赤ちゃんに起こる周産期死亡10の原因と死因別割合

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周産期医療は発展している

日本の周産期医療は、医療施設や国・地方自治体の連携によって発展してきました。それは、周産期死亡率(周産期における1,000人あたりの死亡数)の数値にも現れています。

日本では、平成元年(1990年)に周産期死亡率が15人だったものが、平成26年(2014年)の周産期死亡は2.5人と6分の1にまで減少しています。

これに対して2014年の段階でアメリカは6.3人、フランスは11.8人、イギリスは7.0人、ドイツは5.4人という周産期死亡率になっており、先進国の中でも日本の周産期死亡率が優秀だということがわかります。

新生児死亡・周産期死亡・乳幼児死亡の定義や違いと死亡率の推移

とは言え、現実的に周産期死亡を無くすことは難しく、一定以上の周産期死亡は起こります。

以下の周産期死亡原因の内訳グラフを見ると、年度によって割合は変わりますが、周産期死亡につながる妊婦や胎児の病気がわかります。

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引用|産科医療のこれから: 日本の死産の疫学

日本産科婦人科学会の周産期登録データベースにおいて、2001-2004年で死産症例として登録されている2,316例を基にしているとのこと。
より詳しい内容を知りたい方は、「産科医療のこれから: 日本の死産の疫学」を御覧ください。

今回は、上記グラフを参考にして、周産期に起こる周産期死亡の原因についてお話したいと思います。

産科医療で重要な周産期医療とは

周産期とは、妊娠22週から胎児の生後満7日未満までを言い、この期間は母体・胎児、および新生児の生命に関わる病気や症状が多く発生する期間です。

妊娠して、やむを得ない理由で起こる流産の期間を抜けたとしても、胎児の病気や妊婦の病気によって死産に至ってしまうことがあります。

また、せっかく可愛い赤ちゃんを出産できたとしても、胎児期の病気が原因で新生児が死亡してしまうケースもあります。

そのため、周産期における医療は、産科・小児科双方からの一貫した総合的な医療体制を敷き、総合的に妊娠・出産におけるリスクを軽減する必要が有ることから、周産期医療と呼ばれています。

参考|周産期医療とは 東京都福祉保健局

周産期死亡の原因と割合1.常位胎盤早期剥離|17%

常位胎盤早期剥離とは、妊娠30週ごろから起こりやすい妊婦の病気で、早剥(そうはく)とも呼ばれます。以前、新生児仮死に至る原因の1つとしてもご紹介しました。

胎盤早期剥離は、分娩が完了する前に胎盤が剥がれてしまうことで、胎児に臍帯を通じた酸素や栄養の供給ができなくなります。

胎盤は通常、分娩後20-30分ほどで子宮から自然に剥がれて体外に娩出されますが、胎盤の剥離が分娩前の早い段階で起きてしまうと、胎児は胎内で酸素欠乏症を起こし、胎児ジストレスや死産の確率が高くなります。

また、子宮から胎盤がはがれることで母体の出血が起こるため、出血量が多い場合は死産リスクだけではなく、妊婦も失血死のリスクを伴います。

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周産期死亡の原因と割合2.胎児形態異常|16%

胎児形態異常とは、広義の胎児奇形のことを言います。ここでは胎児水腫を除き、染色体異常を含みます。

胎児奇形には大小様々な種類がありますが、外層的な奇形や軽度の奇形であれば、胎児治療や出産後の新生児治療を行うことで生存の確率は上がります。

ところが、無脳児、腎無形成など脳や内蔵の形態異常、生命維持に重要な器官が形態異常を起こしている場合は、出産後に生存することが難しいだけでなく、出産前の胎児死亡の原因にもなってしまいます。

参考|研修医のための必修知識|日産婦誌56巻5号

周産期死亡の原因と割合3.臍帯因子(臍帯異常)|15%

臍帯異常とは、へその緒(臍帯)に起こる異常を言います。

臍帯は胎児と胎盤をつないで、酸素や栄養を供給する胎児の生存・成長に欠かせない管状の器官です。その臍帯に異常が発生することで、酸素や栄養の供給が十分に行えず、胎児の成長に影響をおよぼすだけでなく、胎児死亡を起こす原因になります。

へその緒の長さ・太さ・役割は?胎児の臍帯異常の種類は?

周産期死亡の原因と割合4.多胎妊娠(たたいにんしん)|8.0%

多胎妊娠とは、同時に2人以上の胎児を妊娠することを言います。

多胎妊娠は、単胎妊娠と比べて周産期死亡率が高く、子宮内で胎児が圧迫状態にあるため奇形リスクや他の病気のリスクを伴います。もちろん、早産、発育不全などの確率も高まります。

また、妊婦には妊娠高血圧症候群などの合併症を起こすリスクもあります。

双子、三つ子の妊娠・出産がママと赤ちゃんに及ぼすリスクとは

周産期死亡の原因と割合5.胎児水腫(たいじすいしゅ)|5.6%

胎児水腫とは、お腹や胸、心臓の周囲などに水分が溜まることで全身に浮腫を起こし、心臓の機能低下、血液の循環不全を起こすことを言います。

胎児水腫は出生全体の0.6%と珍しい病気ですが、周産期死亡原因の割合は5.6%と高いため、注意する必要があります。胎児の形態異常、染色体異常、先天性感染症、一卵性双胎などが原因で起こります。

参考|胎児水腫とはどんな病気か|症状や原因・治療と関連Q&A – gooヘルスケア

周産期死亡の原因と割合6.感染症|2.9%

周産期死亡に関係する感染症は、主に母体から胎児に細菌やウイルスが感染して起こる病気のことで、細菌やウイルスの種類に決まりはありません。

母体が健康な場合は、特に重篤な症状になることが少ない溶連菌、肝炎ウイルス、カンジダ、クラミジア、サイトメガロウイルス、真菌、大腸菌、ヘルペス、梅毒などの細菌やウイルスも、胎児に感染することで胎児ジストレスや胎児死亡を引き起こす可能性があります。

周産期死亡の原因と割合7.その他の胎盤異常|2.8%

その他の胎盤因子とは、胎盤機能不全、癒着胎盤など、常位胎盤早期剥離・前置胎盤以外で起こる胎盤異常のことを言います。

胎盤異常は臍帯異常と同様、様々な原因で起こり、胎児のジストレスや胎児死亡の要因になり得ます。

周産期死亡の原因と割合8.妊娠高血圧症候群|2.6%

妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降から分娩後12週の間で高血圧が見られる場合、または高血圧の際に蛋白尿を伴う妊婦特有の高血圧症状のことを言います。

妊娠高血圧症候群の主な症状は血圧が高くなることなのですが、高血圧のせいで常位胎盤早期剥離、HELLP症候群などの様々な合併症を引き起こすことで胎児に栄養や酸素が行き渡らずに胎児死亡につながってしまいます。

妊娠高血圧症候群の影響とは?原因や症状は?予防や治療は可能?

周産期死亡の原因と割合9.他の胎児低酸素症|2.3%

胎児が周産期死亡に至る原因は様々ですが、主な周産期死亡原因である臍帯異常や胎盤異常などは、胎児に酸素が供給されないことで酸素欠乏を起こし、胎児死亡に至るケースがほとんどです。

ここで言う他の胎児低酸素症とは、主に中枢神経系の障害によって脳など重要な臓器に酸素が行き渡らないことで胎児死亡に至ることを指します。

周産期死亡の原因と割合10.その他の母体疾患|2.0%

その他の母体疾患とは、上記の周産期死亡以外の要因によって起こるものを言います。

周産期死亡の原因と割合.その他|25.8%

さらに、残りの25.8%は周産期死亡原因が不明なものとされています。

周産期死亡を予防・治療するためには

このように周産期死亡の原因には様々なものがあり、これら全ての考慮をしながら安全な出産に至るためには、医療技術の成熟・蓄積なしでは達成できません。

以前ご紹介した周産期死亡率の年次推移を見てみると、短期間で日本の周産期医療が向上していることがよくわかります。

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引用|平成26年人口動態統計|厚生労働省

周産期医療を今よりも向上させ、周産期死亡率を減らすためには、さらなる医療技術の進歩も必要です。ただし、それ以上に必要なことは、妊娠・出産に臨む妊婦や家族の意識の向上だと思います。

どれだけ周産期医療の技術が上がっても、妊婦に予防や事前準備の心構えがなければ、病気にかかる割合が上がってしまいます。

家族が妊婦に協力しなければ、妊娠ストレスや体調の悪化によって病気にかかる割合が上がってしまいます。

規則正しい生活習慣と適度な運動、ストレス発散、そして必ず妊婦検診を受けることが徹底されれば、今よりも周産期死亡率は改善するはずです。

周産期死亡率をより低下させ、女性が安心して妊娠・出産ができる基盤作りをみんなで行えるように、妊娠に対する意識の向上を目指しましょう。

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