三歳児神話は本当?子どもを保育園に預けて仕事すると悪影響?

22bbe5fafce58ef58bc6b5b8f85ccd67

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

3歳前に保育園に預けても良い?

待望の赤ちゃんを妊娠して、「よーし、出産がんばろう!出産後も仕事してしっかり育てなきゃ!」とやる気に満ちているママに対して、冷水を浴びせる言葉があります。

「仕事も大事だけど、子どもは3歳になるまで母親がちゃんと面倒見なきゃ!三歳児神話って言葉もあるでしょ。」

この「三歳児神話」という言葉を、何となく聞いたことがある人もいるでしょう。

たしかに、子どもは3歳までに精神的、身体的機能が大きく発達します。3歳ごろにはママの言うことも理解でき、ある程度の言葉でコミュニケーションも行えるようになります。

つまり、3歳までの成長が大切なことは間違いありません。……ということは、三歳児神話を信じるなら、ママは子どもが3歳になるまでは保育園に預けて、仕事に復帰してはいけないことになります。

では、この三歳児神話はどこまで本当のことなのでしょうか。

そこで今回は、三歳児神話がどのような意味なのか、三歳児神話はどこまで本当なのかというお話をしたいと思います。

三歳児神話とは

三歳児神話とは、子どもが3歳になるまでの3年間は母親が子育てに専念すべきであり、子育てに専念しなければ、子どもの脳と心の成長に悪影響を及ぼす可能性があるという考え方のことです。

三歳児神話は、心理学者ジョン・ボウルビィが唱えた「愛着理論」と心理学用語である「ホスピタリズム」の考え方から生まれたとされています。

愛着理論とは、子どもが社会的、精神的に正常な発達するために養育者と密接な関係を維持しなければならないという考え方のことで、ホスピタリズムとは、乳幼児期に親から離れて施設に入所した子どもに現れる精神的、身体的発育の遅れを総称したものを言います。

子どもの愛着行動の意味とは?親子の愛着関係の形成に必要な要素

つまり、三歳児神話とは、子どもがある程度成長するまでは、養育者(主に母親)の元から離して育ててはいけないということを暗に示している言葉だということです。

参考|三歳児神話 – Wikipedia

三歳児神話が持つ要素

たしかに子どもの成長の大切さを考えた場合、三歳児神話は納得できる考え方ではありますが、どこか一方的で乱暴な気もして釈然としません。

恵泉女学園大学の大日向教授は、三歳児神話には3つの要素があると話しています。

第1の要素|子どもの成長にとって3歳までが非常に大切だという考え方
第2の要素|育児適性を持った母親が養育に専念しなければならないという考え方
第3の要素|母親が働く等の理由で育児に専念しないと、子どもが良い成長ができないという考え方

要素1.幼少時の成長が大切という考え方

子どもは3歳までに母親や周囲の人とコミュニケーションを取ることを覚えたり、発達する身体機能を活かして様々な挑戦をすることで自信と自己肯定の心を養い、積極的に創造力や好奇心を伸ばしていきます。

そこには、子どもとのスキンシップ、子どもに対する反応、そして子ども(と)の遊びという要素が含まれていることがわかります。

これらを体験することが、幼児期の成長につながるとても大切なことであるのは間違いありません。

要素2.母親が養育に専念するという考え方

三歳児神話を勘違いすると、母親が養育に専念することだけが、子どもの成長につながると考えてしまいがちですが、そうではありません。

心理学者ハリー・ハーロウが行ったアカゲザルの実験でわかったことは、子どもの成長にとってスキンシップが大切だということだけではありませんでした。

子どもの成長にとって大切なことは、食べものを与える相手よりも、温もりや暖かみを与えてくれる相手であり、結果的に母乳を与える相手と愛情を持ってスキンシップを取る相手が別だとしても、愛着関係は形成され得るいうことです。

Harlowらによるストレス下の赤毛サルの乳児がミルクは出るが針金でできた親サル人形よりも、ミルクのでない柔らかな布でおおわれた母サル人形を好んでしがみつくという観察実験によって、Bowlbyの理論はさらに強化された(2)。おなじ哺乳動物であるヒトも、母乳が与えられるという二次的な動因ではなく一次的な理由によって、母親とのスキンコンタクトを求めているというのである。Bowlbyは乳児の第一養育者に向けて解発される社会的な笑い、発声、泣き、後追いなど行動をアタッチメント行動と呼び、それらが養育者との物理的な距離を短くすることによって生存の可能性を高めようとする、進化論的に選択された行動とみなした。

引用|「3歳児神話 その歴史的背景と脳科学的意味」|学会誌「ベビーサイエンス2001.VOL1」|日本赤ちゃん学会

要素3.母親でなければ子どもが成長ができないという考え方

さて、前述した通り、ハーロウのアカゲザルの実験において、子ザルは母ザルには育てられませんでしたが、正常に成長できました。

つまり、子どもとのスキンシップ、子どもに対する反応、そして子ども(と)の遊び全てを母親が行なわなくても、単純に子どもの成長を阻害する要因になるとは言えないということです。

もちろん、母親が子どもとスキンシップを取り、常に子どもに反応してあげ、そして子どもの遊び相手になってあげる(もしくは遊んでいる様子を常に見ている)ことができれば、素晴らしいことだとは思います。

母親自身もできるならそうしたいと思っているはずですが、現代の家庭環境を考えるとなかなか難しいお話です。

三歳児神話の信憑性と受け止め方

では、もしわたしが保護者から「先生、三歳児神話ってあるけど、3歳まで保育園に預けちゃいけないのかな?」と聞かれたら、こう答えます。

「本当は○○ちゃんといっしょにいたいんですよね?だったら、いっしょにいるときにたくさん遊んだり、抱きしめて愛情を注いであげてください。離れるときは、ママも寂しいという気持ちを伝えてあげてください。」

三歳児神話が科学的に正しいのか正しくないのかは、わたしにはわかりません。

ただ、みんなそれぞれ生活があり、家庭環境も違います。そのため、必ずしも3歳まで親子が常にいっしょにいる家庭環境が普通ではありません。

たとえ子どもを保育園に預けたとしても、子どもが保育園にいる間は、わたし(保育士)やお友だちとコミュニケーションを取って遊んでいるため、社会性が欠如することはありません。

保育園でも幼稚園でも、良いこと・悪いことも区別して教えるため、子どもの間の一般的な常識が欠如しないようにしています(頭では分かる状態にするということ)。

とは言え、子どもと母親の愛情関係が全て代替できるとも思っていません。

自分で産んだ子どもに対する衝動的な愛情は母親にしか感じられないものですし、その独特な愛情は母子だけが表現できるものではないかと思います。また、子どもにとっても、母親は特別に認められたい存在であるはずです。

そのため、個人的には三歳児神話が正しい・間違っているという極端な受け止め方をする必要はないと思いますが、子どもといっしょにいる間は母親の愛情が伝わっているかどうかを常に意識して欲しいと思います。

ちなみに、三つ子の魂百までということわざがありますが、その意味は「3歳までに習ったことや身につけたことが、その人の人生に影響を与える」という教育の観点で使われる言葉ではなく、「3歳までに現れる性格は、100歳になってもずっと変わらないままだ」という意味のことわざです。詳しくは以下を参考にしてください。

三つ子の魂百までの正しい意味は?子どもの性格は一生変わらない?


参考|「3歳児神話を検証する2」|第1回学術集会|日本赤ちゃん学会

記事のURLとタイトルをコピー