死産リスクが高い常位胎盤早期剥離の症状は?原因と予防・治療法

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周産期死亡の原因とは

ハッピーな妊娠で怖いのはやはり流産と死産です。流産が起こる時期を乗り切ったとしても、様々な原因でお腹の中の赤ちゃんには死産のリスクが伴います。

流産は全体の8割が妊娠12週未満の妊娠初期に起こります。詳しくは以下を参考にしてください。

妊娠週数別流産の確率と妊娠初期流産の予防法

死産とは一般的に周産期死亡(妊娠満22週以後の死産+早期新生児死亡)のことを指します。

妊娠が幸せであるほど、妊娠・出産における周産期死亡が怖いものだと感じますが、妊婦に周産期死亡を防ぐ手段はほとんどなく、以下の数値があらわす様に日本の高度な医療技術と運命に従うしかありません。

日本では2014年の周産期死亡は2.5人(妊娠満22週以後の死産1.8人+早期新生児死亡0.7人)となっています。

これに対してアメリカは6.3人、フランスは11.8人、イギリスは7.0人、ドイツは5.4人となっており、日本の周産期死亡率も非常に優秀だということがわかります。

新生児死亡・周産期死亡・乳幼児死亡の定義や違いと死亡率の推移

ちなみに、周産期死亡が起こる原因のトップ10は以下のとおりです。

1.常位胎盤早期剥離|17%
2.胎児形態異常|16%
3.臍帯因子(臍帯異常)|15%
4.多胎妊娠(たたいにんしん)|8.0%
5.胎児水腫(たいじすいしゅ)|5.6%
6.感染症|2.9%
7.その他の胎盤異常|2.8%
8.妊娠高血圧症候群|2.6%
9.他の胎児低酸素症|2.3%
10.その他の母体疾患|2.0%

赤ちゃんに起こる周産期死亡10の原因と死因別割合

では、赤ちゃんに起こる周産期死亡の原因で一番多い「常位胎盤早期剥離」とはどのような病気・症状なのでしょうか。

今回は、常位胎盤早期剥離の症状や原因、また予防や治療法などについてお話したいと思います。

常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)とは

常位胎盤早期剥離とは、妊娠30週ごろから起こりやすい妊婦の身体に起こる病気のことで、早剥(そうはく)とも呼ばれます。以前、新生児仮死に至る原因の1つとしてもご紹介しています。

常位胎盤早期剥離は、分娩が完了する前に子宮内の胎盤が剥がれてしまうことで、胎児に臍帯を通じた酸素や栄養の供給ができなくなってしまう症状を起こします。

胎盤は通常、分娩後20-30分ほどで子宮から自然に剥がれて体外に娩出されるのですが、常位胎盤早期剥離が分娩前の早い段階で起きてしまうと、胎児は胎内で酸素欠乏症になるため胎児ジストレスや死産の確率が高くなります。

また、子宮から胎盤が剥がれることで出血が起こるため、出血量が多い場合は死産のリスクだけではなく、母体にも失血死のリスクを伴います。

死亡・後遺症の確率は?新生児仮死の原因と治療・対処法

常位胎盤早期剥離が起こる確率は200-300の出産に対して1-2件前後であるため、発症率が0.5%-1.3%前後なのですが、常位胎盤早期剥離が起こると重症化する割合が高く、母体の死亡率は常位胎盤早期剥離全体の5%前後、胎児死亡率は30-50%にもなります。

参考|異常妊娠|日本産婦人科学会

そのため、常位胎盤早期剥離の恐れがある場合は、妊娠週数によってはすぐに帝王切開による分娩を行なったり、緊急の母体ケアをしなければいけません。

常位胎盤早期剥離の症状の重さ

常位胎盤早期剥離は、胎盤の剥離面積によって症状や、その重度が分かれています。

主な症状としては、胎盤が剥離することによる下腹部痛、背部痛、子宮の圧痛、剥離面積による出血が起こる場合があります。また、何度も子宮収縮を繰り返し、胎盤の剝離が進行するとDICを発症する恐れもあります。

播種性血管内凝固症候群(はしゅせい けっかんない ぎょうこ しょうこうぐん、英: disseminated intravascular coagulation, DIC)とは、本来出血箇所のみで生じるべき血液凝固反応が、全身の血管内で無秩序に起こる症候群である。早期診断と早期治療が求められる重篤な状態で、治療が遅れれば死に至ることも少なくない。

引用|播種性血管内凝固症候群 – Wikipedia

症状が軽症であればすぐに入院し、経過観察をすることで早産に持っていけることもありますが、常位胎盤早期剥離においては軽症の方が稀です。

以下の症状の重度を見てもわかる通り、中等度以上の常位胎盤早期剥離は症状が急速に進行してしまうため、大量の出血とともに発症から数時間で母子ともに死亡してしまうケースもあります。

胎盤剥離の症状の重さ|0度(軽症)

胎盤の剥離面積が30%以下
子宮内出血は微量
症状を自覚しない場合が多い
発生頻度は5-10%程度

胎盤剥離の症状の重さ|Ⅰ度(軽症)

胎盤の剥離面積が30%以下
子宮内出血は500ml以下
発生頻度は10-20%程度

胎盤剥離の症状の重さ|Ⅱ度(中等度)

胎盤剥離面積は30-50%
子宮内出血は出血は500ml以上
腹部の急激な張りと激痛が長く続く
発生頻度は50-70%程度

胎盤剥離の症状の重さ|Ⅲ度(重症)

胎盤の剥離面積が50-100%
子宮内出血が大量のため母体も死亡リスクが高まる
胎児死亡の可能性が高い
発生頻度は10-20%程度

常位胎盤早期剥離が起こる原因

常位胎盤早期剥離を発症した場合にその原因を特定することは難しいのですが、常位胎盤早期剥離が起こる原因を予め知っておくことで、発症確率を少しでも軽減できるようにしましょう。

胎盤剥離の原因1.妊娠高血圧症候群(PIH)

常位胎盤早期剥離の最も大きな原因と考えられるのが「妊娠高血圧症候群(PIH)」で、原因の30-50%ほどになります。

妊娠高血圧症候群は以下の条件によって発症する可能性があります。

・40歳以上の高齢妊娠、15歳以下の若年妊娠の場合
・初産の場合
・双子や三つ子などの多胎妊娠の場合
・肥満(BMI値目安25以上)の場合
・糖尿病、腎疾患、甲状腺機能障害などの場合
・妊娠高血圧症候群の遺伝の場合

妊娠高血圧症候群は予防・治療できる?原因・症状と母子への影響

胎盤剥離の原因2.胎児奇形や子宮内胎児発育不全

胎児奇形や子宮内胎児発育不全は、胎盤の構造異常を伴っていることが多いため常位胎盤早期剥離が起きやすくなります。

胎盤剥離の原因3.胎盤早期剥離の再発

経産婦が以前に常位胎盤早期剥離を1度経験していると、再発の確率は10倍になるそうです。

前回早剥の既往がある場合は
次回妊娠でのリスクは
約10倍
になると言われています

通常の妊娠で
1000分娩あたり5.9件
の確率が
1000分娩あたり59件
になります

引用|常位胎盤早期剥離を防ぐために出来る事|産婦人科医きゅーさんが本当に伝えたい事

胎盤剥離の原因4.過短臍帯

過短臍帯(かたんさいたい)の胎児の分娩の際に胎盤が引っ張られることで、常位胎盤早期剥離が起こる場合があります。

過長臍帯と過短臍帯の原因は?へその緒の長さで起こる臍帯異常

胎盤剥離の原因5.その他の病気や感染症

絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)などの感染症、血栓症合併、子宮筋腫合併などの病気によって、胎盤が剥がれやすくなることがあります。

胎盤剥離の原因6.子宮内圧の減少

前期破水によって急激に子宮内圧が減少した場合に、常位胎盤早期剥離を発症することがあります。

参考|常位胎盤早期剝離|山口大学医学部 医学教育総合電子システム

胎盤剥離の原因7.薬物

薬物によって動脈が痙攣して閉塞を起こす胎盤血管攣縮(たいばんけっかんれんしゅく)が起こると、胎盤の循環不全になり、常位胎盤早期剥離が起こりやすくなります。

胎盤剥離の原因8.喫煙

喫煙は動脈が痙攣(けいれん)して閉塞を起こしやすくなるため、常位胎盤早期剥離のリスクが高くなってしまいます。喫煙は常位胎盤早期剥離の確率が2倍になりますが、これは受動喫煙でも同様です。

妊娠前の喫煙もダメ?タバコが胎児・子ども・妊婦に与える悪影響

胎盤剥離の原因9.事故など外傷

妊婦の転倒事故や交通事故なども常位胎盤早期剥離の原因になる可能性があります。事故による常位胎盤早期剥離は、時間が経ってから発症する場合もあるため、半日以上の経過観察が必要になります。

常位胎盤早期剥離の予防法

残念ながら、常位胎盤早期剥離を事前に予防することはできません。

ただし、前述した通り常位胎盤早期剥離の原因はある程度予測できるため、少しでも発症する確率が低くなるように生活習慣を整えたり、生活環境の見直しを行うことが大切です。

妊娠30週以降の妊婦で以下の症状が出た場合は、常位胎盤早期剥離の可能性があるため、すぐに病院で検査を行ってください。

1.激しい腹痛が長く続く
2.腹部の急激な張り
3.大量の出血

常位胎盤早期剥離は上記のように他の妊娠症状と大きな特徴の差がないことや、症状が出にくくわかりにくいこともありますが、心配であれば専門家を頼り、早期発見をすることが一番の予防法、対処法になると思います。

常位胎盤早期剥離の治療

妊婦が常位胎盤早期剥離を発症してしまった場合、基本的には子宮内の赤ちゃんを取り出すという前提で治療が行われます。

胎盤剥離が軽症の場合

妊娠34週未満で胎盤機能不全がない場合は、すぐに入院をして経過観察・待機療法で胎児が発育するまで治療を待ちます。発育の目安が妊娠34週です。

妊娠34週以降になり胎盤機能不全が見られなければ、子宮頚管(しきゅうけいかん)の状態によって経膣分娩(けいちつぶんべん)が行われる可能性もありますが、胎盤機能不全が見られる場合には帝王切開で分娩をすることになります。

胎盤剥離が中等度・重症の場合

胎盤早期剥離は基本的には中等度・重症の方が多くなるため、胎児の死亡、または仮死が確認できた場合は、すぐに子宮内から取り出す必要があります。その場合、母体の状況によって、帝王切開か経膣分娩を選択します。

また、母体にはDIC(播種性血管内凝固症候群)のリスクがあるため、速やかな治療も必要になります。また、母体救命のために、子宮摘出術が選択されることもあります。

胎盤早期剥離は早期検査・早期発見が大切

常位胎盤早期剥離は原因がたくさんあるため特定は難しく、そのため予防はとても困難です。とは言え、常位胎盤早期剥離による周産期死亡確率は全出産数に対して0.05%程度なので、心配をしすぎる必要はありません。

大切なことはしっかりと妊婦健診を受け、毎日の体調管理を行うことです。妊婦健診や体調管理を怠ってしまうと、常位胎盤早期剥離の発見が遅れてしまい、赤ちゃんだけではなく妊婦自身の命も危険に晒されます。

ちなみに妊産婦死亡率は、1899年は10万人中409.8人(0.41%)だったものが、2007年には10万人中3.1人(0.003%)にまで縮小しています。心配しすぎはいけませんが、出産にはリスクがあることだけは心にとどめておきましょう。

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常位胎盤早期剥離は怖い症状ですが、まずは自分自身のためにも家族のためにも、妊婦自身の命が大切だと思います。個人的には万が一の場合は、残される人のことを考えて妊婦の命を救う選択をして欲しいと考えています。


参考|常位胎盤早期剥離とはどんな病気か|症状や原因・治療 – gooヘルスケア
参考|常位胎盤早期剥離 – Wikipedia
参考|常位胎盤早期剥離について – ある産婦人科医のひとりごと

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