出産後に起きる子宮下垂と子宮脱とは?原因・症状・予防・治療法

5263b09e7deb8d5650f77acda6c26434

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

この記事でお伝えしたいこと

産褥期に回復しない機能は?

女性の身体は妊娠から出産までの過程を経ると、体型や身体機能が大きく変わってしまいます。

「これちゃんと元に戻るの……?」と思うかもしれませんが、身体の機能や器官の多くは、たった8週間ほどの産褥期を経て妊娠前の状態に戻っていきます。

産褥期の過ごし方は?機能回復の期間はいつまで?床上げとの違い

特に子宮の回復スピードはとても早く、この子宮の回復のことを「子宮復古(しきゅうふっこ)」と言います。

産後は体力が落ちているだけではなく、子宮復古が起こるため、さらに身体に負担がかかります。そのため、出産後は床上げまでは無理に動かずに安静にしていなければいけません。

ところが、産褥期ではなかなか元に戻ってくれないものもあります。それは「脂肪がついた体型」と「開いた骨盤」です。

脂肪がついた体型は……まぁ頑張るとして、開いた骨盤は産後6か月かけて閉じていくのですが、この骨盤が影響して「子宮下垂」や「子宮脱」という症状を起こしてしまうことがあります。

今回は、出産後に開いた骨盤が影響して起きやすい子宮下垂と子宮脱の原因・症状・治療法などについてお話したいと思います。

骨盤内臓器脱とは

子宮下垂と子宮脱は、どちらも骨盤内臓器脱という症状の1つです。骨盤内臓器脱とは、様々な臓器を支えている骨盤内の靭帯が、伸びてしまったり、断裂してしまうことで、身体にあった元の位置よりも下がってきてしまうことを言います。

骨盤内臓器脱の中でも、産後に起きやすいのが子宮下垂と子宮脱で、これらは下がり方の程度の違いにより区別されています。

子宮下垂(しきゅうかすい)とは

子宮は、靭帯や筋肉によって支えられています。ところが、妊娠・出産により骨盤の筋肉や靭帯が伸長して、緩んだり傷ついてしまうことで、子宮が正常な場所に留まっていられなくなる症状が起きます。これを「子宮下垂」と言います。

子宮脱(しきゅうだつ)とは

子宮脱とは、子宮下垂の症状が進行してしまい、子宮が膣から体外にはみ出してしまう症状のことを言います。

子宮脱が重度に進行してしまうと、子宮が常に膣から体外にはみ出したままになり、自力では戻せなくなってしまうこともあります。

産後に子宮下垂や子宮脱が起きる原因

出産後に子宮下垂や子宮脱が起きやすいのは、出産による2つの身体の変化があるためです。特に、経膣分娩を行う人は身体の変化が著しいため、子宮下垂や子宮脱が起きやすいことが考えられます。

子宮下垂・子宮脱の原因1.骨盤が開くため

出産によって大きく開いた骨盤が元に戻るためには、6か月ほどの期間が必要です。

骨盤が開いているということは、骨盤を支えていた骨盤底筋や靭帯も伸びて緩んでいる状態です。そのため、骨盤や周辺筋肉によって支えられていた子宮が下がってしまい、子宮下垂や子宮脱が起こる原因になります。

子宮下垂・子宮脱の原因2.エストロゲンが減少するため

産後は女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌が減少してしまいます。

エストロゲンは靭帯や骨盤底筋の緊張を促す効果がありますが、エストロゲンの分泌量が減ってしまうことで靭帯や骨盤底筋の緊張が緩み、より子宮下垂や子宮脱を引き起こしやすくなります。

子宮下垂や子宮脱が起きやすい人

産後は子宮下垂や子宮脱が起きやすい状態になっているのですが、さらに以下の要素を持った人は、子宮下垂や子宮脱を発症するリスクが増大します。

子宮下垂・子宮脱が起きやすい人1.経産婦

何度も経膣分娩を行い、骨盤底筋や靭帯に負荷がかかっていると、靭帯が伸びたままで元に戻らなくなってしまいます。

子宮下垂・子宮脱が起きやすい人2.巨大児の出産

巨大児とは4,000g以上の大きな赤ちゃんのことですが、巨大児だけが妊婦の骨盤底筋や靭帯に負荷をかけるわけではなく、出産によるインパクトは人それぞれです。

そのため、たとえ3,500gの赤ちゃんでも、3,000gの赤ちゃんでも、骨盤底筋や靭帯に負荷がかかかって靭帯損傷や靭帯伸長が起こる可能性はあります。

巨大児が産まれる原因や母子への影響は?障害リスクと予防方法

子宮下垂・子宮脱が起きやすい人3.高齢出産

日本における高齢出産とは35歳以上で出産した人のことを言いますが、35歳以上にかかわらず年齢が増していくと分娩時間が長くなる傾向があり、骨盤底筋や靭帯にかかる負荷も増すため、子宮下垂や子宮脱が起きやすくなります。

子宮下垂・子宮脱が起きやすい人4.肥満・産後太り

特に内臓脂肪が多い肥満体型の人は、脂肪によって子宮などの臓器が圧迫されてしまい、子宮下垂や子宮脱が起きやすくなります。

子宮下垂や子宮脱が起きやすい人5.強くいきんで排便する

産後におこりやすい便秘のせいで排便時に強くいきんでしまう人は、腹圧によって子宮下垂や子宮脱が起きやすくなります。便秘の解消だけではなく、強くいきんでしまう習慣も改善しなければいけません。

子宮下垂や子宮脱が起きやすい人6.慢性的に腹筋に力を入れる

慢性的に腹筋に力を入れるというのは、腹筋に力を入れることが生活習慣や仕事になってしまっているということです。立ちっぱなしの仕事や重いものを運び続ける仕事をしていると、腹圧によって子宮下垂・子宮脱が起きやすくなります。

子宮下垂や子宮脱が起きやすい人7.呼吸器疾患

喘息など慢性的な呼吸器疾患のある人は、咳をする度に腹筋に力が入り、内部に腹圧がかかります。そのため、子宮下垂や子宮脱が起きやすくなります。

子宮下垂や子宮脱で起こる症状と影響

では、子宮下垂や子宮脱によってどのような症状が起こり、身体にどのような弊害があるのでしょうか。

子宮下垂・子宮脱の症状1.膣に異物感がある

子宮下垂や子宮脱は、子宮が通常の位置よりも下がってしまうため、お腹に異物感や不快感を感じます。

子宮下垂・子宮脱の症状2.痛みや出血を伴う

子宮脱によって膣壁や子宮が体外に出てしまうと、その部分がすれて炎症を起こしたり、出血してしまうことがあります。

子宮下垂・子宮脱の症状3.感染症を起こす

膣壁や子宮が体外に近い位置に下りてくることで、膣や子宮が細菌に感染して「産褥子宮内膜炎(さんじょくしきゅうないまくえん)」などの感染症を起こしてしまうことがあります。

産褥子宮内膜炎とは、子宮に細菌が感染することで下腹部や子宮の圧痛、発熱、疲労感、食欲不振や全身の倦怠感、39度前後の高熱など症状が起こり、他の感染症も併発する可能性があります。

産後に産褥熱・合併症が起こる産褥感染症の原因・症状・治療法とは?

子宮下垂・子宮脱の症状4.膀胱脱や直腸脱を起こす

子宮下垂・子宮脱が起きるということは、同じく骨盤内になる膀胱や直腸もいっしょに下がってしまう「膀胱脱(ぼうこうだつ)」「直腸脱(ちょくちょうだつ)」を起こすことがあります。

膀胱脱は尿失禁・頻尿や排尿困難の原因になり、直腸脱は便秘や排便困難の原因になります。

子宮下垂・子宮脱の症状5.歩行困難など生活に影響が出る

子宮下垂・子宮脱を起こすことで異物感や不快感を感じるようになると、歩くことや立っていることでも子宮に違和感や痛みを感じるようになり、歩行が困難になる可能性があります。

また、日常生活において積極的な活動を行えなくなるだけでなく、子宮が下がっているため、子宮圧迫による性交痛を感じるようになります。

子宮下垂・子宮脱の症状6.流産や早産のリスクが上がる

子宮下垂・子宮脱になりやすい人はもともと骨盤底筋が弱い可能性があり、その場合子宮口が緩みやすいことから細菌に感染する可能性が上がります。

そのため、妊娠をしにくくなったり、妊娠をした際に流産や早産のリスクが上がってしまう場合があります。

子宮下垂と子宮脱の予防

通常は、出産をするまで子宮下垂や子宮脱が起こるかはわかりません。そのため、産後の生活において、子宮下垂と子宮脱を予防するために生活習慣に気をつける必要があります。

子宮下垂・子宮脱の予防1.強い腹圧がかからない生活をする

産後の床上げまではおよそ1か月ありますが、床上げを過ぎたからといって無理に身体を動かしても良いというわけではありません。

特に重い荷物を持ったり、激しい運動をすることは控え、数か月かけて徐々に身体を慣らしていくことを心掛けましょう。

子宮下垂・子宮脱の予防2.バランスの良い食事を摂る

産後の食事は、出産で疲れて傷ついた身体を早く回復するために、栄養バランスに気をつける必要があります。

特に骨盤に影響があるカルシウム、悪露などの出血を補う鉄分、便秘にならないための食物繊維、十分な水分などは積極的に摂るようにしてください。

また、バランスの良い食事はエストロゲンの分泌量を増やしてくれるため、骨盤の早い回復に効果があります。

子宮下垂・子宮脱の予防3.下半身の筋肉を鍛える運動

産後は安静にしなければいけませんが、全く動かないことも良いとはいえません。

特に産後3週目に入ると、軽めのストレッチや骨盤底筋体操などで身体を動かし、下半身の骨盤周りの筋肉や靭帯に刺激を与えることで、骨盤や骨盤底筋、靭帯の回復を促すことができます。

骨盤底筋体操はユニ・チャームのサイトに「骨盤底筋トレーニング」としてやり方が掲載されています。

参考|カンタンお部屋トレ! | 尿もれ対策に!骨盤底筋トレーニング | チャームナップ-ユニ・チャーム

子宮下垂・子宮脱の治療方法

もし、子宮下垂や軽度の子宮脱になってしまった場合、骨盤底筋体操などのトレーニングを行うことで改善することもありますが、重度の子宮脱になってしまうと病院でそれなりの治療を受けるしかありません。

子宮脱の治療1.リングペッサリー挿入法

リングペッサリー挿入法とは、腟の中にリング状のプラスチック器具を挿入して、子宮と腟を持ち上げる方法のことです。

リングペッサリーは一度挿入すると落ち着くまである程度の期間が必要で、身体に合わない場合は取れてしまうこともあります。また、膣内を傷つけてしまうこともあるため、定期的な通院が欠かせません。

ただし、リングペッサリー挿入法は子宮を下がらなくする対処法であり、子宮脱の治療にはつながりません。そのため、根本解決をするためには、手術を行うか骨盤矯正などの治療が必要になります。

参考|ペッサリーとは | 知ろう!ペッサリーのこと

子宮脱の治療2.メッシュ手術(TVM手術)

メッシュ手術とは、下垂した子宮を支えるために、人工素材を網状に縫い込んだメッシュを膣内に留置するという手術法です。手術は、全身麻酔または腰椎麻酔を行い、経膣を通してメッシュを留置していきます。

メッシュ手術は、これまでのように子宮を全摘出して手術をする必要が無く、手術や入院期間も短くて済みます(入院期間は10日前後)。患者にかかる身体的・金銭的負担も少ないため、今後主流になる手術方法だと言われています。

子宮下垂と子宮脱は予防が大切

子宮下垂や子宮脱は、女性にとって大切な子宮の位置が下がってしまったり、ときには膣を通って子宮が出てきてしまう病気のため、とても重い病気だというイメージを持つかもしれません。

ただ、子宮下垂や子宮脱が直ちに大きな健康被害につながることは少ないうえ、年齢を重ねた女性であれば誰がいつ起こってもおかしくない一般的な病気です。子宮下垂や子宮脱は、初期症状、軽度な症状も含めると2人に1人がかかるそうです。

もちろん、子宮下垂や子宮脱による症状はない方が良いですし、子宮下垂や子宮脱によって未来の妊娠に影響があることは避けなければいけません。

そのため、たとえ出産後ではなくても、普段から子宮を大切にするために骨盤底筋を鍛えたり、下半身の程良い運動を行うことが効果が高い予防になります。

産後の子宮やお腹周りに異物感や違和感を感じても、時間が経過すると自然に治る場合もありますが、もしものことを考えて、すぐに病院で検査を受けることも大切だと思います。


参考|女性の病気について | 日本女性心身医学会
参考|子宮脱の症状と予防について|ウェルネス東峯
参考|骨盤臓器脱(子宮脱) – 熊本市 | 産婦人科 無痛分娩 小児科 慈恵病院
参考|骨盤臓器脱(子宮脱)|四谷メディカルキューブ
参考|骨盤臓器脱(性器脱) | 医療ポータルサイト

記事のURLとタイトルをコピー