産を行うことが増えたため、産褥感染症の原因である外的感染も減少しています。ただし、産後で体力が低下している状態なので、リスクが減少していても、十分に注意する必要はあります。

前述した通り、産褥期に一度細菌が感染すると様々な感染症に発展しやすく、今でも妊産婦死亡※の原因になる可能性もあります。

※妊娠中および妊娠終了後満42日未満の間に妊娠・出産に関連する病気等が原因で死亡してしまった妊産婦のこと

30-40代妊娠・出産リスクは?妊産婦死亡の原因と死亡率の推移

赤ちゃんが健康に育っていくためには、ママの健康や健康に対する心構えが第一優先です。いくら可愛い赤ちゃんが産まれて嬉しいからといって、産褥期は張り切りすぎずにしっかりと休養を心がけましょう。

産褥期と合わせて、床上げ1か月までの過ごし方についても知っておきましょう。

床上げとは?出産後1か月の家事・外出など普通の生活はいつから?


参考|18.産科感染症の管理と治療|日本産科婦人科学会
参考|産褥感染症とはどんな病気か|症状や原因・治療 – gooヘルスケア
参考|産後の感染症: 産褥期: メルクマニュアル 家庭版

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