新生児仮死の原因と治療法は?脳性麻痺など後遺症の確率

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赤ちゃんが泣かない原因が新生児仮死だったら…

死産ではないにもかかわらず、産まれたばかりの赤ちゃんが泣かない場合、原因の1つとして新生児仮死が起こっているからかもしれません。

出産直後に赤ちゃんが泣かない…新生児が産声をあげない原因とは

新生児仮死は、字を見ただけであまり良くない原因だということがわかります。

では、新生児仮死とは、赤ちゃんがどのような状態・症状なんでしょうか。また、新生児仮死によって、赤ちゃんの死亡や成長後の後遺症につながる恐れはあるんでしょうか。

今回は、新生児仮死の原因と対処法、また、最悪の場合赤ちゃんに残ってしまう後遺症などの確率についてお話したいと思います。

新生児仮死(しんせいじかし)とは

新生児仮死とは、出産前、または出産時に赤ちゃんが呼吸不全(こきゅうふぜん)、循環不全(じゅんかんふぜん)を起こし、仮死状態で産まれてくること、または出産後に仮死状態になってしまうことを言います。

呼吸不全とは

呼吸不全とは、何らかの原因によって赤ちゃんの呼吸器能が低下し、十分な酸素を臓器に送れなくなった状態を言います。

胎児の場合は、臍帯(へその緒)を通して酸素と二酸化炭素の交換をしているため、臍帯に何らかの異常があった場合、また臍帯に至るまでの血液の受け渡しに異常があった場合に、呼吸不全を起こす可能性があります。

循環不全とは

循環不全とは、何らかの原因によって血流が低下し、全身の臓器に血液が送られなくなった状態を言います。

出産後は、急激に胎児の血液循環から新生児の血液循環に変化することや、呼吸障害、低体温、頭蓋内出血などによって循環不全を起こしやすくなります。

新生児仮死と死亡・後遺症の割合

新生児仮死が起こる割合は、全出産(分娩)に対して1%未満です。

少し古い資料になりますが、平成4年度厚生省心身障害研究の「新生児仮死発生要因の調査」によると、東京女子医科大学母子総合医療センターなど全国8施設が4年間で行った分娩数は9,750件あり、そのうち正期産(満期産)での新生児仮死発症例は70件でした。

つまり、本調査では新生児仮死の発生率は0.7%程ということになります。

また、この調査における新生児仮死から死亡につながった例は0件で、脳性麻痺の後遺症が残った事例は4件でした。本調査における正期産児の後遺症の発生率は、全出産の0.04%未満ということになります。

ちなみに、本調査における新生児仮死とは、アプガースコアの1分値が4点以下で5分値が6点以下のことと定義づけられています。

参考|新生児仮死発生要因の調査

ただし、この新生児仮死・死亡・後遺症の割合は、あくまでも正期産(妊娠37週-42週未満の出産)における確率であるため、早産児を含めるとその割合は上がると予想できます。

あくまで上記の例に基づいて話をするならば、以下のような割合になると言えます。

正期産での新生児仮死の割合|0.7%
正期産で新生児仮死の新生児死亡割合|0.01%未満
正期産で新生児仮死の脳性麻痺割合|0.04%未満
新生児仮死から後遺症が残る割合|5.71%

新生児仮死の原因

新生児仮死に至る状況はいくつかありますが、主に早産(妊娠22週-37週未満の出産)、過期産(妊娠42週以降の出産)での分娩時に起こる可能性が高いとされています。

原因としては母体因子、胎児因子、妊娠・分娩因子(胎盤、臍帯など)によるものが考えられます。

1.母体の病気や薬剤の影響(母体因子)

もともと妊婦が内臓疾患を患っていたり、妊娠高血圧症候群などで胎盤の機能が充分に形成されていない場合、赤ちゃんに新生児仮死のリスクが高くなります。妊娠高血圧症候群は、以下の原因によって起こる可能性が高まります。

・40歳以上の高齢妊娠の場合
・15歳以下の若年妊娠の場合
・初産の場合
・多胎妊娠の場合
・肥満の場合(BMI値目安25以上)
・糖尿病、腎疾患、甲状腺機能障害などの場合
・妊娠糖尿病の場合
・妊娠高血圧症候群の遺伝の場合

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また、妊婦が神経系の薬剤を使用していたり、帝王切開時の麻酔にアレルギー症状が出る場合も、薬剤の影響によって新生児仮死が起こる可能性があります。

2.胎児の病気や身体機能の未発達(胎児因子)

胎児に先天性の病気や胎児奇形があると、出産後に自発呼吸ができないことで新生児仮死が起こる可能性があります。

また、早産などで胎児の身体機能が未発達の場合や、双子などの多胎の場合も身体機能が未発達になる可能性があり、新生児仮死の原因になる場合があります。

3.胎盤異常(妊娠・分娩因子)

胎盤早期剥離、胎盤梗塞、胎盤機能不全などの胎盤異常が起こると、胎児への血液供給が十分にされず酸素や栄養素が十分に送られないため、新生児仮死に至る場合があります。

さらに、胎盤早期剥離は子宮内で出血が起こるため、出血量が多い場合は母体死亡に繋がる恐れもあります。

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4.臍帯異常(妊娠・分娩因子)

分娩の過程で臍帯(へその緒)が圧迫されるなどの臍帯異常が起こると胎児に血液が流れにくくなり、胎児に酸素が供給されなくなるため、新生児仮死が起こる可能性があります。

臍帯異常には、臍帯巻絡、臍帯真結節、臍帯脱出などがあり、どれも胎児の発育不全や分娩中の新生児仮死、死産などにつながってしまう可能性があります。

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新生児仮死のアプガースコアによる状態判断

新生児仮死は心拍数、呼吸、筋緊張、刺激に対する反射、皮膚色で採点する「アプガー指数(アプガースコア)」で、症状の重度などが判断されます。

アプガースコアは生後1分後(1分値)と生後5分後(5分値)の2度判定を行い、各10点満点で判断します。アプガースコアが低いほど重症の新生児仮死と判定されます。

アプガースコアの判定
0-3点|重症仮死(第2度新生児仮死)
4-6点|軽症仮死(第1度新生児仮死)
7-10点|正常

アプガースコアはあくまでも医師による主観的な評価ですが、このアプガースコアによって新生児仮死を起こした赤ちゃんに対する治療や対処法が変わります。アプガースコアの詳細とアプガースコアによる処置に関しては以下を参考にしてください。

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新生児仮死の治療・対処法

新生児仮死は、症状の重度・軽度(アプガースコアの判定など)、また医師の判断に応じて治療方法が異なります。

新生児仮死は低酸素によって起こることが多いため、症状の重度・軽度にかかわらず、赤ちゃんの低酸素状態を解消することが最も大切です。

酸素が不足すると脳に酸素が行き渡らず、低酸素性虚血性脳症(ていさんそせいきょけつせいのうしょう)などを起こすことがあるため、一刻も早く脳に酸素を送らなければいけません。

短い時間で低酸素状態を解消できれば、予後に脳性麻痺などの後遺症が残る可能性は低くなります。

1.低酸素状態の解消

まず低体温になっている赤ちゃんをラジアントウォーマーなどで温めつつ、気道内の吸引による気道確保、呼吸器官に管を挿入した酸素投与、人工換気療法による呼吸補助などを行って低酸素状態を解消します。

2.低酸素状態で起こる合併症の治療

また、低酸素状態によって併発する、胎便吸引症候群(たいべんきゅういんしょうこうぐん)、心筋障害、腎不全、新生児遷延性肺高血圧(しんせいじまんえんせいはいこうけつあつ)などの様々な症状の対処・治療を行います。

3.NICUでの入院処置

赤ちゃんの低酸素状態が解消された場合も、引き続き症状の治療が必要な場合も、NICU(新生児集中治療室)での入院措置を行うことになります。

NICUがない病院で出産された赤ちゃんは、NICUがある病院に入院して治療を行い、NICUの入院の必要性がない赤ちゃんは、保育器で修正月齢の期間を過ごすことになります。

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新生児仮死の後遺症

新生児仮死を起こすと主に呼吸不全によって酸素欠乏が起こり、予後に後遺症が残る可能性があります。中でも一番の問題が後遺症によって脳性麻痺が起こる可能性が高まることです。

前述した通り脳は酸素不足の影響を受けやすく、低酸素状態が長引くほど脳細胞の壊死(えし)によって脳性麻痺を起こし、知能障害や全身の運動障害などの後遺症につながってしまいます。

赤ちゃんに後遺症が残っているかどうかは、1か月検診・3か月検診である程度判断できますが、新生児仮死は一度回復をしても、後々に後遺症が発覚する場合もあるため、以降も引き続き経過観察が行なわれます。

新生児仮死による後遺症は、アプガースコアが低いほど早くあらわれる傾向があり、赤ちゃんが1歳ごろまでに何らかの後遺症の症状が発生しなければ、それ以降は後遺症が残る可能性は低くなると言われています。

心配し過ぎない妊娠生活を送る

赤ちゃんが新生児仮死状態で産まれてくるかどうかは、ほとんどが実際に分娩をしてみなければわかりません。

そのため、新生児仮死を防ぐことは難しく、わたしたちは産まれてくる赤ちゃんの健康を祈るしかありません。ただ、常識的な生活習慣を守って妊娠期間を過ごす妊婦であれば、新生児仮死の確率を下げることは可能です。

特に、母体が原因になる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病は、生活習慣を正すことが1番の予防法になるため、まずは妊婦が心身ともに健康な妊娠生活を送ることが大切です。

もちろん、新生児仮死が起こったとしても、第1度新生児仮死(軽症仮死)までで適切な対処が行われれば後遺症が残ることは少ないですし、予後も健康に成長できます。

新生児仮死は妊婦にとって非常に怖いことですが、正期産児であれば新生児仮死の発生確率は0.7%程度であり、新生児死亡や後遺症につながるケースは極々稀です。

そのため、不安を募らせながら出産に臨むことがないよう、心身穏やかに妊娠生活を過ごせる工夫をしましょう。今健康に生きている人たちはみんな、そのリスクの中で産まれてきてますしね。

参考|日本妊娠高血圧学会

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